(1)会下(えげ)・郡家(こうげ)遺跡出土人形(ひとがた)(鳥取市気高町・平安時代)
全長20.5cm、幅5cm、厚さ0.9cmのスギの板材。墨書による顔面や手、衣服の表現がある。髪を垂らした女性と思われ、衣装の裾をまくっているように見える。「天の岩戸」神話の描写と同様で、女性と祭祀の関係を考える上で重要な資料。
(2)下坂本清合(しもさかもとせいごう)遺跡出土小型卒塔婆(そとば)(鳥取市気高町・12〜13世紀)
3点中2点が完全な形で残っていた。これらは全長14.6cm、幅2.2cm、厚さ1.1cmのマツ属のやや厚い板材。先端部は山形で、両側面に切り込みを入れて、下端部に1本の軸が突出している。表面には、「南无阿弥陀佛(なむあみだぶつ)」の墨書が認められる。これらは穴を開けた板などの台に立てて使われたものと推定され、大変珍しい形態。類例はわずかに佐賀県の城原三本谷南(じょうばるさんぼんだにみなみ)遺跡で認められるにすぎない。
(3)門前(もんぜん)鎮守山(ちんじゅやま)遺跡出土墨書土器(西伯郡大山町・15世紀)
直径約3m、深さ1mの大型の穴から土師器の坏(つき)が大量に出土。大きさは底部径5cm前後、高さ3.5cm前後、口縁径11cm前後で、13点の坏の底面や側面に墨書が確認された。文字は、「普」3点、「土」「佛」「祖」「率?」が1点ずつ、不明が6点である。組み合わせることで「普天率土(ふてんそつど)」(“世界のあらゆる場所”の意味)など何らかの文になると思われるが、目的や詳細は不明。「佛」の文字があることや地名が「門前」であることなどから、寺院に関係する遺跡である可能性が高い。