1 事業概要
風邪やインフルエンザなどの感染症に対する発症緩和、免疫力向上、アレルギー反応緩和等の効果が期待され、近年、欧米で急激に需要を伸ばしているメディカルハーブのエキナセアを大山山麓の新たな特産品に育成する支援を当普及所は行っている。
本事業は、薬理作用の不明な部分が多く残されている当該ハーブの機能性検証と、開発製品の評価支援を通して、「農」と「医」 が連携した地域振興策をモデル実証する。
| | 内訳 | 委託先等 | 事業費
(千円) |
| 1 | 機能性成分含量分析委託 | 鳥取大学農学部 | 1,429 |
| 2 | 抗ウイルス活性評価委託 | 鳥取大学医学部 | 1,429 |
| 3 | 抗花粉症活性評価委託 | 鳥取大学医学部 | 2,571 |
| 4 | 治験用サプリメント製造委託 | 大山ハーブティー開発研究会 | 300 |
| 5 | 開発製品モニター試験助成 (補助率:県1/2) | 大山ハーブティー開発研究会 | 360
(180) |
2 事業内容
(1) 各種エキナセア試料(栽培時期別、採取部位別、系統別、および製法別)の機能性成分分析
委託先: 鳥取大学農学部 生物資源環境学科
(2) エキナセア抽出物および単離成分の動物培養細胞に対するウイルス増殖抑制活性の評価試験
委託先: 鳥取大学医学部 ウイルス学分野
(3) スギ花粉症に対するエキナセアサプリメント剤の治験
(被検者数50名の偽剤を用いる治験, 高信頼度試験)
委託先: 鳥取大学医学部 耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野
(4)上記花粉症治験に用いるエキナセアサプリメント剤の試作
委託先: 大山ハーブティー開発研究会 (製剤加工は県内サプリメント製造会社に外注)
(5)本事業にかかる新商品「大山エキナセアティー」の商品性評価のためのモニター試験原材料費の助成 補助率1/2
事業主体: 大山ハーブティー開発研究会
3 前年度との相違点
薬効成分分析および薬理作用評価の手法開発を平成23年度試験で実施している。平成24年度は前年度に確立した分析技術や評価技術を利用して、エキナセア成分本質や開発する製品の機能性評価データを取得する。また、新たに開発商品のモニター試験に対する助成を平成24年度に実施する。
4 事業期間
平成23年度〜平成24年度(2カ年)
5 目的
(1) 大山山麓産エキナセアの機能性について信頼できる科学的知見を取得し、市場競争力のある地域ブランドを育成する。
(2)ハーブティーをはじめ各種健康補助食品、衛生用品、化粧品、畜産飼料等の原材料としてエキナセアを利用し、健康志向にマッチした新しい地域産業振興戦略に活用する。
(3) エキナセアは省力栽培が可能な中山間地に適した換金作物であり、耕作放棄地減少への貢献を図る。
(4) 花が美しく、初夏から晩秋まで長期の鑑賞が可能なエキナセアを美観形成作物や観光集客の目玉としても利用する。
6 背景
(1) エキナセアはハーブティーやサプリメントとして欧米で最も人気のあるハーブであるが、日本ではほとんど知られておらず、早期の国内産地形成は大きなビジネスチャンスとなる。
(2)大山町内のエキナセア栽培面積は、H22年が3アール、H23年は250アールに規模拡大。さらに、H24年は500アール、H25年には1,000アールに作付けの拡大が図られる見込み。
(3)大手飲料メーカーの茶業への進出や消費志向のペットボトル飲料への流れなどで、製茶業の不振が続いており、大山地区の茶業者も新たなオリジナル商品開発を必要としている。
(4) 荒廃農地が増え、経営的に成り立つ省力栽培が可能な農作物の導入が急務となっている。
7 事業効果
(1)機能性を裏付けとした商品魅力の向上 → 販売力向上 → 原材料価格の高水準維持 → 農業者の所得向上
(2)県内の健康食品業界等への新たな機能性素材の提供→「食のみやこ鳥取」への貢献→関連企業の所得向上
(3)補完代替医療素材の提供→県民の健康維持への寄与
(4)遊休地や観光施設周辺でのエキナセア栽培→農地利用促進および観光集客力向上
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
【平成21年】
・ヒト新型インフルエンザや鳥インフルエンザ等の感染症対策に対し、農業分野から貢献する方策を検討し、エキナセア栽培が有望と着目
・栽培条件、薬効、市場情勢等の調査を実施
【平成22年】
・茶業者を中心とした農業者グループ「大山ハーブティー開発研究会」の設立を支援
・上記研究会は農商工連携研究開発支援事業の採択を受け、エキナセアの栽培と機能性ハーブティーの開発に着手
・栽培面積3アール、生産者5名で上記事業をスタート
・栽培法およびハーブティー製法の基礎技術開発に目処
【平成23年】
・農医連携モデル事業(県単)により、抗インフルエンザ活性の評価研究を鳥取大学医学部へ、薬効成分分析を同大学農学部へ委託
・課題が残っていた育苗技術の効率化に成功
・「メディカルハーブ・エキナセア産業化セミナー」を開催し、プロジェクト内容を報道公開
・栽培面積250アール、生産者15名の体制に生産規模を拡大
・本事業の9月補正予算要求案が可決され、花粉症発症緩和作用の検証試験を鳥取大学へ委託することが可能となった。
・大山町産エキナセア原料100%使用のサプリメント試作品が完成
・11月中旬に大山エキナセアティー3種(ストレートティー, 焙じ茶ブレンド,紅茶&レモングラスブレンド)を新発売予定
これまでの取組に対する評価
【大山農業改良普及所普及指導活動評価検討会での外部評価】
◇評価普及課題: 機能性ハーブ栽培による大山山麓農業の活性化
◇評価課題実施年度: 平成22年度
◇評価検討会開催年月日: 平成23年2月23日
◇評価員: 管内指導農業士および農業支援機関代表者(計11名)
◇評価結果:
《活動内容》 大変良い:4名、良い:6名、問題無し:1名、努力不足:0名、悪い:0名
《成果》 大変良い:2名、良い:5名、問題無し:4名、努力不足:0名、悪い:0名
◇評価員からの意見・要望等:
・大変面白い取り組みと思う。「エキナセアといえば大山」と言われるくらいに産地を育ててほしい。
・新しい発想でとても楽しみ。販売がうまくゆけば面白い。
・茶生産者のみに生産者を限定しないで、全町的な取り組みにしてはどうか。
・水田転作でも利用できれば、更に伸びてゆくのではないか。
【自己評価等】
・メディカルハーブ・エキナセアの魅力を農業者にしっかり伝えることができ、栽培面積を短期間で飛躍的に伸ばすことに成功した。
・農医商工金官の広域連携の構築により、農業者を包括的かつ機能的に支援する体制を整えることができた。
・今後、有望な販路を開拓する支援が極めて重要であり、本事業の結果が産地の発展に大きく影響するものと考えている。