1 事業目的
地震等により大規模な災害が発生した際、宅地の被害について、市町村が「被災宅地危険度判定」を実施するための判定士の登録・養成、被災宅地危険度判定に係る市町村との連携や体制の整備、判定事例の収集や被災宅地危険度判定士への訓練等を行う。
※「被災宅地危険度判定」とは
災害発生時に住民からの依頼や市町村の判断により、宅地の被災状況を「被災宅地危険度判定士」が個別に調査・危険度判定を行い、二次災害の防止、被災状況の確認、住民への直接的支援の基として寄与するものである。
※「被災宅地危険度判定士(以下「宅地判定士」という)」及び、「被災宅地危険度判定業務調整員(以下「判定調整員という)」とは
【宅地判定士】
土木、建築等に係る一定の専門的知識又は経験を有した者のうち、県又は被災宅地危険度判定連絡協議会が被災宅地危険度判定に必要な知識及び技能を修得させるために開催する講習会(以下「養成講習会」という)を受講し、知事の認定を受けた者。宅地判定士の登録有効期限は、5年間である。
【判定調整員】
宅地判定士のうち、危険度判定実施本部と宅地判定士との連絡調整、危険度判定の実施に係る指導監督、危険度判定結果の集計、及び危険度判定実施本部長への報告等、リーダー的な役割を適正に行うことができると知事が認めた者である。
2 背景
東日本大震災より前は、被災状況の確認を行い、二次被害の防止を主な目的として被災宅地危険度判定が実施されていたものの、東日本大震災時の被災宅地危険度判定を機に、判定結果を罹災証明やそれに代わる証明書として利用されるようになった。
その結果、被災宅地危険度判定が、被災者の直接的支援につながるようになったため、その重要性・必要性が再認識されている。そのため、いつ発生するか分からない大規模災害に備え、被災宅地危険度判定制度の実施体制を強化する必要がある。
※ホームページにて、被災宅地危険度判定制度について、周知を図っています。
http://www.pref.tottori.lg.jp/124373.htm
3 事業内容
(1)全国被災宅地危険度判定連絡協議会負担金
全国で生じる災害での情報収集・提供等を提供する全国被災宅地危険度判定連絡協議会に係る負担金。
(2)被災宅地危険度判定士等の養成
C= 264(286)千円
○ 従来の制度では、宅地判定士の資格を取得(登録)すると、書類提出のみで登録の有効期限が延長される仕組みとなっていた(講習会から長時間経過した登録者は、ペーパードライバー状態)。
○ その後、平成23年3月11日発生の東日本大震災の経験から、被災宅地危険度判定制度の重要性・必要性が再認識された。
○ 以上より、登録の有効期限を延長する際に、養成講習会の受講を義務付けることとし、平成24年5月に鳥取県被災宅地危険度判定士登録要綱を一部改正した。
○ これに伴い、宅地判定士の養成講習会を年2回開催(受講機会の創出)し、宅地判定士の登録者数を確保するとともに、ペーパードライバーの撲滅を図る。
○ また、判定技術力の向上を図るため、平成24年度から「被災宅地危険度判定実地訓練」を実施することとした。
○ さらに、平成24年度から被災宅地危険度判定の実施体制を強化するため、宅地危険度判定実施時にリーダー的な役割を担う判定調整員を養成・認定することとし、「被災宅地危険度判定業務調整員養成講習会」を実施することとした。
○ 平成25年度においては、養成・認定した判定調整員の判定技術力の向上を図るため、危険度判定実施本部を立ち上げて「被災宅地危険度判定実施本部図上訓練」を実施する。
・被災宅地危険度判定士養成講習会(年2回)
C=148千円
・被災宅地危険度判定士実務訓練(年1回)
C=42千円
・被災宅地危険度判定業務調整員養成講習会(隔年1回)
C=0千円(平成25年度は、実施しない。)
・被災宅地危険度判定実施本部図上訓練(隔年1回)
C=74千円
(3)鳥取県被災宅地危険度判定連絡協議会の開催
C= 148(0)千円
○ 平成17年度に設立された同連絡協議会は、災害によって被災した宅地の危険度判定について、県及び市町村が十分な連携を図り、判定業務を迅速かつ円滑に実施するための連絡協議を目的としている。
○ 平成24年度から、年2回一堂に会して同連絡協議会総会を開催している。(平成24年度の実績:第1回を4月26日、第2回を11月19日に開催)
○ 第1回(年度初め)総会は、人事異動による新しい協議会委員を含めて、被災宅地危険度判定制度の重要性と制度の実施体制強化の必要性について共通認識を図るとともに、年間スケジュール等を確認する。
○ 第2回総会では、全国連絡協議会や中四国ブロック連絡協議会で得られた情報の共有化を図るとともに、「被災宅地危険度判定士養成講習会(年2回)」、「被災宅地危険度判定実地訓練(年1回)」、「被災宅地危険度判定業務調整員養成講習会(隔年1回)」及び「被災宅地危険度判定実施本部図上訓練(隔年1回)」の方針について、確認する。
(4)標準事務費 C= 1,532(100)千円
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
■平成12年に発生した鳥取県西部地震を受け、平成13年度から被災宅地危険度判定士の登録要件である県被災宅地危険度判定士養成研修を実施、3箇年で各年100名の登録者を増やすことを目標に掲げ、平成15年に目標(登録者数300名)を達成した。
■その後も登録者を確保し、平成24年8月9日現在で537名の登録者を確保している。
<平成24年8月9日現在の登録者537名の内訳>
県職員275名、市町村職員122名、民間技術者103名、県職員退職者37名
(詳細)市町村職員別内訳
鳥取市26名、米子市54名、倉吉市14名、境港市5名、岩美町3名、智頭町1名、三朝町1名、日吉津村1名、大山町2名、南部町1名、伯耆町1名、日南町1名、日野町1名、江府町11名 合計122名
■本県は、鳥取県西部地震により、被災宅地危険度判定を実施した数少ない都道府県の一つであるものの、業務簡素化などから、被災宅地危険度判定士の登録要件である研修の実施が5年に1度の開催とされ、被災宅地危険度判定連絡協議会総会も電子化されるなど、制度の形骸化を懸念する状態となっていた。そのため、平成24年度に「年2回一堂に会しての被災宅地危険度判定連絡協議会総会を開催」や「被災宅地危険度判定士の登録有効期限の延長時の養成講習会受講の義務付け」を実施した。
これまでの取組に対する評価
■鳥取県西部地震以後、ある程度の被災宅地危険度判定士を確保しているが、各被災現場で活躍するであろう、地理を知り尽くした市町村職員の登録者にばらつきがあり、職員の登録者がいない町村も見受けられることから、最低限の登録者を確保しているとは言えない。
■さらに、平成23年3月11日の東日本大震災において、被災地では被災宅地危険度判定士の活動が評価されるなど制度の重要性・必要性が高まっている。
■それに伴い、平成24年度には、年2回の「被災宅地危険度判定連絡協議会総会」及び「被災宅地危険度判定士養成講習会」を開催し、制度の重要性・必要性を県内関係者の共通認識とした。
■ただ、県内の被災宅地危険度判定制度の実施体制は、充実しているとは言えず、「被災宅地危険度判定業務調整員の養成」や「被災宅地危険度判定実施本部図上訓練」など、さらなる強化プログラムの実施が必要である。