(1) 背景
○昭和50年代、かつての中海の象徴であったサルボウが漁獲統計から姿を消した。しかし、この10年の間に生存が確認され、再生への期待が著しく高まり、*中海自然再生協議会で「サルボウの復活」が推進の柱としてうたわれるに至った。
○こうした背景の下、当所ではH19よりサルボウに関する研究を開始、本種の生残に必要な塩分環境、および酸素環境を解明した。
○昨年、一日も早いサルボウの再生を目指して、島根大学・島根県・鳥取県等が連携した共同研究が発案された。概要は以下の通りである。
機関 | 研究の概要 |
島根大学 | ○現場調査による分布と生息環境の現況把握
○悪環境に強い遺伝子型の解明と現場への応用 |
島根県 | ○稚貝生産技術と放流技術の確立 |
鳥取県 | ○室内実験による生息環境の解明 |
*中海自然再生協議会とは: 様々な主体(住民・専門家・行政等)が連携して立ち上げた中海再生を目標とする協議会。
(2) 必要性
○再生に向けた放流を効率よく行うためには、放流適地が示されていることが不可欠である。
○悪環境耐性を有する遺伝子群を選抜する上で、本事業で行う室内実験の成果と実験個体が不可欠となる。
○中海のサルボウ再生を行政機関が検討する上で、本事業の成果は必須となる。
○稚貝の放流適地を決める上での判断情報を提供することで分布拡大に貢献する。島根県は現在、稚貝の生産技術を確立、当所の成果に基づいた試験放流を計画している。
○サルボウ再生の指針が作成されることで、行政機関が科学的根拠に基づいて再生に向けての体制を構築できる。