1 事業内容
県(県土整備)が行っている塩分導入試験に対する魚類への影響、水質の変化を把握するとともに、重要魚種の資源状況把握及び水産振興策としてのシジミ増殖の可能性を検討する。
【調査方法】
●生物資源調査
・定置網調査・・・池奥、池口、水門上下流に定置網を設置し、魚類相の変化を調査
・プランクトンネット調査・・・流入河川河口域でプランクトンネットによりワカサギ、シラウオの発生量を調査
・ワカサギ・シラウオ産卵場調査・・・流入河川、池内岸辺で砂を採取し、産卵場の有無を把握する。
・ワカサギ・シラウオ耳石解析・・・ストロンチウム解析により降海の履歴を解析し、DNA解析により由来を解析する。
●水質調査
池内7カ所で週1回、水深別に塩分、水温、DOを測定
●操業野帳の記入
ワカサギおおだも、エビだもについて漁期中操業野帳を記入してもらい、ワカサギ、シラウオ、テナガエビの資源動向の資料とする。
●シジミ増殖試験
・池内6カ所で採泥器により稚貝の発生状況を調査
・池内約60カ所で泥を採集し、砂質、硫化水素量を測定し、生息適地を把握する。
・囲い網およびいけすに稚貝を放流し、その生残状況を観測し、成長、生残率を推定する。
2 概要・背景
千代川河口付替以前の「湖山池の汽水湖としての再生」と「豊かな生態系回復」を目的に、平成17年11月から平成22年度までを試験期間として、湖山水門の開放時間を長くする「塩分導入実証試験」を実施しているが、これによる池内の魚類等への影響調査を水産試験場で担当している。
3 効果
これらの試験により豊かな生態系を回復し、安定した漁業生産が期待される。
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
<取組状況>
・平成17年11月から実施されている塩分導入実証試験に対応して、湖山池及び湖山川水門上下流に於いて、定置網を用いて魚類相及び水質の変化を観測している。
・平成20年に発生した池内の悪臭問題に対応して、池内4カ所でフナ、ワカサギ及び底の泥を採集し、悪臭成分の量を測定し、発生場所の特定とその原因を調査している。
・池内の塩分濃度が上がったことによりヤマトシジミの増殖が可能か調査している。
・湖山池内の漁業上重要資源であるワカサギ・シラウオ等の資源状況について調査を行っている。
<現時点での達成度>
・魚類相及び水質調査・・・魚類相は海産由来のものが若干増加した。水質調査では6月から9月にかけて池底部に低酸素層が確認された。
・悪臭対策調査・・・悪臭成分は内蔵で多く抽出されることが判った。
・ヤマトシジミ増殖試験・・・水門の調整により池口手前で産卵を促すことができた。
・資源状況調査・・・21年度はワカサギ産卵場が減少していた。
これまでの取組に対する評価
<自己分析>総評
・湖山池の環境については県民の注目度も高く、今後も注意深く観察を続ける必要がある。
・また、湖山池の漁業を考えるためにも必要な調査であり、塩分導入試験終了後も池内の環境、魚類相の変化、重要資源の動向調査を継続して実施していくことが重要と考える。
<自己分析>各論
・魚類相及び水質調査・・・環境の変化、環境の変化に応じた生態系の変化については長期間のモニタリングが必要。
・悪臭対策調査・・・単年の試験であり、本年の調査結果が恒常的なものか検証する必要がある。
ヤマトシジミ増殖試験・・・塩分を、水門の開閉により適度に調整し、ヤマトシジミの産卵を促すことができることの確認はできたが、微妙な調整作業が必要であった。
資源状況調査・・・重要資源(ワカサギ・シラウオ・テナガエビ等)については、漁業実態も含めての調査が必要と感じられた。