1 事業の背景・目的
(1)背景
○カラス、イノシシを中心に137百万円(H21)の被害が発生。
○シカ、ヌートリア・アライグマ(外来生物)の生息数・分布域が
拡大し、被害額が増加。また、22年度はクマの大量出没により果樹を中心に大きな被害が発生。
○野生鳥獣による農林産物被害の増加は、中山間地域におい
て耕作の放棄、引いては定住を放棄する大きな要因の一つ となっている。
〈鳥獣による被害額・捕獲数〉
被害額(百万円)
| H18 | H19 | H20 | H21 | H22 |
イノシシ | 35 | 35 | 53 | 69 | 45 |
ヌートリア | 10 | 8 | 14 | 12 | 5 |
シ カ | 1 | 1 | 11 | 36 | 1 |
カラス | 68 | 45 | 44 | 17 | 21 |
ク マ | 5 | 1 | 2 | 0 | 9 |
その他 | 5 | 5 | 5 | 3 | 3 |
合 計 | 124 | 95 | 129 | 137 | 84 |
捕獲頭数(頭)
| H18 | H19 | H20 | H21 | H22 |
イノシシ | 4,068 | 4,211 | 4,733 | 3,823 | 2,326 |
ヌートリア | 420 | 870 | 1,460 | 3,464 | 1,173 |
シ カ | 187 | 403 | 591 | 1,280 | 314 |
カラス | 3,156 | 3,045 | 2,545 | 2,551 | 1,155 |
(注)H22年度は、第2四半期までの数値
(2)目的
野生鳥獣による農林水産物等への被害を減少させるため、侵
入防止柵の設置や有害鳥獣捕獲等を支援するとともに、人材
育成・新技術の実証等により地域における効果的対策を推進
する。
2 事業の見直し方針
事業棚卸しの評価を受け、国・県市町村の役割分担を明確にするため以下のとおり見直しを行う。
(1)鳥獣被害総合対策事業費補助金(単県)
国庫事業との重複するメニューの見直しを行うとともに、補助率を一律1/3とする。
(2)総合的鳥獣被害対策の推進支援
人材養成、対策の普及や広域連携の推進等については、県の役割として 引き続き実施していくとともに、現場指導体制の強化に努める。
3 要求の内容
(1)鳥獣被害総合対策事業費補助金(単県)
【事業主体】 市町村・農協等
【補助事業者】 市町村
【補 助 率】1/3
※H22補助率
・事業主体 市町村 1/2
・ 〃 農協等 1/3
【補助事業内容】
対 策 区 分 | 主 な 事 業 内 容 |
1.侵入を防ぐ対
策 | ○侵入防止柵の整備
○緊急対応用として配備する侵入防止柵の
資材
○追払い用具等(H23対象外) |
2.個体数を減ら
す対策 | ○捕獲班員の活動費
○捕獲奨励金〈イノシシ、シカ、ヌートリア、アラ
イグマ〉
○捕獲班員の育成・確保
○捕獲用具の設置(H23対象外) |
3.周辺環境を改
善する対策 | ○緩衝帯の設置
○引き寄せ果樹の除去等 |
4.推進・支援
(H23対象外) | ○研修会、PR資材作成等
○ボランティア支援等 |
(2)鳥獣被害防止総合対策交付金(国庫)
【事業主体】
推進事業(ソフト):地域協議会(市町村、農協、猟友会等で構成)
整備事業(ハード):地域協議会又は市町村等
【交付率】
推進事業(ソフト):定額(200万円以内)
整備事業(ハード):国1/2、事業主体1/2
【事業内容】
事 業 区 分 | 主 な 事 業 内 容 |
1.推進事業
(ソフト) | ○捕獲用具
○緩衝帯の設置
○協議会・講習会・調査等 |
2.整備事業
(ハード) | ○侵入防止柵等の被害防止施設
○捕獲鳥獣の処理加工施設等 |
(3)総合的鳥獣被害対策の推進支援(県)
:1,500千円(H22 3,145千円)
対 策 区 分 | 事 業 内 容 |
1.現場指導体制
の強化(組換)
329千円
(H22 1,229千円) | ○改良普及員、市町村担当職員等への技術研修
○イノシッ士が行う現地指導への支援(フォローアップ研修の開催)
○各総合事務所(改良普及員等)による地域主体の対策支援の強化(研修会の開催、先進地調査の実施等) |
2.対策の普及
451千円
(H22 1,251千円) | ○公開セミナー、研修会等の開催
○対策マニュアルによる普及
○新技術の効果検証及び普及
○モデル地区づくり(H23:17地区) |
3.捕獲従事者の
養成(新規)
247千円 | ○外来生物防除に係る技術講習会の実施
○狩猟者の養成に係る検討会開催(県連絡会議狩猟部会の設置) |
4.中山間の支援
165千円
(H22 208千円) | ○「イノシッシ団」・「イノシッ士」による労力・技術の支援 |
5.広域連携の促
進 308千円
(H22 457千円) | ○県連絡会議・部会、地区協議会、隣接県との鳥獣被害対策の連携 |
(4)非常勤職員(一般事務)の配置:2,442千円 新規
○配置の必要性
鳥獣被害対策専門職員の任期切れに伴い、来年度以降、現場
指導の体制を農林局等を中心とした体制に移行することとしてい
るが、職員の異動などもあり、農林局への技術の定着が十分で
ない現状がある。
クマやシカ、外来生物など新たな課題が増えて来ており、地域
からの指導要請も依然として多くなっており、現場に出なければ
いけない状況が依然として多く、事務処理を行う職員がいないと
残る2名の職員で対応するとなると業務過多となるため、業務の
遂行のみならず職員の健康面においても支障をきたしかねない
ことから、非常勤職員1名の配置が必要である。
○要求内容
〈期間〉平成23年4月1日〜平成24年3月31日
〈業務の内容〉
・ 補助金事務に係る起案、文書施行、連絡調整などの業務
・ 鳥獣被害情報の収集、取りまとめ、情報提供
・ 鳥獣被害対策担当の事務的な用務
〈経費〉
・ 報酬 2,121千円
・ 共済費 321千円
4 事業棚卸しへの対応
評価@
必要性は高いが、実施主体については県と市町村の役割を再検討すべき。
【対応】
・ 市町村は、柵設置、捕獲等具体的対策の実施
・ 県は、技術の普及・教育、市町村間の広域的調整・連携促進
の役割を再確認。
評価A
地域毎の対策は市町村実施、県は広域的な対応・調整に特化していくべきであり、財源に関しても検討を要する。
【対応】
・ 役割分担は検討済み(上記)。その裏付けである財源は、県が
急激に財源の見直しを行うと、対策を後退させるため、激変緩
和に配慮して以下のとおり。
ア)県補助率を引き下げて、一律1/3に見直す
イ)国事業と重複する単県事業の以下のメニューを廃止
・「捕獲用具の購入」、「推進・支援費」
評価B
広域的な対策と個別地域対策を組み合わせ費用対効果が高く、効果的な仕組みとすることが必要。
【対応】
・ 市町村が個別具体的防除対策を実施し、県が市町村を越えた
広域的な調整を行って対策を実施する仕組みは既に出来てお
り、一層の活用を図る。
広域的な仕組み:
県鳥獣被害対策連絡会議(県全域/本会議、各部会)
地区鳥獣被害対策会議(各総合事務所管内)
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
<政策目標>
○野生鳥獣による農林水産被害等の減少
・侵入防止柵の設置、有害鳥獣捕獲等の支援
・地域ぐるみの集団的・計画的な対策の推進
(鳥獣対策モデル地区の設置 目標地区数23地区)
・人材育成等による効果的な対策技術の全県的普及
<取り組み状況>
○指導者の育成
・改良普及員等の研修8回(目標8回)
・「鳥獣・里山塾」による民間指導者「イノシッ士」の養成
(H20年度) 34名、(H21年度) 27名 (H22年度)52名養成中
○技術の普及
・県版マニュアル「鳥獣対策 虎の巻」の作成(2千部)・普及
・鳥獣対策モデル地区 17地区で取組み中(H22年度目標 15地区)
・研修会等による技術指導
(H20)121回、1,386人 (H21)95回、1,357人
(H22.10現在)661人
・広報活動:農協だより、新聞等への掲載、パネル展示など
これまでの取組に対する評価
<自己分析>
○補助事業及び対策技術の普及活動により、集団的・計画的・効果
的な対策が県内各地で進みつつある。
○新規被害発生地・対策遅延地域における集団的・計画的な対策の推進が必要である。
○シカ、ヌートリア・アライグマなどの個体数・生息域が拡大しつつある鳥獣への対策を早期に講じる必要がある。
<改善点>
○効果的対策を県内全域に普及するため、改良普及員等への技術研修を行うとともに、「鳥獣・里山塾」で養成したイノシッ士が地域で指導出来るようフォローアップ研修を実施し、現場指導の体制強化を図る。