1 事業概要
本県西部では平成22年から茶生産者が中心となり、免疫力向上やインフルエンザなどの感染症の発症緩和効果があるとされる機能性ハーブ(エキナセア)を栽培し、茶加工品を開発する取り組みが始まった。この取り組みをさらに拡大し、機能性ハーブを地域の活性化につながる県西部中山間地の新しい特産品として振興するため、鳥取大学と連携して、そのハーブの機能性について医学・薬学的検証を行なう。
2 目的
(1)農医連携のモデル事業として、大山山麓で栽培した機能性ハーブの有効成分の含有性について科学的な分析データを収集し、特産物の品質基準を提示し、付加価値を高める。また、ハーブの抗インフルエンザウイルス等の作用について、医学・薬学的な実験データを取得し、開発する特産品の効果的活用に資する。
(2)機能性ハーブの栽培振興により、耕作放棄地の有効利用を促進する。
(3)このハーブは花の観賞価値も高く、広域栽培により景観保全や観光集客の新たなツールとしての活用をめざす。
(4)茶や他の食品への機能性ハーブの利用を検討し、「食のみやこ鳥取県」を推進する。
3 背景
(1)県西部の大山山麓において、高品質の茶栽培が営まれているが、近年の産業構造不況や消費嗜好の変化にともない、経営不振が続いている。
(2)耕作放棄地の解消のため、経営的に有利な栽培品目の模索が行われている。
(3)荒廃地が増え、農地再生や景観保全の対策の必要性が問われている。
(4)当該機能性ハーブは欧米では広く認知され、サプリメントや医薬として最もよく売れているハーブ素材であるが、日本では一般にほとんど知られておらず、今後の普及が期待できる。
(5)当該機能性ハーブの安全性は高いとの評価がなされており、日本では「非医薬品」扱いで食品への使用が可能である。
4 効果
(1)中山間地における新規営農品目の導入による経営安定化
(2)耕作放棄地解消への寄与
(3)県内食品業界への新たな機能性食材の提供 → 「食のみやこ鳥取」への貢献
(4)景観美化による観光集客力の向上
5 事業期間
平成23年度〜平成24年度(2カ年)
6 年次別事業計画
【平成23年】
(1)当該ハーブに含まれる機能成分の定量調査
(2)ヒト培養細胞を用いたインフルエンザウイルス感染試験による当該ハーブ成分の薬効調査
【平成24年】
(1)開発するハーブティーに含まれる機能成分の定量調査による品質評価技術の確立
(2)培養細胞を用いたインフルエンザウイルス感染試験によるハーブティー抽出成分の薬効調査
7 所要経費(平成23年度)
(1)ハーブに含まれる機能性成分の委託分析費(1,000千円)
(義務付けられた食品成分表示以外に、薬効成分含有量の表示を可能にすることにより、商品価値を高める手法をモデル実証する)
(2)上記機能性成分のインフルエンザウイルス増殖抑制活性の評価試験の委託費(1,500千円)
(薬効成分の正しい医学的情報を提示する)
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
・ 大山町の茶生産者らがH22年5月に大山ハーブティー開発研究会を設立し、ハーブティーのヒット商品開発のため機能性ハーブの試作を開始。これまで5,000株の種苗を定植し、順調な栽培経過がみられている。
・上記研究会による機能性ハーブティー栽培およびその加工に関する事業は(財)鳥取県産業振興機構の農商工連携研究開発支援事業(H22年・単年度)の審査を受け採択された。
・平成22年8月、鳥取大学および西部総合事務所による県西部の地域振興に関する意見交換会が行われた。大山周辺で栽培する当該ハーブの薬効調査と商品価値を高める取組にに対して、鳥取大学が協力または参加することで合意した。
・平成22年9月、鳥取大学医学部感染制御学講座教授、上記茶生産者、支援機関関係者らによる当該ハーブの機能性調査に関する協議を実施。
これまでの取組に対する評価
・ 大学医学部との連携には調査・分析等に多額の経費が必要で、農業者の負担感大きい。農業者の補完代替医療分野へ新たな挑戦にはハードルが非常に高い状況。
・ 医学部や医療分野との連携に必要な手法についてモデル的な検証が必要。
・ 大山町商工観光課および鳥取県西部東商工会へ大山ハーブティー開発研究会は活動状況の情報発信を行っており、両機関は現場での斬新な取り組みに対し、期待感を示すとともに支援準備を検討している。