現在の位置: 予算編成過程の公開 の 平成25年度予算 の 生活環境部の湖山池の環境変化に伴う生物多様性・生態系評価及び自然再生方法の検討
平成25年度
当初予算 一般事業(公共事業以外)  一般事業要求      支出科目  款:衛生費 項:公衆衛生費 目:衛生環境研究所費
事業名:

湖山池の環境変化に伴う生物多様性・生態系評価及び自然再生方法の検討

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生活環境部 衛生環境研究所 水環境対策チーム  

電話番号:0858-35-5417  E-mail:eiseikenkyu@pref.tottori.jp
  事業費(A) 人件費(B) トータルコスト
(A+B)
正職員 非常勤職員 臨時的任用職員
25年度当初予算要求額 2,842千円 16,682千円 19,524千円 2.1人 0.0人 0.0人
24年度当初予算額 3,155千円 14,483千円 17,638千円 1.8人 0.0人 0.0人

事業費

要求額:2,842千円  (前年度予算額 3,155千円)  財源:単県 

事業内容

1 概要

湖山池では、今年3月の湖山川の水門開放による高塩分化に伴って、水質や生物相への影響が起こりつつある。

     この変化の過程にある湖山池を監視するとともに、生物多様性や生態系の変遷過程を捉えて評価し、望まれる湖山池の姿を目指す施策に繋げる。
     また、シードバンク※を活用して、在来水生植物の再生方法を検討す

    ※シードバンク:湖底の底泥に埋没・保存された過去生育していた植物の種子

2 事業の背景・必要性

○湖山池は、南西部に流入河川があり北東部から湖山川によって日本海に通じる汽水湖である。湖山川は元々千代川河口に通じていたが、治水目的で行われた千代川河口付け替えによって現在の状態(日本海と直通)となった。

○従来から湖水が農業利用(灌漑用水)されていたため、湖山川の水門管理によって淡水に近い低塩分濃度で維持されてきたが、アオコ発生等水質汚濁に加え、近年カビ臭問題やヒシ問題、漁業不振等の問題が顕在化。

○対策として、住民意見や湖山池会議等での議論を踏まえ、今年3月から水門開放して高塩分化管理し、アオコやヒシ等の発生を抑制するとともに、水の交換を高めて汽水湖として再生することとなった。

○水門開放して高塩分化管理する状態は、湖山池のかつて(昔)の状態とは異なる、未経験の状態であり、水質や生態系が大きく変化することが予想され、現在過渡期にあると考えられる。

○事前にシミュレーションが行われているが万能ではなく、実際の状況や事象を監視・評価し、適切に対応していく必要がある。

○湖沼の自然再生に向けて在来水生植物のシードバンクを活用することは理にかなっているが、必要な発芽・生育条件や能力等の知見・情報が不足している。

3 効果

○水質等の監視結果を随時行政機関や関係機関に提供することで、その時々の事象・状況に対して必要な対応を行うための判断材料となる。

○水門開放による湖内環境への影響を見極め、生物多様性・生態系が目指す姿に近づいているのか評価・検証することができる。

○国立環境研究所等との共同研究を通じ、全国の湖沼の生物多様性・生態系の最新の状況や事例と比較しながら評価することで、湖山池の置かれている状況を客観的に視ることができる。 

○湖底泥中に埋没している在来の水生植物の種(シードバンク)を用いた植生帯復元手法の確立は、湖山池を始めとする県内湖沼の自然再生の有効な手法の1つとなる。

4 事業費内訳

単位(千円)
内訳
内容
要求額
 普通旅費情報収集・協議のための旅費等   302
 需用費調査や実験に用いる資材・消耗品、分析試薬等   620 
 使用料・賃借料調査船の傭船料 1,920
合計 2,842

5 事業内容

現地モニタリング・資料調査等から、湖山池の生物多様性・生態系評価手法を検討し、この手法を用いて水門開放による湖山池の生物多様性や生態系の変遷を評価する。
 モニタリングは関係機関で連携・分担して実施。
 当所は、主に水質(塩分、溶存酸素濃度等)の湖内分布調査、湖内2カ所(福井沖、堀越沖)での底層の水質(塩分、溶存酸素等)連続観測を実施。
 併せて、シードバンクを活用した在来の水生植物による自然再生のため、湖山池他2湖沼のシードバンクによる発芽・生育可能性を明らかにするための試験を行う。
単位(千円)
区分
事業内容
事業費
24年度
○水質分布把握(DO、塩分度)
○ヒシの生育変化の状況把握
○有機物循環の把握
○水質、底泥、生物等の関連情報整理
○生物多様性・生態系の情報整理
3,155
25年度
○水質分布把握(DO、塩分等)
○水質、底泥、生物等の関連情報整理
○生物多様性・生態系情報整理、評価手法の検討
○底泥柱状試料採取・分析
○シードバンク発芽・生育試験
水生植物モニタリング
2,842

26年度
○水質分布把握(DO、塩分等)
○水質、底泥、生物等の関連情報整理
○生物多様性・生態系評価
○シードバンク発芽・生育試験
2,500
27年度
○水質分布把握(DO、塩分等)
○水質、底泥、生物等の関連情報整理
評価結果の考察
○シードバンクを活用した自然再生手法検討
2,500


    ◆本事業は、現在実施中の調査研究「湖山池の環境変化に備えた生物多様性・生態系評価(H24〜26計画)」に、シードバンクを活用した在来水生植物の再生方法の検討(湖山池含む3湖沼を対象)等を追加し、内容強化して期間を1年延長し、H24〜27としたもの。

6 共同研究機関

◆国立環境研究所、東京大学、島根大学、国内の湖沼がある他自治体の地方環境研究所、鳥取県栽培漁業センターと共同研究を実施中。

「生物多様性・生態系評価手法」を国立環境研究所、及び他の地方自治体環境研究所との共同研究で検討し、評価の際に用いる。


これまでの取組と成果

これまでの取組状況


■水門開放前の取組
 湖水が農業利用されていたため、淡水に近い低塩分濃度で維持されてきたが、アオコ発生等水質汚濁、近年のカビ臭問題やヒシの大繁茂問題等が発生。これらに対応するための調査研究に取り組んできた。

○近年大繁茂したヒシに係る以下の知見を得た。
・ヒシの大繁茂が湖水の貧酸素化を引き起こしていることを確認。
・窒素、リン等の内部負荷の原因となっている可能性が示唆された。
・ヒシが生育できない塩分濃度(塩化物イオン濃度)を室内実験で確認。

○アオコ形成とカビ臭発生の主原因種は異なっていることを確認。
・アオコ形成プランクトンは主にミクロキスティス属、アナベナ属
・カビ臭発生プランクトンはプランクトスリックス属

○カビ臭プランクトンの特性を把握
・水温20℃以上で増殖可能で、30℃付近が増殖適
・水門開放前の湖内塩分濃度では生育可能

○アオコ形成プランクトンの特性を把握
・水温、窒素、リン、キレート物質に対する特性を把握。
・水門開放前の湖内塩分濃度では生育可能

○湖山池の今後の環境改善の検討に資するため、過去の水質等のデータを収集・解析して湖内環境の変遷を以下のとおり推定した。
・過去に湖内環境の激変期があり、その後アオコが多発するような汚濁した姿になったことが明らかになった。
・かつての湖山池には、東側に汽水性に富む環境が、西側に淡水性の強い環境が存在したと推定。

■水門開放前後〜現在の取り組み
◆水質等モニタリング
 関係機関で連携・役割分担してモニタリング実施中。
当所は、主に水質(塩分、溶存酸素濃度等)の湖内分布調査、及び湖内2カ所(福井沖、堀越沖)での底層の水質(塩分、溶存酸素等)連続観測を実施し、以下のことが判っている。

(1)塩分濃度分布
○海水が夏場の潮位上昇に伴って湖山川から湖内に侵入し、表層及び底層共に塩分濃度が上昇。水門開放前の昨年同時期と比べると遥かに高濃度。
○海水は密度が高いため底を潜るように侵入。北部の水深が深い領域の底層に塩分濃度が高い水塊が分布し、範囲が拡大。

(2)溶存酸素濃度分布
○表層部は湖内全域でDOが存在。昨年夏場に観測された福井沖等南西部(昨年までヒシ大繁茂域)での貧酸素状態は、今年は観測されず。
○底層部の高塩分濃度域に対応して貧酸素領域が分布。夏場に拡大し、パターンは昨年と変わった。

(3)連続観測
○2地点とも塩分濃度が夏場の潮位上昇に伴って上昇(塩化物イオン濃度:堀越:12000mg/L前後、福井:6000mg/L前後)し、9月以降横ばい状態。
○水深が深い堀越沖では下層部は夏場に貧酸素状態が継続。

(4)底質、水生動植物、プランクトン等
○底質、水生・動植物、プランクトン等はデータ収集中(水・大気環境課で外部委託実施)。
○アオコの形成種(ミクロキスティス属、アナベナ属)、カビ臭原因種(プランクスリックス ラキボルスキー)は水門開放以降計測されていない。
○プランクトン相が汽水〜海水性のものに変化。
○昨年まで大繁茂していたヒシは、今年は、春先に発芽・生長して丈が水面付近まで達していた箇所もあったが、その後枯死し生育せず。
○一部の水生植物(ヒメガマ等)に影響が認められている。


◆生物多様性・生態系評価
 現在、担当研究員を国立環境研究所に派遣し、共同調査等を行うとともに、「生物多様性・生態系評価手法」を検討中

これまでの取組に対する評価


■一昨年度〜今年度にかけて、得られたデータや知見を以下のとおり公表・発表。関係者を含む多くの方々に周知し、施策判断の一助となった。
・水質データ等の湖山池掲示板(庁内DB)での公表(随時)
・分野別研究会(平成22年12月、24年3月)
・鳥取県公衆衛生学会(平成23年7月、平成24年7月)
・常任委員会資料(平成23年9月)
・第7回湖山池会議(平成23年12月)
・衛生環境研究所所報(平成23年度版)
・島根大学第19回汽水域合同研究発表会(平成24年1月)
・平成24年度第1回湖山池環境モニタリング委員会(平成24年9月)

■水門開放前の取組
 得られた知見(アオコ形成プランクトン、カビ臭形成プランクトン、及びヒシの特性・影響、過去の湖内環境の変遷過程の推定結果等)は、施策(流入負荷対策、水門開放)の大きな判断材料となった。

■水門開放後の取組
 水質等の監視結果を、水門開放後の変化の途中にある湖山池の基本情報として随時行政機関や関係機関に提供することで、事象・状況に対して必要な対応を行うための判断材料となっている。

工程表との関連

関連する政策内容

環境の保全・再生と活用に関する調査研究

関連する政策目標

湖沼の水質浄化や環境の保全・再生に資する研究の実施





要求額の財源内訳(単位:千円)

区分 事業費 財源内訳
国庫支出金 使用料・手数料 寄附金 分担金・負担金 起債 財産収入 その他 一般財源
前年度予算 3,155 0 0 0 0 0 0 0 3,155
要求額 2,842 0 0 0 0 0 0 0 2,842