番号 | 主要事業・主要制度 | 事業概要・スケジュール |
1 | 伐採木材(CLT)の高度利用技術の開発 (予算額(事業費)2970千円) | 国産材を用いた新たなCLTを大型木造建築物に用いるため、JAS規格等により求められる性能を確保する技術を開発する。 |
2 | 直交層を挿入した新しいLVLの住宅用部材としての性能に関する研究 (予算額(事業費)446千円) | 県産材LVL(単板積層材)の用途拡大による県産材需要の拡大を図るため、直交層を挿入して強度性能を高めた新たなLVL製品を開発する。
*JAS改正(H25年11月)で、より多くの直交層挿入が可能になった。(株)オロチは、約3万m3(H25)の県産材原木でLVL製品を製造し、県外を中心に出荷。 |
3 | 現場施工が容易なユニット式耐力壁の開発 (予算額(事業費)1190千円) | スギ厚板を用いた耐力壁の施工の簡素化・効率化・工期短縮が可能な「ユニット式耐力壁」を開発し、耐震化木造住宅の普及に資する。 |
4 | 燃料用木質バイオマスの水分管理技術に関する実証試験 (予算額(事業費)345千円) | 含水率が低い良質な燃料用木質バイオマスを生産するため、はい積みされた燃料チップ用丸太の含水率管理技術に関する試験を行い、効率的な含水率低減方法について検証する。 |
5 | 県産スギ板材の表面処理技術に関する研究 (予算額(事業費)1606千円) | スギ内装材のキズ発生を抑制できる表面処理技術(うづくり加工、表層圧密)を開発する。 |
6 | スギ材の効率的な葉枯らしシステムの開発 (予算額(事業費)1648千円) | 鳥取県林業試験場が改良・開発した「応力波伝搬時間(以下、SPT)」の計測技術を応用した葉枯らし乾燥期間の調査及び簡易な計測手法の開発を行う。 |
7 | スギ一般大径材を活かした新たな心去り製品の開発 (予算額(事業費)1008千円) | スギ一般(並材)大径材を使った心去り角材の乾燥コストの低減、・強度性能評価等を行い、新たな心去り角材の生産技術を開発する。 |
8 | 住宅内装製品への県内産広葉樹材の活用に関する研究 (予算額(事業費)1151千円) | 県内産広葉樹材を内装製品(フローリング、壁板等)として活用するため、材質に対応した加工技術を改良・開発する。 |
H29年度の取組 | 成果 |
【伐採木材(CLT)の高度利用技術の開発】
■建築物でCLTを使用する際、表面と裏面が異なる温度・湿度に曝されたときに生じる「反り」を評価するため、2室型大型環境試験器を用いて試験体の表裏を異なる温湿度条件下に暴露して発生する「反り」を測定した。
■最終年度である今年度は、特に反りが発生しやすい弱軸方向の試験体を対象に、製品のラミナの幅厚さ比の違いや幅はぎ接着の有無が反りに及ぼす影響を検証した。また、実際の住宅建築時に施工される防水透湿シートを高湿側に施工した際の反り発生を確認した。 | ■測定の結果、ラミナの幅厚さ比が大きい試験体は、幅厚さ比の小さい試験体に比べ、反り量が少なかった。また、幅はぎ接着した試験体では幅厚さ比による反り量の違いが少なかった。この結果、製品の寸法安定性を高めるためには、幅厚さ比の大きなラミナを用いる方が良く、幅厚さ比の小さいラミナ構成の場合は幅はぎ接着をする方が良いことが示唆された。なお、防水透湿シートを施工しても、反りの発生には影響しないことが判った。 |
【直交層を挿入した新しいLVLの住宅用部材としての性能に関する研究】
■土台や面材について、直交単板の挿入による柱のめり込みや接合性能、反りへの影響について、直交層の挿入枚数や密度との関係から明らかにする。 | ■工場の生産ラインで実大材の製造試験を行った。人力を必要とする作業もあるが、直交層を挿入した製品を製造することができた。
■土台のめり込み試験を行った。これまでよりも割裂による急激な強度低下は生じなかったほか、直交層を挿入することで高い強度が得られた。
■釘の側面抵抗試験を行った。直交挿入により抵抗力の増加が認められた。 |
【現場施工が容易なユニット式耐力壁の開発】
■協力いただいている県内工務店と意見交換をしたところ、平成28年度のモデル試験(スギ板とヒノキダボの組み合わせ)結果よりも、高い強度を持つ構造の開発を求められた。
■ユニットのモデル試験で高い強度を得るため、ダボ材料の樹種選定を行った。選定の際には、ヒノキより密度が高く、木材市場等で入手しやすく、加工しやすい点に留意した。 | ■ダボ材料の樹種選定は、ヒノキより密度が高く木材市場等で入手しやすい点で、マツ、クリ、ベイマツの3種とした。
■これら3種のダボを製作し、それぞれモデル試験をおこなった。
■モデル試験の結果を参考に、実大壁試験を行い、壁性能を調べた(壁倍率を算出した)。 |
【燃料用木質バイオマスの水分管理技術に関する実証試験】
■日南試験地において、はい積み調査箇所まで重機が入れないため、当初計画を変更して試験終了時期を延長し、引き続き丸太の重量変動を測定した。
■山積みした燃料用チップの効率的低減方法を検証するため、小さく山積みしたモデル試験を実施することにし、具体的な方法の検討を始めた。 | ■日南試験地において冬期設置開始したはい積み丸太(目落とし積み、桟積み)の調査を行い、試験を終了した。他の箇所と同様に、桟積みが最も乾燥効果が高かった。また冬期の被覆(ブルーシート、透明ビニール)においては、透明ビニールで被覆したはい積みが最も乾燥効果が高いことがわかった。
■山積みチップの天然乾燥モデル試験(有孔管を下方設置、有孔管を立てて設置)を開始した。冬期においては、有孔管を下方設置したほうがやや乾燥効果がみられた。 |
【県産スギ板材の表面処理技術に関する研究】
■小試験体での各種圧密条件(主に二段階圧密)での圧密と、定速前進装置を用いた鉛筆硬度計による傷つきにくさの評価。
■新規に購入した滑り抵抗試験機による滑り抵抗の評価(未着手) | ■小試験体を対象とした圧密試験と、定速前進装置を用いた鉛筆硬度計による傷つきにくさの評価を行ったが、辺材部分で4H以上の傷つきにくさは確認できていない。
■加工後の試験体について、滑り抵抗試験機による滑り抵抗を試験中。 |
【スギ材の効率的な葉枯らしシステムの開発】
■伐倒方向や伐採時期の違いによる乾燥の差の把握
■乾燥に伴う材色の変化にかかる色彩計での計測 | ■伐倒方向の違いや伐採時期による乾燥の速さの差を把握し、計測結果を纏めて、八頭事務所主催の研修会で説明するとともに学会で発表した。 |
【スギ一般大径材を活かした新たな心去り製品の開発】
■3丁取りした心去り平角材の目視調査および強度性能調査
■人工乾燥試験 | ■3丁取りした心去り平角材は2丁取りしたものより目視等級の改善がみられ、特に木表が無節である割合が高く、化粧材として十分に使用できるものであった。
■3丁取り心去り材の強度は心持ち材・2丁取り心去り材と比較して遜色はなかった。
■従来より短い乾燥時間で材を乾燥させることができ、燃料消費量の削減につながった。 |
【住宅内装製品への県内産広葉樹材の活用に関する研究】
■県内で調達できる広葉樹材の各種特性(密度、強度、硬さ等)を明らかにする
■広葉樹植栽地の現状を把握し、伐採搬出、加工に関する問題点を抽出する
■広葉樹内装製品に関するデザイン検討、試作をおこなう | ■県産広葉樹材9種の基礎的な特性(容積密度、含水率、縦圧縮強さ)を把握することができた。
■内装製品の試作に向けて大山産コナラ丸太を調達し、板材に製材後、人工乾燥を行った。
■大山開山1300年祭に向け、試作する製品・設置場所を決定した。 |
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課題 | 今後の取組 |
【伐採木材(CLT)の高度利用技術の開発】
■CLTという新たな木製品の製造や管理工程において、製品の寸法安定性能の向上に寄与する各種の試験結果を提示することができた。 | ■左記に同じ |
【直交層を挿入した新しいLVLの住宅用部材としての性能に関する研究】
■製造ラインが量産に対応していないため、これまでの試験結果を評価したうえで、ラインをどこまで改良・投資が必要かを、メーカーと検討する必要がある。 | ■製造メーカー((株)オロチ)、機械メーカー商品化に向けた検討を進める。 |
【現場施工が容易なユニット式耐力壁の開発】
■平成29年度の試験結果より、ユニット自体とユニット間接合部の改良を行い、より建築現場で扱いやすい構造を目指す。
■ユニット壁の性能が安定しているか、確認する必要がある。 | ■実大のユニット壁について、改良と繰り返し試験を行い、県内建築業者と設計事務所に対し、性能(壁倍率)を提案できるだけのデータ収集する。 |
【燃料用木質バイオマスの水分管理技術に関する実証試験】
■山積みチップ乾燥モデル試験は、今後さらに乾燥が進行すると考えられるため、試験を継続しデータを収集する必要がある。 | ■今回得られたデータをパンフレット等にとりまとめ、県内業者等に配布し、普及を図る計画である。 |
【県産スギ板材の表面処理技術に関する研究】
■加工後の寸法安定や水濡れなどによる戻りへの対処が必要である。
■傷つきやすい辺材部だけを加工する手法を検討する必要がある。 | ■塗料を用いた加工後の寸法安定や水濡れなどによる戻りへの対処をした際の、滑り性能評価が必要。
■うづくり加工との組み合わせや辺材部だけの圧密加工手法を検討する。 |