ため池における魚伏籠(ウグイ)漁
( たけいけにおける うおぶせかご(うぐい)りょう:tameikeniokeru uobusekago(ugui)ryo )
「ウグイ」とはいわゆる魚伏籠のことである。魚伏籠は底のない筒状の籠で、これで水田や浅瀬の泥を突きながら魚を探し、籠に入った魚を上の口から手でつかみ捕らえる。東南アジア等では現在も行われており、かつては日本各地に見られたが、今日、組織として漁はほとんど途絶えており、大変貴重な技術である。
鳥取県内ではこの魚伏籠が、鳥取市気高町睦逢(むつお)、西伯郡南部町浅井の2カ所で続けられている。ともにため池で行われ「ウグイ突き」「魚取り」と呼ばれる。
この魚伏籠漁は、因幡において室町時代まで遡ることができる。それは天文12年(1543)年の山名氏から溝口村(鳥取市湖山北一丁目)に出された因幡守護山名氏奉行人連署奉書という文書(鳥取県 1973 743頁) に「籠伏」というものが見られる。これによると溝口村は山名氏から合戦の褒美の一つとして「籠伏」の権利が認められている。この「籠伏」とは魚伏籠漁のことと考えられる。
これは稲の収穫後の秋に水田の用水管理の一環として行われ、ウグイで池の底に沈殿する泥を攪拌して流すことが主な目的であり、漁業、農業、娯楽を兼ねた地域の複合的生産活動の特徴を示す慣行である。またコイは刺身、味噌汁、フナは鱠(なます)(なます)、雑魚は煮つけなどの特色ある食文化にもつながる大変貴重な慣行である。
文化財の種別 |
民俗文化財
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区分 |
指定
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指定種別 |
県指定無形民俗文化財
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分類 |
県指定の民俗技術
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所在地 |
鳥取市、西伯郡南部町鳥取市気高町睦逢大堤池、西伯郡南部町浅井青木池 |
指定年月日 |
令和2年5月22日 |
所有者等 |
大堤うぐい突き保存会、南部町浅井区 |
参考文献 |
樫村賢二『鳥取県史ブックレット9 里海と弓浜半島の暮らし―中海における肥料藻と採集用具―』鳥取県 2011年
鳥取県『鳥取県史 第2巻 中世』鳥取県 1973年
鳥取県立公文書館県史編さん室編『新鳥取県史 民俗2 民具編』鳥取県 2019年
錦織勤「因幡国布施・溝口の中世―湖山『潟』の発見」『鳥取地域史研究』12号 鳥取地域史研究会 2010年
松田睦彦「溜池での漁に見る水田稲作の論理―鳥取市気高町大堤『ウグイ突き』の事例から―」『民具マンスリー』45―7 神奈川大学日本常民文化研究所 2012年
安室知「魚伏籠と水田漁撈」『国立歴史博物館研究報告』108 国立歴史博物館、2003年
八幡一郎「魚伏籠」『民族学研究』23巻1-2号 日本民族学協会 1959年
八幡一郎「魚伏籠後聞」『民族学研究』24巻1-2号 日本民族学協会 1960年 |
参考リンク |
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