1.補正概要
農林水産省農林水産技術会議事務局が公募した「実需者等のニーズに応じた加工適性を持つ果樹品種等の開発事業」に6月3日付けで採択された。この事業のうち園芸試験場は、「ニホンナシ‘王秋’の果肉障害発生抑制技術の開発と体系化」で参画することから、受託収入が生じる。これに伴い、当初要求した県単課題分(課題名:ナシの気候変動に対する適応技術の確立)の一部をその他財源に振り替えるもの。
2.受託試験の概要
○委託元
農林水産省農林水産技術会議事務局
○事業名
平成26年度実需者等のニーズに応じた加工適性を持つ果樹品種等の開発事業
○課題名
ア ‘あきづき’、‘王秋’の果肉障害発生機構の解明
イ 肥培管理による‘あきづき’の果肉障害発生抑制技術の開発と体系化
ウ 樹体管理による‘あきづき’の果肉障害発生抑制技術の開発と体系化
エ ‘王秋’の果肉障害発生抑制技術の開発と体系化
○参画機関
(代表機関)
農研機構果樹研究所(担当:上記ア)
(共同研究機関)
埼玉県農林総合研究センター園芸研究所(同イ)
熊本県農業研究センター(同ウ)
鳥取県園芸試験場(同エ)
○研究期間
平成26〜30年度(5カ年)
○受託事業要求額(概算)
平成26年度分:1,161千円
○研究内容
‘王秋’は食味、貯蔵性に優れ、カットナシ商材として非常に有望であるが、コルク状障害が発生するため、安定供給が困難な状況にある。本事業で障害発生抑制技術を開発し高品質な‘王秋’の安定供給を目指す。
○園芸試験場の担当業務
・着果量、摘果時期等がコルク状障害発生に及ぼす影響
・新梢管理や樹体・土壌水分がコルク状障害発生に及ぼす影響
・コルク状障害発生抑制技術の体系化
3.委託事業に参画した理由
本県の‘王秋’栽培面積は日本一である。現在も栽培面積が伸びつつある有望な品種であるが、出荷が始まった平成18年頃からコルク状障害の発生がみられ問題になっている。これまでに土壌深耕による発生抑制技術を開発し、生産現場で普及している。ところが、年による効果の差が大きく、さらに精度の高い発生抑制技術の開発が必要であるが、以下の課題が残されている。
(1)障害発生のメカニズムが不明(温度、水分など)
(2)‘王秋’‘あきづき’の適正な着果管理、新梢管理方法が不明
(3)適正な肥培管理方法が不明(本事業では‘あきづき’で研究をおこなう)
これらの課題が解決されれば、‘王秋’の安定生産が可能となり、産地の活性化に繋がることが期待できる。また、‘あきづき’で共通の問題を抱える他産地の試験場や生理障害に関する試験研究で実績のある果樹研究所と共同で試験をおこなうことにより迅速な課題解決が可能となる。
4.受託事業の効果
- 障害発生抑制技術の開発・・・土壌深耕に+αの技術開発をおこなうことで、より精度の高い障害発生抑制技術となる。
- 発生メカニズムの解明 ・・・(1)と合わせて栽培管理マニュアルの作成をすることが可能となる。
- 安定供給・・・年によっては収穫果の50%以上に発生するコルク状障害の発生を現在よりも抑制することが可能となれば、農家所得や栽培面積の増加が期待できる。
5.変更の内容
○受託事業が、県単課題「ナシの気候変動に対する適応技術の確立」と関連するため、受託事業を当県単課題に組み込み、重複する業務を受託事業で実施(県単→その他財源振替)する。
○受託事業に関する業務は5カ年
単位(千円)
区分 | 当初事業費 | 補正後 |
予算区分 | 県単 | その他 | 合計 | 県単 | その他 | 合計 |
26年度 | 2,258 | | 2,258 | 1,097 | 1,161 | 2,258 |
27年度 | 1,097 | 1,161 | 2,258 | | | |
28年度 | 1,097 | 1,161 | 2,258 | | | |
29年度 | 1,097 | 1,161 | 2,258 | | | |
30年度 | 1,097 | 1,161 | 2,258 | | | |
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
・平成17年の県内発生事例を受けて、平成18年の県単事業「赤ナシの良果安定栽培技術の確立」から本格的にコルク状障害発生低減技術について取組を始めた。
・類似症状として‘菊水’の果肉崩壊症(神奈川県)が報告されているが、発生要因(果実の大きさ、ホウ素欠)が異なることから、平成21年に‘王秋’のコルク状障害と新たに名称がつけられた。
・これまでに土壌深耕による発生抑制技術を開発し、現場に普及させた。
これまでの取組に対する評価
・平成23年度の外部評価(中間)では評点13.0(判定◎)だった。
・障害発生抑制技術開発に対しては関心が高く、多くの生産者が園芸試験場の試験結果を期待している。