住民監査請求に基づく監査結果
2022年11月14日提供 資料提供
提供課等:監査委員監査委員事務局
担当/係名:監査第二課
電話番号:0857-26-7549
FAX番号:0857-26-8173
地方自治法第242条の規定により請求のあった鳥取県職員措置請求(住民監査請求)に基づき監査を行った結果、措置請求事項については理由がないものと認め棄却することを11月14日に決定しました。
監査を実施した監査委員:桐林正彦(きりばやしまさひこ)、山根朋洋(やまねともひろ)、奈良井恵(ならいめぐみ)、福田俊史(ふくたしゅんじ)
1 請求の要旨
日本国政府は、2022年9月27日に「故安倍晋三国葬儀」(以下「本件国葬」という。)を挙行することを閣議決定し、これに鳥取県知事(以下「知事」という。)及び鳥取県議会議長(以下「議長」という。)が公費にて出席・参列することが相当の確実さをもって予測され、同月14日には知事は本件国葬に公費で参列することを公表した。本件国葬は違憲・違法なものと考えており、本件国葬に関連して支出される公費もまた違憲・違法な支出である。また、本件国葬に知事らが出席したり、公金を支出することは地方自治法(以下「法」という。)2条2項に反する違法な行為である。
よって、本件国葬に知事及び議長が参列するに際して公金を支出することの差止めの措置を求める。公金が支出されてしまった場合には、その返還等(不当利得返還請求、損害賠償請求等)を求める。
2 棄却の理由
(1)本件国葬への出席に係る経費について
知事、議長の旅費については、規程に基づき手続がなされていた。支払われた経費について、法令等に違反する点は認められなかった。
なお、国葬への参加に関して、職員の随行はなく、旅費、経費の支払がないことを確認した。
(2)本件国葬の違憲性・違法性について
本件国葬は国の行為であり、法第242条第1項に定める住民監査請求の対象外である。
(3)本件国葬に関して地方公共団体が公費を支出することの違法性について
ア 請求人の主張
請求人は、次のとおり本件国葬への知事及び議長の出席が、法第2条第2項に反する違法な行為であると主張する。
地方公共団体が行う「事務」は「法令」により処理することとされていることが必要とされるが、本件国葬に知事らが出席したり、公金を支出することを根拠づける「法令」は存在しない。 また、国葬への出席は「住民の福祉の増進」を図るものとは言えず、地方公共団体の「事務」には該当しない。
イ 法に定める地方公共団体の事務の範囲
法第2条第2項は、普通地方公共団体の事務を『「地域における事務」及び「その他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるもの」』と規定している。この規定は、普 通地方公共団体が一定の行政区域内において行政機能を担う統治団体であり、住民福祉の向上を目的として、統治の作用としての事務一般を広く処理する権能を有することを明らかにするものである。
これについて、最高裁(平成18年12月1日最高裁第二小法廷判決)では、「普通地方公共団体が住民の福祉の増進を図ることを基本として地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとされていること(法1条の2第1項)などを考慮すると、その交際が特定の事務を遂行し対外的折衝等を行う過程において具体的な目的をもってされるものではなく、一般的な友好、信頼関係の維持増進自体を目的としてされるものであったからといって、直ちに許されないこととなるものではなく、それが、普通地方公共団体の上記の役割を果たすため相手方との友好、信頼関係の維持増進を図ることを目的とすると客観的にみることができ、かつ、社会通念上儀礼の範囲にとどまる限り、当該普通地方公共団体の事務に含まれるものとして許容されると解するのが相当である。
しかしながら、長又はその他の執行機関のする交際は、それが公的存在である普通地方公共団体により行われるものであることにかんがみると、それが、上記のことを目的とすると客観的にみることができず、又は社会通念上儀礼の範囲を逸脱したものである場合には、当該普通地方公共団体の事務に含まれるとはいえず、その費用を支出することは許されないものというべきである。」と判示している。
ウ 本件国葬の内容
監査の結果、知事又は議長が本件国葬について主催者から伝えられた情報は、本件国葬が社会通念上の儀礼の範囲を逸脱すると判断するに足りる内容は含まれていない。
エ 監査委員の判断
法第2条第2項に規定する「地域における事務」には、個別具体的な法令の根拠はないが、普通地方公共団体の役割を果たすため相手方との友好、信頼関係の維持増進を図ることを目的とすると客観的にみることができ、かつ、社会通念上儀礼の範囲にとどまる行為が含まれることを前提としていることは、上記2(3)イに引用した判決からも明らかである。
また、請求に係る「国葬」の内容については、これに出席する行為が社会通念上儀礼の範囲を逸脱するものと考えることはできず、知事及び議長のいずれもその他の意義や目的を認識して出席したものとは認められない。
以上から、知事及び議長の国葬への出席は「地域における事務」と認められ、違法な行為とは言えない。
(4)本件国葬に関して地方公共団体が公費を支出することの不当性について
ア 請求人の主張
請求人は、本件国葬に関して地方公共団体が公費を支出することの不当性の根拠として、安倍元首相の実績は肯定的に評価できないものであり、国を挙げて追悼すべきとは言えない旨を主張している。
イ 監査委員の判断
法第242条第1項に言う「不当」な支出か否かは、対象とする事務の行政目的を逸脱していないか、ないしはその実現に必要かつ十分かどうかとの観点から判断すべきであり、その他の事由で判断すべきではない。
しかしながら、請求人の主張は、安倍元首相の実績が肯定的に評価できないから国を挙げて追悼すべきではないことから国葬に参加する費用の支出は不当であるとするものであり、住民監査 請求制度の対象外であると言わざるを得ない。
3 その他
詳細については、別添「住民監査請求に基づく監査結果の概要」及び報告書を参照ください。
なお、報告書は、11月14日に請求人へ通知するとともに、知事及び県議会議長へ送付し、併せてとりネットの監査委員ホームページ(https://www.pref.tottori.lg.jp/kansa/)に掲載します。
住民監査請求に基づく監査結果の概要
住民監査請求に基づく監査結果の報告書