| 被害内容等 | 最近鳥取市では流行性感冒が猖獗(しょうけつ)を極めている。伝染病研究所博士は語る。「インフルエンザの多くは伝染性のもので、1885年から90年までの世界的大流行の際、ドイツのバイペル氏が最も小さな桿(かん)状菌を発見してインフルエンザと名付けて以来、その後しばしば流行しているが、その都度異なった黴菌(ばいきん)・重球菌とか、肺炎菌に似た黴菌が発見されるため、今日では原因は数種の黴菌と考えられている。主な伝染経路は、咳をする時に飛散する唾の中に含まれて空中に飛散し、その折に、接近した場所で空気を吸入した者が咽頭粘膜から感染する。故に咳をする時にはハンカチーフを口にあてて咳をし、伝染を防がなければ、忽ち一家中に伝染することになる。予防としては、咽喉や鼻の粘膜を健全にし、食前後・入浴の際は努めてうがいをして、咽喉の清潔を心掛け、また腸胃の健全を計って全身粘膜の細菌に対する抵抗を旺盛にし、便秘にならない事、過度の飲酒喫煙をしない事等に注意すれば良い。次に、目下の季節は伝染病の流行期であって、殊に昨今のように霖雨の後で晴天が1、2週間続いた後は最も伝染病菌が繁殖し、威を逞しくする時であるから当分は大いに注意しなければならない。原因は主として飲食物にある。チブス・赤痢等がもっとも危険である。予防としては、生ものを食べないという、ごく簡単な注意で足りる。焼魚なら骨の附近にまでよく火を通さねば危険である。果物は皮に傷さえなければ大丈夫である。もし万全を期するならごく薄い塩酸で洗えば消毒が出来る」。 |