| 被害内容等 | 初秋には流感の流行を見たものの、その後はやや沈静の状態にあったが、この頃は寒気が一層増したので、各所で風邪や流感に罹る者が多くなってきた。昨年も年の暮れから春にかけて流感の猖獗(しょうけつ)を見たので、内務省ではこれからが心配だとあって、流感予防のポスター1万枚を印刷した。また、全国の病院、工場、学校、軍隊、及び民間の医師等から流感予防の意見書を徴し、既に700通を超える返答が集まっており、近日中には一まとめにして発表する。その他、外国にも内務省の防疫官を派遣し、種々の予防方法の材料蒐集に努めている。これについて、内務省の衛生局長は語る、「北里伝染病研究所の技師、内務省の防疫官が主になって、専ら流感の予防に努力しているが、外国の予防方法を見ても、何分流感の病原菌が不明なので予防法にも困っている様である。今まで、全国の各府県からの報告は、昨年に比較して患者数は多くはないが、風邪と流感との区別が明瞭ではなく、また、昨年も一昨年も年の暮れになって人と人との往来が頻繁となり、忘年会だの、やれ正月だのと遊び浮れて飲み過ぎや食い過ぎ、その上無用心になりがちなので一層の流行を見たのである。本年はどうかこの悪疫の流行を見ず、唯みんなが自重してくれればよいが、と心配でならぬ」、とのこと。 |