山陰歴史館所蔵長田文書
( さんいんれきしかんしょぞうながたもんじょ:saninrekishikan shozo nagata monjo )
文禄4年(1595)の椎木新次郎等田地売券と慶長4年(1599)の椎木新左衛門等田地売券の2通からなる中世文書である。その内容から、伯耆国八橋郡向原村(現在の東伯郡琴浦町八幡向原)の土地を売買する証文であることが分かり、もとは県保護文化財永田家文書に含まれていたことが推測される。
椎木新次郎等田地売券は向原村近隣の下市庭村の六郎左衛門という人物に、椎木新左衛門等田地売券は、村内の有力者の一人と思われる長田五郎左衛門に土地を売り渡す際に作成された文書である。ともに、将来いかなる徳政や新儀の出来や子孫による違乱(決まりにそむくこと)があっても契約内容はゆるがないことを明記する。
本文書が山陰歴史館所蔵となった経緯ははっきりしないが、八橋郡八橋村(現在の東伯郡琴浦町八橋)出身の政治活動家・教育者で文庫を設立した藤本重郎(1849〜1934)の蔵書録『金杖録』(米子市立図書館)に、同郷の長田熊吉氏から文書を寄贈された記録がみえる。そのうち「文禄年中」と「慶長年中」と記される文書は、山陰歴史館所蔵長田文書2通と年号が一致する。
米子市立山陰歴史館は、郷土史家の足立正(1865〜1947)の私設の資料館がもとになっており、藤本文庫旧蔵資料の一部も保管する。2通の文書も、いずれの時期かに足立正もしくは山陰歴史館のコレクションに加えられた可能性は十分に考えられる。
山陰歴史館所蔵長田文書は、中世末期の村落社会の動向を示す点もさることながら、その伝来の経緯自体が、鳥取県における郷土史研究・文化財保護の歴史を伝えており、貴重な資料と言える。
文化財の種別 |
有形文化財
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区分 |
指定
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指定種別 |
県指定保護文化財
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分類 |
県指定の古文書
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所在地 |
米子市中町20 米子市立山陰歴史館 |
指定年月日 |
令和3年11月19日 |
所有者等 |
米子市 |
参考文献 |
『新鳥取県史 資料編 古代中世1古文書編上』鳥取県、2015年 |
参考リンク |
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問合せ先 |
米子市立山陰歴史館 |
備考 |
1.文禄4年(1595)2月3日 椎木新次郎等田地売券 25.7×63.5p
2.慶長4年(1599)3月20日 椎木新左衛門等田地売券 18.5×61.5p |