1.事業内容
「うまみ」のある和牛肉を求める消費者ニーズに応えるため、和牛肉のおいしさにかかる様々な「うまみ」を調査し、それを重要視した鳥取和牛の育種・改良手法の開発を行う。
(1)「うまみ」に関わる成分の探索
「うまみ」に関わる成分を成分分析や食味試験などにより、特定。
(2)「うまみ」に関わる成分の要因調査
「うまみ」に関わる成分に影響を与える要因(性、飼養管理、種雄牛など)を調査し、遺伝的及び飼養管理などで改良可能なものかどうかを検討。
(3)「うまみ」成分の簡便評価に関する調査
「うまみ」成分を改良やブランド化に活用するため、現場で簡便に測定できる手法を検討。
(4)改良目標数値(ブランド認定基準値)の検討
食味試験などを行い、改良目標数値(ブランド認定基準値)を調査
(5)「うまみ」成分を持つ肉の発生頭数を増やす取組
種雄牛造成や飼養管理による効率的な量産方法について検討。
2.背景・目的
(1)背景
今までの和牛改良(種雄牛造成)は、生産者が求める市場性(肉量、霜降り等)を重視してきたが、消費者が和牛に求めるものは「うまみ」である。生産者もそれを求め始めている。
(2)目的
従来、取り組んできた市場性や種牛性(飼いやすさ等)だけでなく、和牛肉が持つ「うまみ」を持った種雄牛造成と県内繁殖雌牛の改良及び「うまみ」のある和牛肉生産に向けた飼養管理技術の確立により、生産者・消費者が望む「うまみ」のある鳥取和牛肉のブランド力アップを図る
3.期待される効果
鳥取和牛肉の特徴を活かしたうまみのある牛肉生産で鳥取和牛のブランド力が向上し、子牛や鳥取和牛肉の評価が上がる。農家のみならず小売店や飲食店にまで経済効果が期待される。
4.これまでの成果
(1)和牛肉の脂肪に含まれるオレイン酸を指標化した「鳥取和牛オレイン55」(認定 基準:オレイン酸55%以上かつ「気高」号の血統を引き継ぐもの)の誕生に本事業での研究結果が活かされた。
(2)和牛肉のオレイン酸の遺伝的影響は高い(遺伝率0.78)ことから、計画交配や遺伝子解析などによる遺伝的な面からの改良が効果的と判明(本成果はJournal of Animal Science(2011年、89号)で論文発表)。
(3)味覚センサーを用いた試験で赤身肉のうまみと関係ある
アミノ酸を特定(本成果は日本畜産学会第117回大会で発表)
5.事業費

年度 | 
内容 | 
事業費(千円) |

平成17年度 | 
・備品(ガスクロマトグラフ)購入
(H17年度)
・オレイン酸の調査(H18年度〜)
・備品(食肉脂質測定装置)購入 (H21年度)
和牛肉のオレイン酸迅速評価の調 査(H21年度〜) | 
5,214 |

平成18年度 | 
3,018 |

平成19年度 | 
845 |

平成20年度 | 
2,331 |

平成21年度
(9月補正) | 
2,495
(3,518) |

平成22年度 | 
・鳥取和牛オレイン55の誕生
(H22年度) | 
2,777 |

平成23年度 | 
・赤身肉のうまみ調査開始
(H23年度〜) | 
2,636 |

平成24年度 | 
| 
2,795 |

平成25年度 | 
・赤身肉のうまみの研究成果を
学会で発表(H25年度) | 
3,019 |

平成26年度 | 
・備品(肉分析計)の要求 | 
8,711
(うち備品購入費
:5,692) |
※肉分析計:3分以内に牛肉の水分・タンパク・脂肪分を
測定する器械
6.参考(用語説明)
(1)「うまみ」について
おいしい牛肉として評価される「風味」「やわらかさ」「多汁性」には、脂肪の質(脂肪酸組成割合)とアミノ酸のうまみ成分などが大きく関与しているといわれている。本試験ではこの脂肪の質、アミノ酸のうまみ成分のことを総称して「うまみ」と表している。
(2)オレイン酸
牛肉中に含まれる二重結合を1つ持つ脂肪酸。二重結合を持たない飽和脂肪酸(パルミチン酸など)より融点が低いため、その量の多少が牛肉の口溶けに影響を与える。
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
<取り組み>
(1)和牛肉のうまみに関係する脂肪中の「オレイン酸」の鳥取和牛肉の現状を調査。
(2)オレイン酸の鳥取和牛新ブランド基準への導入の取り組み
(3)味覚センサーを活用し、赤身肉のうまみに関係するアミノ酸の特定
<成果>
(1)オレイン酸は性・と畜月齢・血統などにより影響を受けることが判明。血統的特徴の調査では、「気高」の血統を引き継ぐ鳥取系はオレイン酸割合も高くなることが判明。
(2)食味試験等の結果を基に「オレイン酸55%かつ気高号の血縁を引き継ぐもの」を鳥取和牛新ブランド基準とすることが決まった。また、ブランド認定機関に対し、オレイン酸測定をサポート。
(3)和牛肉のオレイン酸割合の遺伝的影響は高い(遺伝率0.78)ことから、計画交配や遺伝子解析などによる遺伝的な面からの改良が効果的と判明。
(4)味覚センサーを活用し、赤身肉の「うまみ」に関係するアミノ酸として、グルタミン酸、セリン、アルギニンは好ましい関係、カルノシンは好ましくない関係があることが判明(日本畜産学会で発表)
これまでの取組に対する評価
<自己分析>
和牛肉の脂肪に含まれるオレイン酸を指標化した「鳥取和牛オレイン55」の誕生に本事業での研究結果が活かされた。
<改善点>
新ブランド認定基準にオレイン酸が導入されたことから、鳥取和牛肉の脂肪の質の改良が期待される。今後は新たな「うまみ」に関する成分の調査、指標化に取り組む必要がある。
<今後の取り組み>
味覚センサーを活用した試験結果をベースに、さらに赤身肉の「うまみ」成分を特定していく。アミノ酸に加え、香りや糖類の分析も進める予定。特定後は、「鳥取和牛オレイン55」と同様に簡易評価法を検討し、他県を先行する鳥取和牛肉のブランド化及び改良につなげていく。