1 課長査定
「ゼロ」
価格補てん制度が二十世紀梨の再興に本当に資するのか確証が持てないこと、また、価格補てん制度が農家の生産意欲・意識の低下を招くことが危惧されることを踏まえ、再整理をしてください。
2 調整要求内容
本事業による二十世紀梨の再興、農家の生産意欲・意識の低下を招くことの危惧、価格補てん(再生産価格の支援)の方法、選果場で取り組む4要件等を再整理して調整要求する。
3 事業内容
二十世紀梨ブランドの再興(リバイバル)、鳥取県梨産業活性化ビジョン(以下「梨ビジョン」)の旬の梨リレー出荷を確立するため、生産部(選果場)の次の取り組みを要件として、市場単価が再生産に必要な価格を下回った場合に経費支援を行う。
生産部(選果場)の取り組み要件
(梨ビジョン目標年の平成27年度までに実施)
1)8月下旬の二十世紀梨を減らし、9月主体の出荷体制を構築すること
2)二十世紀梨と新品種の旬の梨のシリーズ化を図るため、新品種の面積を現在の2倍又は二十世紀梨面積の3割まで増やすこと
3)二十世紀梨の全期間プール精算を導入すること
4)交配日等による地帯別出荷の体制を構築すること
※平成27年度までに梨ビジョンのとおり二十世紀梨の出荷を9月とし、美味しくなったものから出荷する体制を築き、鳥取二十世紀梨ブランドを確固たるものとする
4 価格補てんと二十世紀梨の再興、農家の生産意欲・意識の低下防止
(1)価格補てんと二十世紀梨の再興
市場出荷では、他産地の状況、気象、景気等の梨農家の努力ではどうすることも出来ない部分で価格が決まってしまう面が多々あり、平成20年以降、低単価や実止まり不良等で4年連続して梨農家の十分な収入が無い中、梨栽培を続けていくために切望する再生産価格を確保し、二十世紀梨のブランド化や新品種の植栽に取り組むものである。
2010年世界農林業センサスデータによると、梨農家の内、60歳以上が70%と非常に高齢化しており、このまま進むと5年後は79%、10年後は87%となり、本県梨生産は壊滅的な状況となることから、これまでの奨励的な事業よりも、価格補てんを担保とした梨ビジョンに沿った要件の達成(二十世紀梨の9月出荷、新品種導入等)に向けた即効性・実行性がある事業に切り替える。
(2)農家の生産意欲・意識の低下防止
価格補てんの支援単価に200円/ケースの上限を設けることで、安くても補てんがあるので大丈夫という意識を防止する。
低品質の梨、小玉果を作っても価格補てんの対象となると、農家の生産意欲・意識が低下するため、等級(品質)は青秀以上(赤秀・青秀)、階級(玉サイズ)はM以上(5L〜M)を事業対象とし、高品質な梨作りを推進する。
5 再生産価格の支援方法
(1)二十世紀梨の再生産価格
生産・販売経費を支払い、生産者が労働見合いの収入を得るために必要な単価の試算
生産・販売経費 933,391円/10a
生産者労働費見積額 496,535円/10a
経費合計 1,429,926円/10a
1,429,926円/10a(経費)÷4,150kg/10a(収量)×10kg(ケース換算)
=3,446円/ケース・10kg(利潤無しの単価)
≒3,500円/ケース・10kg
※農業経営指導の手引きを参考に試算
(2)再生産経費確保に必要な市場単価
市場出荷の平均単価が2,750円/ケースととなる様な場合、市場出荷と輸出が7割、進物が3割で、再生産価格(3,500円/ケース)と試算。
市場販売単価 2,750円/ケース
輸出分の加算 100円/ケース
進物販売分の加算 650円/ケース
合計(再生産価格) 3,500円/ケース
(3)再生産価格の支援
二十世紀梨の市場出荷分について、8月下旬から9月末までの平均単価が2,750円/ケースを下回った場合、赤秀・青秀の出荷量に200円/ケースを上限事業費として単価差を支援し、再生産価格に近づける。
6 事業費・要求額
平成23年度二十世紀梨販売実績から、事業対象の等階級数量を382,000ケース、支援単価の上限を200円/ケースの場合。
382,000ケース×200円/ケース=76,400千円
76,400千円÷1/3(県補助率)=25,466千円
予算要求額:25,466千円
※市町村も1/3義務負担
残り1/3は農家拠出相当分(単価が高い年に準備)
7 事業実施期間・事業実施主体
(1)事業実施期間
平成24年度〜27年度
(2)事業実施主体
農業協同組合、生産組織
8 背景
平成23年度は二十世紀梨の単価が下落、平成21年度、20年度も低単価で、平成22年度は高単価であったが春季低温被害による実止まり不良で、4年連続して梨農家は十分な収入を上げられていない。
梨農家が栽培を続けるためには、3,500円/ケースの再生産価格が必要で、梨栽培が生計の中心となっている若手にとっては死活問題。
8月下旬の二十世紀梨の単価が高いことから、早採り(低糖度)の傾向があるが、8月下旬には新品種を出荷し、二十世紀梨を旬の9月出荷してブランド化を目指している。
二十世紀梨ブランドを危惧し、再興を望む声が多い。
二十世紀梨が安値であることから梨栽培への不安感があり、新品種の植栽が進まない。
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
○平成21年度から23年度の二十世紀梨ブランド化事業の効果もあり、二十世紀梨の早出による市場価格を重視した販売から、味がのった時期の出荷量を増やしてブランド化を図る取り組みが行われるようになった。
平成21年度二十世紀梨ブランド化事業実績
・8選果場で実施
・奨励金の交付対象出荷量:51,442ケース(10kg)
平成22年度二十世紀梨ブランド化事業実績
・6選果場で実施
・奨励金の交付対象出荷量:1,280ケース(10kg)
○鳥取中央農業協同組合では、梨産地再生プロジェクトのひとつとして、指針に沿って栽培した完熟二十世紀梨を「美味・熟っと梨」の名称で販売する取り組みが行われている。
これまでの取組に対する評価
○二十世紀梨ブランド化事業の取り組みにより、農協、生産者の適熟品出荷に対する意識啓発につながった。
○鳥取中央農業協同組合では「梨産地再生プロジェクト」を立ち上げ、美味しい梨を消費者に提供する取り組みを本格的化してきた。
○平成21年度は長雨に伴う糖度不足、平成22年度は春季低温による実止まり不良に伴う出荷量の減少があり、気象災害による影響を受け、理想とする9月中下旬に味がのった梨を沢山出荷するところまでには至っていない。しかし、味ののった美味しい二十世紀梨を出荷しようとする取り組みが行われ、意識が醸成された。
○農協グループからも引き続き二十世紀梨ブランド化事業を継続するよう要望が出ている。
○二十世紀梨ブランド化事業は、8月下旬の二十世紀梨出荷を減らして、9月中下旬出荷を増やす取り組みの事業であり、8月下旬の二十世紀梨が減ったところに新品種を増やしていくことや、9月中下旬出荷に伴う二十世紀梨の価格低下に対応出来ていなかった。
○このため、梨ビジョンの実現に向けた取り組みを更に進め、二十世紀梨の適熟出荷、旬の梨のリレー出荷の体制に直結するよう事業制度の見直が必要である。