曽我物語図屏風
( そがものがたりずびょうぶ:soga monogatari zu byobu )
曽我物語は曽我十郎・五郎の兄弟による仇討の物語であり、曽我物語図はこれを主題とした絵画である。
渡辺美術館所蔵の六曲一双屏風では、右隻に、源頼朝が行った《富士の巻狩》(兄弟が父の仇の工藤祐経を狙うが失敗する)の場面を表し、左隻に、同日の晩に起きた《夜討》(兄弟が祐経を討つ準備を進め、ついに仇討を果たし絶命する)の顛末を表す。
様式的に、桃山時代末期の土佐派の主要絵師である土佐光吉(1539〜1613)の中期から後期の作品と推定され、制作年代の下限は1610年代と考えられる。現在する曽我物語図屛風のうち、現存最古の作例である。
人物は右隻に84名、左隻に157名のあわせて241名を数え、加えて動物は、武士が伴う馬や犬をはじめ、鹿、猪、兎等が多く描かれる。描写は総じて丁寧、繊細である。人物像の描き分けや建築モチーフ配置も巧みで、動植物や器物まで実に多彩な衣服の文様も大変魅力的である。なお、富士山を麓しか描かないことや、頼朝を右隻の中心に配置する点、残虐な描写を控える点などは他の曽我物語図と比較して特徴的である。
伝来については不明な点が多いが、美術史上評価の高い光吉の大画面の物語絵画としてきわめて貴重な作品であり、良質の絵の具を使用した優れた出来映えを示す点、土佐派では他例のない曽我物語を扱う点でも意義深い。
文化財の種別 |
有形文化財
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区分 |
指定
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指定種別 |
県指定保護文化財
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分類 |
県指定の絵画
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所在地 |
鳥取市覚寺55 公益財団法人 渡辺美術館 |
指定年月日 |
令和4年4月26日 |
所有者等 |
公益財団法人 渡辺美術館 |
参考文献 |
宮島新一『日本の美術247 土佐光信と土佐派の系譜』、至文堂、1986年。
泉万里「曽我物語、源平合戦図屏風等について」『(財)渡辺美術館所蔵品調査報告書』、2006年。
江村知子「研究資料 土佐光吉筆「曽我物語図屏風」について」『美術研究』394、2008年。
江村知子『日本の美術543 土佐光吉と近世やまと絵の系譜』、至文堂、2011年。
三戸信惠「曽我物語図屏風に関する一考察―新出本と渡辺美術館本を中心に―」『国華』1496、2020年。 |
参考リンク |
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問合せ先 |
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備考 |
六曲一双
各隻本紙 縦155.0cm×横358.0cm |
アクセス方法 |
JR鳥取駅より砂丘・岩井方面行バス約15分。「渡辺美術館前」下車。
鳥取空港よりタクシーで約10分。 |
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公開状況 |
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