これまでにお寄せいただいたご意見等と県の対応・取組状況

2022年8月3日
2022年7月25日
美術品の購入について
コロナ禍に高額の美術品を購入するべきではない。
 県立美術館は、未来の鳥取県の人づくりや芸術文化の発展、そして観光振興などに多面的に寄与していくことをコンセプトとしており、実現に向けて最も重要な展示について検討を進めています。

 令和7年春の開館まであと約2年半となった今、これまで収集してきた美術コレクションの補完・さらなる拡充が必要となっており、厳しい社会情勢で限られた予算の中で収集方針と購入計画を具体的に検討し、今こそ購入しなければならない作品を慎重に見定め、集中的に購入しています。
 
 収集方針については、これまで鳥取県ゆかりの作家の作品を中心に据えてきましたが、開館を視野に入れ、対象を国内外へと広げ、県民がいつでも気軽に、多様で優れた芸術に触れられる環境をつくるため、新たに「国内外の優れた美術」という収集方針を拡充しました。

 このたび購入を検討しているアンディ・ウォーホルの作品《ブリロの箱》シリーズは、20世紀の最も重要な美術動向のひとつである「ポップ・アート」を代表する作品であり、「国内外の優れた美術 ─戦後の美術・文化の流れを示す優れた作品」に最もふさわしいものとして選定したものです。 

 「ポップ・アート」は、第二次大戦後のアメリカにおける大量生産・大量消費社会の確立を背景に、商品やその広告、雑誌やテレビといった日常に溢れる世俗的なイメージを主題にしてシルクスクリーンなどの機械的な手法で制作された作品を指しますが、本作はその特徴をよく示す典型であると同時に、最も急進的で、戦後現代美術の記念碑ともいえる作品となっています。

 本作でウォーホルは、大衆文化のイメージをモチーフとして選んだだけでなく、店舗の棚に並んでいる商品と全く同じ形とデザインの箱を約100個制作し、ギャラリーや美術館の空間にまるで倉庫のように積み上げて展示しました。芸術と生活の間の壁を壊し、「芸術とは何か」という根源的な問いを提出した本作は、20世紀美術史に名を残す革命的な事件として記憶されています。
 
 また、コンセプチュアル・アートやミニマル・アートをはじめとするその後の現代美術の動向や表現手法に大きな影響を与え、ストリート・グラフィティやゲーム、アニメといった大衆文化・サブカルチャーの表現が美術の領域と融合し、新たな表現を生み出している現在の美術の状況の基盤を作ったことも、本作の重要性としてあげられます。

 さらに、本作が発信する「これまでにないアイデアで、新しい表現、アートの未来を切り開く」というブレイク・スルーのメッセージは、鳥取県の子ども達が従来の常識にとらわれずに柔軟に発想を転換し、強くしなやかな思考を身につける上で大きく寄与する、教育的意義の高いものと考えます。

 本作がコレクションの中核に加わることで、そこから派生した幅広い表現を県立美術館の特徴あるコレクションとして、今後充実させていくことができると考えています。作品の収集は引き続き今後も行っていきますが、県民の皆様にはその都度ご説明し、理解をいただけるよう努めていきますので、よろしくお願いします。
 
 近く、美術館のコンセプトとそれに連動する収集方針の拡充、さらには、どのような作家の作品購入を想定し、展示展開を企図しているか等、県が作品を購入する意義・意味合いについて広く県民に周知する説明会等を計画しますので、ご参加いただければと思います。(令和4年8月3日現在)
博物館