1 限りある水産資源を賢く、末永く利用する管理技術の開発と提案 2 県産魚付加価値向上に対する取り組み 3 燃油高騰に耐える漁業経営体への技術・研究支援 4 中海水産資源の回復方策の研究
H30年度の取組 | 成果 |
【中海の造成浅場における水生生物のモニタリング調査】
4月から9月まで毎月1回、サーフネット(1×5m、目合い1mm)を50メートル曳網し、生物採集を行った。 | ・サーフネットにより採集された魚類は、10科20種、総出現数は1,457尾であった。平成29年度からハゼ科の種数増加が認められるが、それまで出現しなかったヌマチチブ、ヒメハゼ、ヒモハゼ、ドロメが出現するようになったことが大きい。
・ハゼ科ではビリンゴが70%を占め、次いでニクハゼ、シロウオ、ドロメ、マハゼの順に出現数が多かった。ハゼ科以外の魚類では、ヒイラギ、スズキ、サッパ、シラウオの順に出現数が多かった。
・平成24年度以降のサーフネット調査で、サッパ(9尾)、シロギス(1尾)、ヘダイ(1尾)が初めて出現し、ワカサギ(1尾)は2年ぶりに出現した。
・水産有用種である3種の特徴としては、シラウオとスズキの出現数の減少とマハゼが7月以降に出現しなかったことがあげられる。 |
【中海の造成浅場における水産生物に適した簡易魚礁の開発・効果・検証】
造成浅場に出現する水産有用種であるマハゼの幼稚魚育成場(隠れ場・餌場機能)を創出するため、コンクリートブロック8個及び塩化ビニルパイプで構成する簡易構造物(1.3u)(以下、「ブロック礁」という)を計9基設置した。ブロック礁の設置は4月14日から5月29日にかけて実施し、ブロック礁への海藻繁茂を目的に、周辺海域に優先する海藻の一つであるウミトラノオの母藻を5月25日、29日にコンクリートブロックに装着し、胞子の養生を試みた。 | ・ブロック礁を利用していた魚類は6種類517個体であった。チチブ289尾、マハゼ205尾、ウロハゼ9尾、アカオビシマハゼ9尾、ダイナンギンポ4尾、トサカギンポ1尾を確認し、チチブとマハゼの2種で全体の95.6%を占め、マハゼの全体に占める出現割合は39.7%であった。
・マハゼは、ブロック礁を継続的に利用しており、1uあたり平均約3尾を確認した。対照区とした砂地(15u)についても潜水により魚類確認を行ったが、6月にハゼ科を2尾確認したのみであったことから、マハゼの生育場として、ブロック礁が一定の機能を果たしていたと考えられた。 |
【中海の天然種苗を用いたマハゼ養殖試験】
1)種苗採集試験
5月中旬から6月上旬にかけての計7日、境港市の夕日丘地先において、2人でマハゼ採集用のネット(0.8×9m、目合い4mm)を1日あたり約8回曳き(約1時間)、マハゼの種苗を採集し、養殖種苗とした。
2)養殖試験
・5月下旬から6月上旬にかけて、試験場で収容していたマハゼのうち、大型個体を除く、中・小型種苗計1,907個体を6トン陸上水槽1基に移送し、養殖試験を開始した。陸上養殖の飼育水は井戸水のかけ流し(但し、加温調整が可能)で養殖試験を実施した。成長を把握するため、原則月1回、ランダムに30尾取り上げ、全長、体長、体重を測定した。
・養殖開始4か月以降には、境港市内の日本料理店6者へ養殖したマハゼのサンプルを順次提供し、主に大きさによるニーズと用途について聞き取りをした。 | 1)種苗採集試験
5月16日から6月13日までの間に、夕日丘地先及び米子大崎でマハゼの天然種苗を、サーフネットにより計2,036尾採捕した。採集した幼魚の平均全長は3.7cm(最小1.55cm、最大7.12cm、標準偏差1.1)であった。
2)養殖試験
養殖開始時には平均全長3.7cmであった個体が、養殖開始後120日には平均体長10.7cm(平均重量21.3g)、190日には同13.8cm(同39.1g)まで成長した。
・これまでの予備養殖試験では、秋以降の水温が低下し、マハゼの成熟が進み始めると斃死が見られたが、今回加温して飼育したため斃死が見られず、冬まで飼育できることがわかった。
・養殖開始後4か月での生き残りは1,058尾(生残率51.3%)であった。
・提供店への聞き取りから、刺身として扱いやすいサイズは概ね体長13.5cm以上であり、それ以下のサイズは、主に天ぷらとしてのニーズが高いことがわかった。
・また、提供店には、刺身、天ぷら、骨せんべい、寿司、肝の塩辛等にしてサンプルを試食していただいた結果、天然ものに比べて臭みがなく、とても美味しいので取り扱ってみたいとの声を多くいただいた。境港は海鮮丼を目玉にしている店も多く、今回そのネタや刺身の盛り合わせの一つとしても需要があることもわかった。 |
【美保湾のカタクチイワシの資源動態等の把握】
市場調査・標本船調査による漁獲・成長データや漁場形成要因(水温等)や、水温、価格などの基礎データの収集を行った。 | ・すくい網の標本船調査から、シラス漁期は5月下旬から始まることが分かった。漁獲されたシラスの全長や他種の混ざり具合、大まかな漁場等を把握できた。秋期以降は10月15日解禁の船曳網による漁獲が主体となった。沿岸水温が例年よりも高い傾向にあり、漁獲状況は量的にも金額的にも良好であった。
・価格形成においては、シラスより大きいサイズのカタクチイワシや他のイワシ類が混ざると大幅に箱単価が下がることが分かった。秋期においては好漁だったこともあり、水揚げ単価は加工業者の需要次第であったようである。
・弓ヶ浜水産の自動給餌ベースに水温ロガーを設置。表・中・底層の水温を連続的に記録でき、現在も続けている。 |
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課題 | 今後の取組 |
【中海の造成浅場における水産生物に適した簡易魚礁の開発・効果・検証】
・ブロック礁の単位面積あたりのマハゼの利用量の向上
・ブロック礁への海藻付着技術の開発
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・ブロックの下を仕切ることで、マハゼの利用量を増加できないか検討を行う。
・今回、ブロック礁にウミトラノオの幼芽を確認できなかった。遊走子の放出が不十分であった可能性と波浪による砂の流動により付着した種子の剥離が考えられたため、失敗した原因を究明する試験を実施する。
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【中海の天然種苗を用いたマハゼ養殖試験】
・マハゼ養殖の採算性の向上
天然種苗の採集量のアップと生残率の向上
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・養殖の採算性向上のため、天然種苗の目標採集量を3千尾(昨年比1.5倍)に増やす。
・飼育開始後12日までに約4割が斃死し、小さな個体で大きな減耗が見られた。飼育開始時には体長のばらつきも大きかったことから、大型個体が小型個体を共食いしたと推察されたため、きとんと大きさを揃えてから飼育試験を開始する。
・成長をみると、飼育初期の成長が悪かった。加温がうまく出来ず、低水温下の飼育環境が影響したと考えられ、改善を行う。 |
【美保湾のカタクチイワシの資源動態等の把握】
・資源変動に影響する水温など基礎データの蓄積
・境港における需要の把握
・単価低下要因である混ざりの簡易的選別法の検討 | ・カタクチイワシの資源変動は大きいが、それを検討するための基礎データが少ない。そのため、@美保湾の水温を継続的に把握し、A産卵親魚となる可能性のあるカエリ銘柄(体長5〜6cm程度)について生殖腺の組織観察を実施する。
・魚価については加工業者などの購買者により決定される。したがって価格向上についてはこれら企業の需要や動向を把握しなければ困難である。今後ヒアリング等を実施し、魚価が向上する方法を検討する。
・すくい網においてはシラス以外の銘柄が混入することで単価が著しく低下することが分かった。サイズの同じような他魚種については選別が困難であるが、異なるサイズであれば既に製品化されている機械もあることから、導入など含め検討する。 |
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