1 「小規模作業所等工賃3倍計画事業」の実績
平成20年4月に「小規模作業所等工賃3倍計画(以下「工賃3倍計画」という。)」を定め、小規模作業所等で働く障がい者の平均工賃月額を平成18年度実績(約11千円/月)の3倍(約33千円/月)とすることを目標に23年度まで取り組んでいるところ。
平成22年度の実績は、14,429円/月と計画目標の半分にも届いていない状況であるが、現下の著しい経済状況にあって他県では工賃が伸び悩んでいるところも多い中で、本県においては毎年着実に工賃が向上しており、事業の効果は一定程度成功しているものと考えられる。
2 「小規模作業所等工賃3倍計画事業」の評価(現段階での工賃3倍計画検討委員会での評価案)
「障害者自立支援法」(以下「新法」という。)施行以前の身体障害者福祉法等の旧法による施設及び法律に基づかない小規模作業所は、新法によるサービス事業所の指定を受けること(以下「新体系移行」という。)が最優先課題とされたため、工賃向上にすべてを注力できなかった背景があると考えられる。
新体系移行が23年度で完了するため、24年度以降が「障がい者就労系事業所」としての真価が問われる時期であろうと考えられる。
工賃3倍計画の理念(「障がい者が地域で自立して生活するための最低収入の確保(工賃と障害基礎年金を合わせて10万円)」)は達成していない現状から、障がい者の収入確保のための支援は今後も必要である。
3 「事業棚卸し」結果・総括
評価結果: 【改善継続】
- 施設が障がい者の居場所から働く職場へと変わっている。これに対応して、事業所は施設運営をビジネスとして自立させるための改革を進める必要がある。
- そのために、競争意識を持った運営、事業所間のネットワーク化の検討など、従来の枠を超えた取り組みが必要である。また、鳥取県障害者就労事業振興センターの更なる能力向上に期待したい。
【対応方針】
障害福祉サービス事業所の製品のみの見本市の他に、商工会議所主催の商談会等に参加する事業を行い、一般市場をターゲットにしたビジネス展開を支援。⇒【工賃3倍計画事業(既存施策分)】
就労系障害福祉サービス事業所には小規模作業所等から移行したところも多く、まだ「居場所」的な感覚で就労支援を行っている事業所も見られることから、「就労・労働の場」として意識づけるための研修を新たに開催する。⇒【工賃3倍計画事業(既存施策分)】
鳥取県障害者就労事業振興センターには、県外研修への参加経費の上積みを行い、職員のスキルアップを図ることとするとともに、就労系障害福祉サービス事業所のトータル支援機関となるべく、個々の事業所のカルテ及びベンチマークを作成・管理する事業を委託。⇒【振興センター運営支援事業、本事業の4(1)】 |
4 事業内容
(1) 事業所カルテ、ベンチマーク作成事業
[4,765千円]
内容 | 事業所カルテ、ベンチマーク作成
障がい者就労継続事業所ごとの、工賃目標、経営資源の保有状況、経営基盤などアドバイザーと共に全事業所を訪問調査し、個々の事業所のベンチマークを作成する。(NPO法人鳥取県障害者就労事業振興センターに専属職員を配置して対応)
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要求額 | 4,765千円 |
実施主体 | 県
(NPO法人鳥取県障害者就労事業振興センターへ業務委託) |
財源 | 国1/2 |
(2) 人材育成・体制整備[500千円]
内容 | 障がい者就労系事業所のサービス管理責任者等に対するワークショップ形式の研修会を開催
対象:サービス管理責任者
研修内容:
・事業計画の作成方法
・人材育成(ファシリテーション、コーチング)
・マーケティング
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要求額 | 500千円 |
実施主体 | 県
(NPO法人鳥取県障害者就労事業振興センターへ業務委託) |
財源 | 障害者自立支援対策臨時特例基金 |
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(3) 関西圏域各県合同コンテストへの参戦
[5,657千円]
内容 | 関西圏域の各県が合同で開催するスイーツ及びクラフトコンテスト等へ参加することで、一般市場を意識した福祉事業所の製品品質の向上を図る。
(1) 関西圏域の各県が合同で開催するスイーツ及びクラフトコンテストへの県内予選開催及び県代表による決勝出場に係る経費。
(2) 関西圏域の各県が合同で開催するの商談会、販売フェアへの参加に係る経費
(3) 各種商談会(商工会議所主催、東京・大阪など県外の商談会)参加支援 |
要求額 | 5,657千円 |
実施主体 | 県
(NPO法人鳥取県障害者就労事業振興センターへ業務委託) |
財源 | 国1/2 |
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5 国の「工賃倍増計画」に関する現在の検討状況
24年度厚生労働省概算要求には、「障害者への就労支援の推進」の中に「工賃向上のための取組の推進」として、5億円が計上されている。
4 障害者への就労支援の推進
(2)工賃向上のための取組の推進
「工賃倍増5か年計画」について、各都道府県でのこれまでの取組の検証を踏まえた見直しを行った上で、経営改善や商品開発、市場開拓など、工賃引上げに資する福祉施設に対する安定期な仕事の確保に向けた取組を実施する。 |
なお、未確認情報ではあるものの、国においては現在の「工賃倍増計画」を24年度以降も実施することとし、「工賃向上計画(仮称)」に名称変更し、平成26年度までの3か年計画とすることを検討中の模様。
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
<目標平均工賃:平成23年度>
月額33,000円
<これまでの取組状況>
○平成19年度に計画を策定、次の取組みを実施
・販路・受注開拓員の配置による職域開拓、販路拡大等
・品評会・商談会の開催による、製品の一般市場での評価・一般市場で の販売促進
・研修会の開催によるトップ、就労系福祉事業所職員に対する意識改
革・啓発
・相談体制の整備による就労系福祉事業所の課題への対応
<現時点での達成度>
○平均工賃月額実績
平成22年度平均工賃月額 14,429円
平成21年度平均工賃月額 13,437円
平成20年度平均工賃月額 12,782円
平成19年度平均工賃月額 12,641円
平成18年度平均工賃月額 10,983円
*就労継続支援A型事業所除く
[平成22年度の平均工賃の分布]
1万円未満 37事業所
1万円以上1万5千円未満 37事業所
1万5千円以上3万円未満 27事業所
3万円以上 5事業所
(うち33千円以上 4事業所)
○工賃支払対象者数
平成22年度 1,882人
平成21年度 1,717人
平成20年度 1,610人
平成19年度 1,445人
○年間工賃支払総額
平成22年度 325,896千円
平成21年度 276,882千円
平成20年度 246,888千円
平成19年度 219,192千円
これまでの取組に対する評価
○就労系福祉事業所が安定した経営を行い、障がいのある方が生きる喜び(就労による喜び、役立ち感)を感じながら地域の中で自立した質の高い生活を送ることができるよう支援を実施することが県の役割。
○就労系福祉事業所の多くは、家族によって設立された小規模作業所から成り立っており、職員体制に余裕がなく、福祉支援力、ビジネス力とも弱いのが実態。
○就労系福祉事業所が自力で工賃向上に取り組むためのシステムが構築され、軌道に乗るまでは、県の支援が必要。
○平成21年度に全就労系福祉事業所への訪問によるニーズ調査を行った結果、過去2年間の事業の実施方法が、工賃向上に積極的に取り組んでいた福祉事業所には有効だったが、それは全体の2割程度であることが判明。
○平成22年度に工賃向上に係る事業を活用した就労系福祉事業所の平均工賃は、全体の平均工賃より低いものの、工賃増加額は全体平均より高く、工賃向上への事業効果はあったと言える。
・工 賃 額 13,234円(平均:14,429円)
・工賃増加額 +1,322円(平均:+992円)
○併せて、自己の製品等を紹介する「見本市」への参加する福祉事業所数が増加(20年度:12事業所→23年度:50事業所)するなど、事業所の工賃向上へ取り組む意欲も向上していると考えられる。
○工賃3倍計画の目標額の半分にも届いていない状況であるが、現下の厳しい経済状況にあって、他県では工賃が伸び悩んでいるところも多い中で、本県においては毎年着実に工賃が向上しているところ。
○平成23年度は工賃3倍計画の最終年度であるが、工賃3倍計画の理念(「障がい者が地域で自立して生活するための最低収入の確保(工賃と障害基礎年金を合わせて10万円)」)は達成していない現状から、障がい者の収入確保のための支援は今後も必要。