1 事業の概要
松くい虫被害が生じたクロマツ林の防風機能を早期に回復させることを目的として、高価で貴重な松くい虫抵抗性苗を高確率で活着させるための技術を確立する。
2 背景と目的
海岸松林は「白砂青松」等の美観を供するとともに、飛砂や潮風から後背地の道路や畑地を保全する重要な機能を備えている。しかし、県下の海岸松林は松くい虫被害により疎林化が進んでいる。対策として治山事業やボランティア等により補植が行われているが、海岸砂地は冬期の季節風による強風や保水性の低い土壌による水不足等により植物が生育するのに過酷な環境下にあり、場所によっては植栽した苗木が枯死する場合がみられる。活着率を高めるために保水材や土壌改良材、ツリーシェルターが使用されているが、これらを用いた植栽方法が確立されているとは言い難く、苗木の活着率を向上させる植栽方法の開発が望まれている。
3 事業の成果
ア 海岸用の低コストなツリーシェルターの開発
・ポリプロピレン製六角筒型シェルターに空気穴を開けることで内部の最高温度が45℃程度に抑えられ、枯死率の低減が図られた。
・シェルターの高さを植栽時の苗木の高さ程度に短くすることで、成長期に苗木の高さがシェルターを越え、頂芽周辺の葉が密に成長することで冬期の強風に対する耐性がつき、頂芽の枯れを防止することができた。
イ 低コストで効果的な保水材の使用法の開発
・従来から使用されている乾燥状態の保水材をそのまま用土に混合する方法では、苗木の活着に効果がなかった。
・あらかじめ十分に吸水させた保水材を使用することで、活着率が向上した。
・今回新たに開発した吸水した保水材を苗木の根に付着させて植栽させる方法では、活着率が高いうえに保水材の使用量も少なく、作業性・経済性に優れていた。
ウ クロマツに適した土壌改良材の検討
・吸水させた土壌改良材(ピートモス、バーク堆肥)を使用することで活着率が向上した。