1 概要と目的
鳥取県版グリーンニューディール政策促進の一環として、フェロニッケルの精錬工程で発生するフェロニッケルスラグ(FNS)の利用促進を図るため、FNSの混入率を高めた土木資材の二次製品用コンクリートの技術開発を行う。
鳥取県グリーン商品として、鳥取県コンクリート製品協同組合よりFNS、発泡ガラスをそれぞれ、製品重量の5%、0.2%を混入したコンクリート二次製品の申請があったが、FNSの使用量が少ないことや、空気量が少ないため対凍害性の検証や適切な水セメント比(W/C)と強度の関係等が不明であり、公共事業で積極的に使用していくには、解決しなければならない問題点等が多々存在する。
これらの問題点を、(財)鳥取県建設技術センターが県内の研究機関(鳥取大学)や鳥取県コンクリート製品協同組合との調整及びマネジメントを行うことにより、FNS使用量をアップさせた二次製品用コンクリートの技術開発と検証を行い、FNSの県内利用を促進する。
【フェロニッケルスラグとは】
フェロニッケルの精錬の際に副産される溶融スラグを除冷、或いは水又は空気で急冷して得られるスラグのこと。(スラグとは、金属等の精錬や焼却灰の溶融処理時に副産される固化物のこと。)
2 現状と背景
旧岩美鉱山の坑排水処理に伴い発生する澱物(汚泥)は、京都府内の精錬所が鉄鉱石の代替物として利用できるため、平成15年に売買契約を締結し、資源としてリサイクルしている。
通常、澱物は産業廃棄物として処分されるもので、莫大な処分費用が必要となるが、旧岩美鉱山の場合、前述のような契約によりリサイクル化を行うことで反対に収入となっており、契約を継続することは施策上重要である。
3 問題点
・澱物は坑排水処理を続ける限り、発生し続けるものであり、澱物の売買契約存続のカギは、精錬工程で発生する副産物であるフェロニッケルスラグを安定して県内で消費することにある。(県内での安定消費が課題)
・FNSは生コンクリート用の細骨材、アスファルト骨材、埋戻材等で利用されているが、FNSの安定した県内消費を見込むには、土木資材の二次製品への活用を模索する必要がある。
・循環型社会構築や資源の有効利用の観点から、今後も永続的に発生する坑排水の処理に伴う澱物の再資源化が重要な課題。
期待される効果
FNSの混入率を高めた土木資材(コンクリート二次製品)を公共工事で使用することにより、安定したFNSの県内利用促進が図られる。
5 事業費【平成22〜23年度債務負担行為】
全体事業費 C=8,734(8,994)千円
【平成22年度】 事業費 3,858千円
(内訳)
・技術開発業務委託料 3,668千円
・標準事務費 190千円
【平成23年度】 事業費 4,876(5,136)千円 ※今回要求
(内訳)
・技術開発業務委託料 4,876千円
・標準事務費 0(190)千円
※( )内は昨年要求時点
6 事業内容
下記内容の業務を2ヵ年にわたり実施し、FNSの混入率を高めたコンクリート二次製品を開発し、FNSの県内利用促進を図る。
@二次製品工場の実態調査
工場実態に合わせた配合を行うため、各工場の生産状況や関係者の意見聴取等の現地調査を行う。
A関係機関との調整
実態調査結果に基づき、関係機関と調整を行い、問題点を抽出し実験計画(案)を作成する。
B共同研究参加の調整
実験計画(案)に基づき、大学との調整を行い、実験計画を決定する。
C共同研究の実施(センターと大学との協同)
実験計画に基づき、コンクリートの性能試験、コンクリートの製造方法等を検討し、標準配合を決定する。
D二次製品工場の修正配合設計
標準配合に基づき、試験練りを行い、評価試験を行う。評価試験により問題点を洗い出し、修正配合を行う。
E二次製品工場の製造能力評価
修正配合に基づき、工場の製造ラインで実際にコンクリート二次製品を作成し、確認試験を行う。
Fコンクリート二次製品の性能評価
修正配合により製造されたコンクリート二次製品の評価(強度、外観、出来映え等)を行う。
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
・フェロニッケルスラグの混入率を高めた二次製品については、性能試験による実証がないことから、公共事業で積極的に使用されていない。
・技術開発業務については、鳥取県建設技術センターと委託契約を締結(平成22年8月)し、鋭意業務を進めているところである。
これまでの取組に対する評価
技術開発業務において、フェロニッケルスラグの混入率を高めたコンクリートの試し練りを行ったが、特に大きな問題はなかった。今後は、二次製品としての利用が可能かどうか、各種性能試験を行い検証する予定である。