1 事業内容
平成19年度から平成21年度まで鳥取大学との共同研究で鳥取平野及び大山南西麓の地下水の量や流動及び水収支の調査研究を実施してきた。この調査研究で得られた知見を基に、「持続可能な地下水利用に係る制度検討会(仮称)」を立ち上げ、地下水規制等の制度の必要性やあり方を検討していく。
また、大山南西麓の河川流量、降水量等の観測機器によるデータ収集を引き続き行う。
鳥取平野の地下水位の状況は、関係機関と協力しデータ収集に努める。
なお、この調査研究のために発足した「地下水研究会(鳥取大学、衛生環境研究所、水・大気環境課)」は存続し、必要に応じて収集したデータから再評価を行い、規制の見直しの判断材料とする。
2 要求額
持続可能な地下水利用検討事業費 1,685千円
3 事業の目的・背景等
大山周辺地域に地下水利用を目的とした企業の進出が相次いだことを契機に、県議会でも取り上げられる等、地下水の量や収支等への関心が高まった。
これを受け、鳥取大学の地盤・地質、水理等関連分野の専門家とともに「地下水研究会」を設置し、企業進出が相次ぐ大山南西麓と、過去に地盤沈下が発生して問題化した経緯がある鳥取平野を対象に、平成19年度から21年度までの3年間、地盤・地質の構造、水系(河川、地下水)の流量・水質等の調査や情報収集を「共同研究」として実施してきた。
4 成果
<鳥取平野>
○鳥取平野には、少なくとも3層の地下水が存在する。そのうち1層の不圧地下水は、長期的に水位変動がなく、良好な状況である。一方、2層ある被圧地下水は、平均海水面の高さ以上にまで水位が回復している状況であり、現状では枯渇のおそれはない。
○鳥取平野の地盤沈下は沈静化しているが、平野の北東部で被圧地下水の塩水化が観測されている。これは、深部地下水の影響であると考えられるが、現在、塩分濃度の上昇は収まっている。
○持続可能な地下水の利用に向けて、地下水利用の現状を把握し、塩水化の推移について監視していく必要がある。
<大山南西麓>
○大山南西麓の表層は、火山性堆積物で覆われ、浸透性が高い。このため、雨や雪などの降水量の10〜20パーセントが深層地下水に供給されている。
○年間降水量を2,300ミリメートルとすると概算で深層地下水の全量は、4,400万万立方メートルあると推測され、豊富な水量がある。
○持続可能な地下水の利用に向けて、地下水利用の現状を把握する必要があり、また、灌漑用水の実態や河川流量を含めて常時監視していく必要がある。
5 今後の方針
(1)制度検討
平成22年度中に共同研究で得られた知見を基に「制度検討会」で、地下水利用に係る規制等の必要性やあり方を検討し、方針を決定する。
(2)大山南西麓の継続監視調査
大山南西麓の観測機器(河川流量、降水量、地下水位、融雪水量)のデータは、2年分しかなく、気象条件の変化にどう変化するか十分な情報が得られていない。今後、現在の観測地点での継続監視をしていきながら、必要に応じて地点の見直しをする。
(3)鳥取平野の塩水化
今回の調査研究で、塩水化の現況と原因を推定できたが、今後の推移を継続監視する必要がある。また、地下水位の状況については、観測機関の協力を得ながらデータを収集していく。