山陰における口承文芸の記録(童謡・民話等)
( さんいんにおけるこうしょうぶんげいのきろく(どうよう・みんわとう):saninniokeru kosyobunge no kiroku (doyo minwato) )
江戸時代の伝承童謡集である『古今童謡』1冊と民俗学者酒井董美氏が収集した口承文芸の記録物(2836曲・話)を合わせて指定する。
『古今童謡』(江戸時代後期)は、鳥取藩士の野間義学(1692〜1732)が子どもたちの歌う童歌を収集・筆録した『筆のかす』(1732年頃)の写本である。義学は怪談や農民たちの風俗、言葉についても記録を残した民俗学者の先駆け的存在であった。原本の『筆のかす』の所在は確認さていないが、『古今童謡』によって約300年前の童謡約50曲の詞章が(一部は遊戯する子どもたちの挿絵つきで)おおかた判明する。『筆のかす』は、これまで世界最古の伝承童謡集とされてきた『親指トムの本』(1744年頃、大英博物館)を10年以上さかのぼる記録であり、その写本とはいえ『古今童謡』の文化的意義は非常に大きい。
酒井董美氏収集の口承文芸の記録は、昭和30年代から採録された鳥取県と島根県における伝承童謡の歌詞・詞章と旋律の音声データである。その中には『古今童謡』と同類と思われる歌が10類見つかっており、元禄期頃の童謡が長期にわたり歌い継がれてきたことが証明できる。その他の童謡、童話等も山陰地域の口承文芸の地域性、時代的特徴、歴史的変遷をうかがわせるものであり大変貴重である。
『古今童謡』と酒井氏収集の大規模な音声データは、山陰地域の口承文芸の複合的検証及び伝承に資する稀有な歴史・民俗資料と評価できる。
文化財の種別 |
民俗文化財
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区分 |
指定
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指定種別 |
県指定有形民俗文化財
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分類 |
県指定の民俗資料
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所在地 |
鳥取市鳥取県鳥取市東町2丁目124 鳥取県立博物館 |
指定年月日 |
令和6年4月16日 |
所有者等 |
鳥取県立博物館 |
参考文献 |
尾原昭夫、大嶋陽一、酒井董美、『古今童謡を読む : 日本最古のわらべ唄集と鳥取藩士野間義学』、今井出版、2016年。
酒井董美『随想マイカー人生』、清風堂出版、2017年。 |
参考リンク |
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問合せ先 |
鳥取県立博物館 |
備考 |
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