1 補正の概要
(1)受託事業1
(独)農研機構が公募した「攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業(うち産学の英知を結集した革新的な技術体系の確立)」に4月4日付けで採択された。この事業のうち、現地での技術実証をとっとり農業戦略課が担うことになり、その受託収入が生じる。
これに伴い、農業改良普及指導活動費(改良普及員等が農業者の生産方式や経営の改善の普及指導にあたるため、新技術実証のための展示ほの設置、現地検討会等を行うための費用)を増額するもの。
(2)受託事業2
(公社)農林水産・食品産業技術振興協会から平成26年度新稲作研究委託試験を鳥取農業改良普及所が受託することになり、農業改良普及事業の主務課であるとっとり農業戦略課で受託収入を予算計上するもの。
2 受託事業の概要
(1)受託事業1
○委託元
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター
○委託事業名
攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業(うち産学の英知を結集した革新的な技術体系の確立)
○課題名
EOD技術による特産園芸産物の革新的な生産技術実証
○参画機関
(代表機関)
国立大学法人鳥取大学農学部
(共同研究機関)
園芸試験場
農業振興戦略監とっとり農業戦略課研究・普及推進室
株式会社フジ電機(岩美町)
○研究期間
平成26〜27年度(2カ年)
○要求額
870千円(うち報償費300千円、標準事務費570千円 10/10)
○研究内容
園芸産物の国際競争力強化のため、本県で冬春期に栽培される主要な園芸品目(トルコギキョウ、ストック、イチゴ等)に、EOD反応技術を適応実証するとともに、温度や光照射の技術精度を高めて経営試算し技術マニュアルを作成する。
これにより、冬季低日照条件における園芸品目の生産コスト削減と、気象の影響を受けにくい安定生産技術確立を目指す。
○とっとり農業戦略課の担当業務
1 現地実証による経営試算とマニュアル化
(1)現地実証による問題点の整理と技術改良
(2)EOD処理技術のマニュアル化
(2)受託事業2
○委託元
公益社団法人 農林水産・食品産業技術振興協会
○委託事業名
平成26年度新稲作研究会委託試験
○課題名
歩行型ピッカーを用いた中小規模体系によるじゃがいもの収穫(拾い上げ)作業の省力化に関する実証・評価
○試験研究担当機関
農林水産部東部農林事務所鳥取農業改良普及所
○研究期間
平成26年度(単年度)
○要求額
100千円(うち旅費65千円、標準事務費35千円 10/10)
○研究内容
じゃがいもの収穫作業において、農業機械使用による省力化の現地実証を行う。
(3)要求額の合計
970千円(うち報償費300千円、旅費65千円、標準事務費605千円 10/10)
3 委託事業に参画した理由
(1)受託事業1
本県では、全国に先駆けたEOD試験により、トルコギキョウの年末・早春出荷で燃料費を3割削減しながら生育が促進することなどを明らかにしてきた。これらは省エネ栽培技術として注目され、農水省より「農業新技術2013」(早急に生産現場へ普及すべき重要な技術)に選定された。現在、トルコギキョウ以外の花き類でも、EOD反応の高い品目があることを明らかにしつつある。
ところが、以下の問題点により、十分な普及に至っていないのが現状である。
ア EOD効果を高める生理的メカニズムが不明
イ EOD加温に効果的な日中の温度が不明
ウ 生産現場で利用しやすい遠赤色(FR)光源がない
エ EOD技術の新規導入者に対する技術フォローができない
オ 野菜・果樹などその他の品目に対する効果が不明
これらの課題解決が、EOD技術普及に繋がると考えられることから、以下の機関が連携して課題解決にあたることで、技術普及の拡大が期待できる。
● | 鳥取大学(EOD処理による作用機構の解明など) |
● | 園芸試験場(EOD処理法の改良など) |
● | (株)フジ電機(安価で効果的なLED(遠赤色:FR)光源の開発) |
● | とっとり農業戦略課研究・普及推進室(技術実証、マニュアル作成などによる技術の普及) |
(2)受託事業2
県東部のじゃがいも生産では、収穫時に手作業による拾い上げが行われており、多大な労力を生じている。そこで、収穫作業の省力化を実証し、課題解決を図るため。
4 受託事業の効果
(1)受託事業1
ア 適応品目
EOD栽培が効果的な園芸品目が幅広く明らかになる。
イ 超低コスト管理
環境調節指標により、主要園芸品目の効果的な1日の温度管理法が明らかになり、トルコギキョウ、イチゴの燃料費を50%以上削減、ストックの栽培期間を20%以上短縮する。
ウ 高付加価値化
EOD処理による機能性向上効果などが品目毎で明らかになり、有利販売に繋がる。
エ LED(FR)開発
慣行LED(FR)に比べ生育促進などの効果が高く、単位面積当たりの光源コスト/寿命が白熱灯の約3割、既存LED(FR)の約6割以下で導入しやすい照明を商品化する。
オ 照明の利用法
品目毎に最も効果的なLED(FR)照明の設置シミュレーション・照射方法が明らかになる。
以上の新たなEOD栽培により、冬春作の農業所得が30%以上向上
(2)受託事業2
じゃがいもの収穫作業が省力化される。
5 変更の内容
(1)受託事業1
○受託事業に係る農業改良普及費について、受託収入と同額を増額する。
○受託事業に関する業務は2カ年
(2)受託事業2
○受託事業に係る農業改良普及費について、受託収入と同額を増額する。
○受託事業に関する業務は1カ年
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
(1)受託事業1
・平成19〜21年度に実施された新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業「EOD反応を活用した花き類の効率的生産技術の開発」に参画し、この成果は農業新技術2013に選定された。このうちトルコギキョウに関する内容は、当該試験場によるものである。
・その後、単県事業「EOD反応を活用した花き類の鳥取型栽培技術の確立」でストック、キク、花壇苗に対する効果と処理法を検討中である。イチゴに対しても、EOD栽培による低コスト効果を明らかにしつつあるところである。
・平成23〜24年度に実施した(財)鳥取県産業振興機構からの受託事業「次世代環境産業創出プロジェクト事業」で、(株)フジ電機とLED(FR)照明器具を試作し、利用法に関する検討を行ってきた。
・平成26年4月に、試作LED(FR)照明の購入希望アンケートを、ストックと花壇苗生産者に対して行ったところ、全県下で300灯以上の希望があった。
(2)受託事業2
無し。今年度の新規事業のため。
これまでの取組に対する評価
(1)受託事業1
・これまでの試験により、全国に先駆けて、日照条件の悪い本県でもトルコギキョウ等を効率良く生産できる可能性が明らかになった。今後は、他品目への応用や現場普及に足りないを部分を早急に整理し、データを積み上げる必要がある。
・現在遂行している単県事業「EOD反応を活用した花き類の鳥取型栽培技術の確立」の外部評価は以下のとおりである。
<H25年度の外部評価(中間)の結果>
評点:12.8 判定:◎
委員の主な意見
(1)早期に成果を出し、鳥取県が先進地となるよう普及を図ることが必要。
(2)成果が大いに上がっているので新たに花き栽培を始める方へのPRなども検討願いたい。
・実用技術開発事業終了後から、技術普及室(現:研究・普及推進室)と連携して普及に向けた取り組みを行っているが、技術導入に踏み切れない生産者が多い。これまでの知見を基に、普及に最も効果的な技術組み立てが必要である。
(2)受託事業2
無し。今年度の新規事業のため。