1 事業概要
水ビジネス市場うち排水処理分野には県内企業の技術シーズがある。しかし排水処理方法は工場によって異なり、また県内企業は自社技術の評価を検証する機会もなく、ニーズとシーズのマッチングが困難な状況。そこで、自社技術を評価し、その結果を踏まえた研究開発等の取組を支援することによってシーズとニーズのマッチング、ひいてはビジネスの実現化を支援する。
〔事業スキーム〕
(1)排水処理企業を選定(要求額:17千円)
排水処理分野で国内外での事業化に意欲のある県内企業の「技術、研究開発実績」を公募し、選定委員会がを科学的根拠で2社選定(無機系処理、有機系処理各1社)。
※選定委員:産業技術センター、衛生環境研究所
(2)選定企業が実施する技術評価に対して支援
(要求額4,000千円)
選定企業の自社技術の評価を検証し、事業化への課題を抽出するため、以下の補助事業で支援(本事業は義務付け)。
○対象者 (1)で選定した企業2社
○補助率 2/3(※新規性、リスクが高いため)
○補助金 2,000千円(事業費3,000千円)
○対象事業 自社技術の評価(コスト、時間、濃度など)
<技術評価のイメージ>
・選定企業の過去の実績と技術訴求点などを再整理し、事業展開イメージを構築
・国内製造業に対して、技術情報サイト(国内最大級)を通じて、技術内容等を市場告知
・サイトにアクセスした企業の情報取得・分析(ダウンロード閲覧者属性、閲読者等)
・ダウンロード閲覧者に対するアンケート調査の実施・分析
⇒業種業態ごとの技術評価により、ニーズの絞込みと事業化への課題を抽出
(3)技術評価を踏まえた研究開発等に対して支援
(要求額8,000千円)
技術評価の結果に基づき市場への不適合を修正するため、採算性の調査や事業計画素案の策定、研究開発計画を策定し、以下の補助事業で支援。
○対象者 (2)の技術評価を実施した企業
○補助率 2/3以内(※新規性、リスクが高いため)
○上限額 4,000千円/件(事業費6,000千円/件)×2件
○対象事業
・事業可能性調査:採算性の調査、事業計画の構築など
・研究開発:システムの改良など
・販路開拓:展示会・商談会への参加など
(4)事業化委員会により事業化を支援(要求額 449千円)
企業の事業計画策定、水ビジネスに詳しい外部の有識者からなる事業化委員会を設置し、事業化に向けて支援。
※事業化委員:商社系コンサル、鳥大MOT、産業振興機構
〔フォローアップ体制〕
事業終了後5年間は実施状況の報告を義務付け、県、衛生環境研究所、産業技術センターが事業化をフォロー。
2 成果
○自社技術の評価の検証を行うことによって、水ビジネスの事業化に向けた課題が浮き彫りになる。
○課題を踏まえることによって、ターゲットを絞った研究開発、販路開拓を行うことができ、水ビジネスへ参入しやすくなる。
3 現状・課題
○水ビジネスの分野は主として上水(官公需)、工場排水処理(民需)等の分野がある。
○工場排水処理に関しては、規制強化や再利用への関心の高まりから需要が拡大傾向にある。排水処理施設の建設や機器の据え付けを中心に今後も安定的な成長が期待できる。
○特に中小企業の需要開拓が進展しており、排水処理等に取り組む県内中小企業に参入のチャンスがある。
○県内企業の方々と一緒になって経済産業施策を検討する「経済・雇用振興キャビネット」において、県内企業等のニーズを踏まえ、H22は水ビジネス(浄化分野)WGを立ち上げて検討を行った。
4 現場(キャビネット委員)の声(主なもの)
○処理する排水(工場)ごとに処理方法が異なるため、小回りがきく中小企業に参入に可能性がある。しかしながら工場ごとの調査を行うと膨大な費用が発生する。
○国内市場はコスト勝負。従来処理できなかった成分を処理できるなど新製品・技術を提供できれば国内展開の可能性がある。
○海外展開には、商習慣の違い、現地でのパートナー企業探しなど様々な壁が存在するが、まずは国内での実績づくりが重要である。