コラム 湖山池と日本海の「つながり」
鳥取市にある湖山池は、縄文海進により海が入り込んだ後、北側の砂丘が発達することで海から切り離されてできた「潟湖（せきこ）」です。
日本海とつながっていた池の北側が縄文時代終わり頃に閉じたとする説とそれ以降もつながっていたとする説があります。
波がおだやかな湖山池が海とつながっていると、嵐の時などに舟を避難させるのに都合がよく、天然の良港となります。
湖山池の南西にある松原田中遺跡（まつばらたなかいせき）では、石川県産の石材を加工して管玉（くだたま）を作っており、日本海沿いの交易が想像されます。
湖山池の北東にある「溝ノ口（みぞのくち）」に滋賀県堅田の商人が移り住んだという記録があります。この商人は京都から琵琶湖と日本海を経由した交易を行ったと考えられ、「溝ノ口」が港として栄えたことを示すと思われます。
日本海とつながっていた場所として、鳥取空港の西側辺りが考えられます。この辺りは周辺寄りの低く、長らく湿地だったところで、近くには「溝川」という地名もあります。地質調査では、縄文海進が起こる前から周辺よりも低かったようで、風で運ばれた砂が水の流れ出なかなか堆積しなかったと推測されます。
江戸時代の絵図では、湖山池の北側が閉じた状態で描かれています。室町時代終わり頃になると、砂丘に大量の砂が堆積したことが分かっています。
また『因幡民談記』にはこの地域を治めた亀井茲矩が湖山池から海に抜ける堀を掘っていた時に見つけた梵鐘を鹿野の幸盛寺に奉納した話が出てきます。
これが日本海とつながっていた水路が埋まりかかっていたのを掘り直そうとしたのだとすれば、室町時代の終わり頃に湖山池と日本海が切り離されたのかもしれません。
