宮内の嫐打ち神事
( みやうちのうわなりうちしんじ:miyauchi no uwanari uchi shinji )
大山町宮内の嫐打ち神事は、同地に鎮座する高杉神社に伝承される行事で、閏年の旧暦9月15日から16日にかけての深夜に行われる。社伝では、雄略天皇丙辰の年(476年)に郷の人々に不幸が続いたため託宣してもらったところ、官女松媛命と千代媛命が妃となった細姫に嫉妬の念を燃やして祟っていると出たため、女神の社殿(本殿・仲殿・末殿)を創建して同神事を行うようになったと伝えられている。嫐打ちとは、前妻が後妻を襲撃し、後妻も応じて双方打ち合いを行い、仲介人が折りを見て引き揚げさせる習俗である。
神事は、氏子中から輪番で選出した「打ち神」3人が主役を務め、「下神主(〆曳)」が神事の補佐を行う。夜11時頃に神社に参集して神事が始まる。打ち神はお祓いを受け、神前に供えた御供を食べさせると、神霊が憑依するといわれる。その後、水垢離を行い、神幸行列に護られながら神事場に向かい、「投げ杯」「打杖渡し」の行事を行った後、最後の打ち合い式が行われる。「今宵の神事潔ぎ良し」の言葉と同時に三方から進み出て打ち合わせ、「本殿の勝ち」の宣告で終了となる。その後、御供を参拝者に配布する。これをいただくと無病息災になると言われている。
深夜に提灯と月明かりを頼りに神事が進められること、潮垢離・水垢離が行われること、神と人との共食儀礼が行われること、神霊が憑依するという伝承があることが注目される。これらは古い時代の祭礼要素であり、また神霊憑依については県内唯一の伝承例であることから、貴重な無形民俗文化財である。
文化財の種別 |
民俗文化財
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区分 |
指定
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指定種別 |
県指定無形民俗文化財
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分類 |
県指定の風俗慣習
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所在地 |
西伯郡大山町宮内 |
指定年月日 |
平成30年4月27日 |
所有者等 |
嫐神事保存会 |
参考文献 |
『鳥取県神社誌』鳥取県神職会編、1934年
桃裕行「うはなりうち(後妻打)考」(『日本歴史』第35号、1951年4月)
浜田武夫「うわなりの神事について」(『伯耆文化』16、1952年11月、伯耆文化研究会)
『大山町誌』大山町誌編さん委員会編、1980年
川上廸彦「うわなり打ち神事起源考」(『伯耆文化研究』第2号、2000年11月、伯耆文化研究会) |
参考リンク |
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