１ 事業概要
平成３５年を目標とした、全国に誇れる和子牛、和牛肉の生産を目指す「鳥取県和牛ビジョン」を達成するために、和牛の新規参入者の確保育成、担い手農家の規模拡大、和牛経営の体質強化を図るための施策を実施する。
２ 背景
（１）平成２２年に宮崎県で発生した口蹄疫、平成２３年はユッケによる食中毒事件及びセシウム牛肉流通問題、平成２４年は経済の低迷等肉牛情勢の悪化に伴う牛肉消費の低迷、飼料価格の高騰により和牛農家の経営は厳しく、今後も先行き不透明な状況が続くものと予想される。
（２）平成２１年４月に「鳥取県和牛ビジョン」を策定し、取り組みを進めるため、「和牛再生促進事業」によって農家の雌牛導入、規模拡大のための牛舎整備等を支援してきた。
（３）和牛ビジョンや肉用牛振興については、鳥取県附属機関である「和牛再生ステップアップ協議会」にて意見を聞き、必要に応じ見直しをしている。
（４）平成２４年は和牛ビジョンの目標を達成できなかった。平成２５年４月に目標年度を平成３５年に延長し、和牛ビジョンの数値目標を見直した。農家の高齢化などが原因で廃業が増加し、厳しい状況である。そのためこれまでの支援策を再検討し、効果的で更に一歩踏み込んだ支援策を講じることで、和牛ビジョンの目標達成を目指す。
３ 事業実施期間
平成２４年度〜２６年度（３年間）
４ 事業内容
区分 | 事業内容 | 予算額
(前年度)
千円 |
| 担い手施設整備支援 | ＜担い手施設整備支援＞
和牛の担い手農家が、増頭するための牛舎を増・新築又は空牛舎を改築整備する場合に助成
・事業実施主体：農協、生産者
・補助率：県1/3・市町村1/6
・事業費：30,000千円
・助成額：10,000千円
・頭数要件
繁殖牛舎 繁殖牛30%以上の増頭を
行うための繁殖牛舎整備
(ただし5頭以上の増頭)
肥育牛舎 肥育牛20%以上の増頭を
行うための肥育牛舎整備
(ただし10頭以上の増頭) | 10,000
（7,000） |
＜堆肥舎整備支援＞
増頭に伴う堆肥舎の整備費に対する助成
・対象：増頭後規模が10頭以上となる農家の堆肥舎
・補助率：県1/3･市町村1/6
・事業費：3,000千円
・助成額：1,000千円 | 1,000
（1,000） |
| 新規参入円滑化支援 | 繁殖経営への新規参入のための畜舎・堆肥舎の整備に対する助成
・対象：規模が15頭未満
・事業実施主体：農協、生産者
・補助率：県1/3･市町村1/6
・事業費：27,000千円
・助成額： 9,000千円 | 9,000
（3,000） |
繁殖経営への新規参入者のための繁殖雌牛導入に対する助成
・対象：規模が15頭未満
・事業実施主体：農協、生産者
・補助率：県1/3･市町村1/6
・事業費：19,500千円
・助成額： 6,500千円 | 6,500
（1,200） |
| 受精卵移植技術利用促進 | 乳用牛等への受精卵移植をして、和子牛の生産拡大、雌牛の改良を図るため受精卵の移植経費の助成及び受精卵移植師が事業推進に要する経費に対する助成
・事業実施主体：全農鳥取、農協、 生産者、受精卵移植師
・事業費：1,755千円
・対象頭数：650頭
・補助額：受精卵移植助成
定額2,500円/卵
事業推進に要する経費助成
定額 200円/件 | 1,755
（750） |
| 放牧場和牛受精卵移植拡大対策 | 放牧場における和牛受精卵移植を増加させるため、酪農家等の和牛受精卵移植を増加させるため、酪農家等の和牛受精卵購入費、採卵経費の一部を助成 | 1,525
（1,525） |
| 「和牛の保育園」推進対策 | 和子牛生産頭数、子牛市場上場頭数の増加を図るため、「和牛の保育園」の整備経費の一部を助成
整備費11,700千円×1/2 | 5,850
（5,850） |
| 種牛性を持った鳥取独自の系統雌牛保存支援 | 県育種組合が指定する原種牛に実施する採卵に係る経費に対する助成
・事業実施主体：和牛育種組合
・事業費：500千円
・対象頭数：4頭
・助成額：125千円/頭 | 500
（500） |
| 和牛再生ステップアップ協議会 | 和牛産地再生に向けた取り組みを検討。
・年２回開催
・委員：県内生産者代表10名
関係団体代表 7名 | 238
(162) |
 | 合計 | 36,368 (20,987) |
５ 前年度との変更点
（１）放牧場和牛受精卵移植拡大対策及び「和牛の保育園」推進対策については、未来の鳥取和牛づくり総合対策事業の放牧場和牛受精卵移植拡大対策及び「和牛の保育園」推進対策から組み替え。
（２）受精卵移植技術促進及び放牧場和牛受精卵移植拡大対策は受精卵産子を子牛セリへ出荷する農家を対象としていたが、受精卵移植の推進のためにその要件を見直すことにより、事業対象者を拡大した。
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
＜政策目標＞
子牛生産頭数4,000頭、肉牛出荷頭数5,000頭(平成30年度)
和牛ビジョンの直近単年度目標（平成26年度）
○和子牛生産頭数 3,600頭
うち受精卵産子数 424頭
○和牛繁殖雌牛頭数 4,093頭
○和子牛せり価格(県/全国) 99.7％
○肉牛出荷頭数 4,100頭
○肉質等級4以上割合の向上 60％
○県内産子牛の県内肥育 44％
＜取組状況＞
○Ｈ２４年度の実績
担い手施設整備支援 実施なし
新規参入円滑化支援 実施なし
受精卵移植技術利用推進 264頭
種牛性を持った鳥取独自の系統保留支援 1頭
○Ｈ２５年度の実施予定
担い手施設整備支援 堆肥舎2戸
新規参入円滑化支援 雌牛導入助成 2戸 16頭
＜(前事業)和牛再生促進事業における取組状況＞
○繁殖肥育一貫農家に対する牛舎増築支援
（H21年度：３戸、H22年度２戸、H23年度１戸）
○繁殖経営新規参入農家への牛舎、雌牛導入の支援
（H21年度：６戸、H22年度：１戸、H23年度1戸）
○受精卵移植推進のための受精卵購入支援
（H21年度：100卵、H22年度：99個、H23年度100卵)
これまでの取組に対する評価
＜自己分析＞
○繁殖雌牛頭数は減少し、受精卵産子頭数は増加、子牛せり価格は低下
・繁殖雌牛頭数H21年：3,265頭→H24年：3,027頭と減少
・受精卵産子頭数H21年：303頭→H23年350頭と増加
・子牛せり価格（県/全国）H21年：96.7%→H24年：94.0%とやや低下
今後受精卵移植の推進、強化を図る
○肉牛出荷頭数を低下、4等級以上率はやや上昇
・肉牛出荷頭数H21年：4,054頭→H24年：3,534頭
・肉質等級4等級以上割合H21年：49.4％→H24年：51.2％
H22年に県内大型肥育農場の飼養中止の影響が考えられる
○肉用牛農家戸数は減少しているが、１戸あたりの平均飼養頭数は増加しており、規模の拡大
・肉用牛経営戸数 H22年：445戸→H25年：369戸
・１戸あたりの平均飼養頭数 H22年：42.7頭→H25年：53.8頭
○和牛再生促進事業における一貫農家に対する牛舎増頭支援
H21年度 70頭増頭（東部２農家：60頭、西部１農家：10頭）
H22年度 164頭増頭（東部２農家：132頭、西部１農家：32頭）
H23年度 120頭増頭(東部１農家：120頭予定)
3年間で約350頭の増頭効果が見込まれる
＜改善点＞
・今後の和牛を担う若手生産者や酪農から和牛農家への転換することにより新規参入する生産者の支援の強化
・酪農家や乳用育成牛を預託している鳥取県畜産振興協会などと連携を取りながら、乳用牛を活用した受精卵移植の支援方法の見直し
・酪農家へ積極的な受精卵移植の推進及び支援