1 限りある水産資源を賢く、末永く利用する管理技術の開発と提案 2 県産魚付加価値向上に対する取り組み 3 燃油高騰に耐える漁業経営体への技術・研究支援 4 中海水産資源の回復方策の研究
令和元年度の取組 | 成果 |
【中海の造成浅場における水生生物のモニタリング調査】
4月から9月まで毎月1回、サーフネット(1×5m、目合い1mm)を50メートル曳網し、生物採集を行った。 | ・サーフネットにより採集された魚類は12科23種、採集尾数は2,978尾。出現した種数は過去3か年平均15種と比べ8種(約50%)増加。内訳はハゼ科魚類は10種2,945尾、ハゼ科以外の魚類は13種33尾で、採集された魚類のほとんどはハゼ科魚類で占められた。
・本年度のマハゼ採集尾数は11尾と、30尾程度採集された昨年、一昨年に比べ3分の1程度に減少。
・ハゼ科の以外の魚類は採集尾数が33尾とわずかだったが、平成24年の調査開始以降、初確認となるマイワシ、カタクチイワシ等が6種採集された。
・継続的に採集されている水産有用種3種の総採集尾数はシラウオ9尾、スズキ3尾、マハゼ11尾で、いずれも過去3か年の平均採集尾数(シラウオ13尾、スズキ14尾、マハゼ25尾)を下回った。
・マハゼの稚魚が最も多く出現する4月でみると、令和元年度のマハゼの採集尾数は2尾と少なく、過去3か年平均採集尾数の12.5%であった。この原因は明らかではないが、簡易構造物の効果検証調査や種苗採集試験でもマハゼの出現数が少なく、本年度はマハゼの発生量が少なかったと判断された。 |
【中海の造成浅場における水産生物に適した簡易魚礁の開発・効果・検証及び海藻付着試験】
1 簡易魚礁
・昨年設置した簡易構造物(1.3u)(以下「ブロック礁」という)9基の効果検証のため、4月〜12月にかけて月1回、潜水調査を実施し、生物の利用状況を把握した。さらに、本年度は下部にコンクリートスペーサ(50×50×40mm)を8個ないし10個接着させた3種類の試験ブロックをつくり、ブロック下部の区切り方でマハゼの利用が増加するか検討した。
2 試験礁への海藻付着試験
・ブロック礁は海藻の付着基質となり得ることから、これに海藻群落を形成させ、稚仔魚の隠れ場、餌場などの機能の強化を図った。本年度はブロック礁周辺の砂地上に、市販コンクリートブロックを26個積み上げた試験礁を約10m隔てて2基設置し、これに中海内で採集した母藻を採集日別(5月13日、30日)にロープで吊るし、5月末までに試験礁の上部に設置した。状況把握のため、潜水観察により7月、9月、10月に試験礁上の海藻(幼体)の出現状況や生長の様子を観察した。
| 1 簡易魚礁
1)既存の簡易構造物
・ブロック礁から出現した魚類は9種618尾(前年は6種517尾)。チチブ490尾(昨年289尾)、マハゼ62尾(205尾)、ウロハゼ19尾(9尾)等が確認された。なお、特筆すべき種としてオニオコゼが初めて確認された。
・昨年と同様にチチブ属とマハゼの2種で全体の9割以上を占めたが、本年度はサーフネット調査と同様、マハゼが減少し、チチブ属が大きく増加した。
・マハゼは、ブロック礁を継続的に利用していたが、平均0.8尾/u(前年2.5尾/u)と前年より7割程度減少した。しかし、砂地より段違いにマハゼの出現割合が高く、昨年同様にマハゼの生育場として機能していた。
2)改良した簡易構造物
・従来型ブロックと比較すると、8月以降のマハゼ出現数は改良型ブロックが上回ったものの、大きな差異は認められず、改良型ブロックが優位とは言えない結果となった。また、1ブロックあたりのマハゼの出現数は、どちらの型とも2尾が最高であり、ブロック下を区分けすることで1ブロック当たりのマハゼ出現数を向上させる目的は達成できなかった。しかし、従来型は砂に埋没しているものもあり、マハゼが隠れにくくなることが懸念された。一方、改良型は底質との接地面積が大きく高さもあることから、埋没しにくいと考えられ、長期的な利用も可能と考えられる。
2 試験礁への海藻付着試験
・昨年失敗した海藻付着試験を成功させることができた。母藻設置後の7月16日に両試験礁を観察し、上、中、下段のいずれからもウミトラノオ幼体を確認でき、本年度の5月中・下旬は母藻設置時期として適当だったと考えられた。
・どの段の幼体も10月28日まで比較的に順調に成長したことから、当期間における砂の流動が生育に与える影響はそれほど大きくなかったと判断された。 |
【中海の天然種苗を用いたマハゼ養殖試験】
1 種苗採集
・マハゼ陸上養殖の可能性を探るため、境港市の企業Aと事業化を見据えた養殖試験を共同で実施した。境港市の夕日丘地先周辺で5月中旬〜6月下旬にかけて、1日あたり約90分間、計13日間、調査員2名でマハゼ採集用のネット(0.8×9m、目合い4mm)を曳網し、養殖種苗とするマハゼ幼魚を採集した。
2 養殖試験
・6月13日から採集したマハゼの幼魚を陸上養殖場に移して養殖試験を行った。(6トン水槽1基使用。飼育水は塩分濃度2PSUの井戸水。25℃前後に加温)
・マハゼの成長を把握するため、原則月1回、ランダムに30尾取り上げ、体長、体重を測定した。
| 1 種苗採集
・マハゼの天然種苗を計764尾(前年2,036尾)採捕した。採捕したマハゼの平均全長は4.5cm(最小1.96cm、最大 8.34cm、標準偏差1.10、前年平均3.7cm)。
・夕日丘周辺におけるCPUEは、1時間あたり46尾(前年185尾/時間)と前年に比べ約4分の1程度であった。採集尾数も前年の3分の1程度であり、マハゼの少ない状況であった。夕日丘のなかでも、本年度は艇庫場前の浅場しか集中的に採集できず、分布に偏りが見られた。
2 養殖試験
・採集した343尾の天然種苗を用いて養殖試験を実施し、養殖開始後106日目で、平均体長152.5mm、平均重量32.6gまで成長し、斃死は14尾とわずかであった。なお、昨年は養殖開始120日時点で、平均体長106.9mm、平均重量21.3gであったことから、本年度の成長は比較的良好だったと判断される。
・本年度は、種苗の少なさから飼育密度が昨年の約1/6と低かったこと、昨年と異なり養殖開始時から水温を25℃前後に調整できたことから、高成長、低斃死につながったと考えられた。
・昨年度の養殖試験は1,907尾を用い、共食い等から養殖120日後には780尾まで減少した(生残率40.9%)。共食いが発生せず、高歩留まりが期待できる適正な飼育密度について引き続き検討が必要である。
|
【美保湾のカタクチイワシの資源動態等の把握】 | ・すくい網、船曳網漁それぞれの市場調査や標本船調査から、漁獲されたイワシの体長・生殖腺重量や他種の混ざり具合、漁場等を把握できた。漁場は季節・銘柄により変動するが、今のところ変動要因は把握できていない。また精密測定したカタクチイワシの耳石を採取し、日齢査定に着手した。なお水揚量は昨年から微減し、平年の半分程度に留まったが、水揚金額は昨年比微減で平年比では高い水準となった。
・弓ヶ浜水産の自動給餌ベースに水温ロガーを設置。表・中・底層の水温を連続的に記録できている。 |
| |
| |
| |
| |
| |
| |