概略説明
鳥取県におけるブドウ栽培は、一世紀前に70aから始まり、最盛期の面積は約150haあったが、今では北条砂丘を中心に約85haと面積が減少している。この要因は、近年の夏期高温障害(着色不良果=赤熟れ果)の増加による販売単価の低迷や産地間競争、生産者の高齢化、生産資材の高騰等である。この問題解決のためには、ピオーネの着色優良系統の選定と早期改植技術の確立や、ハニービーナスやシャインマスカットの青ブドウ栽培技術の種なし技術の確立、そして安価な雨よけ施設でのブドウ栽培に適した品種を選定する等の栽培技術の確立が求められている。
26年度は、着色優良系統の果実品質の年次変動の調査や雨よけ施設に適した品種選定のための果実品質調査を行う。また、遊休農地の解消とワイン産業振興のため、露地で栽培できるワイン用品種の検討を進めていく。
1 事業の必要性
(1)ピオーネは、着色不良果の発生により単価が低下している。このため、着色優良系統(県内2系統、県外1系統)とされている系統の中から最も着色のよいものを選定するとともに、これを早期に普及するための、低コスト早期改植技術の確立、高接ぎ順次更新技術(ブドウの成木に異なる品種を接木し品種更新を行う方法)の確立が急務である。
(2)消費者嗜好にあったシャインマスカットの種なし栽培は、ストレプトマイシンの散布とジベレリン、フルメットの1回処理により房型の良い、脱粒しにくい房ができるとともに、処理時期の目安がつきつつある。現地では果粒が小さくアザ果が発生することと、果皮の厚みが問題となっている。また、県のシャインマスカット検討会が毎年開かれ、県内の品質均一化を目指して栽培・出荷基準を検討しているところである。
(3)近年、施設費が高騰し、ハウスの新設と更新が難しい。このため、安価な雨よけ施設を利用し、9月から10月にかけて高品質なブドウを消費者へ提供すること ができる栽培技術の確立が求められている。
(4)遊休農地の解消とワイン産業振興のため新しく露地で栽培可能なワイン用品種の検討を進めていく。
(5)事業の対象者 県内ぶどう栽培農家数 約300戸
2 事業の内容
(1)ピオーネの着色優良系統への早期改植技術の確立
優良系統の選抜と密植栽培に適した樹形の確立
(2)青ブドウブランド化に向けた高品質果実生産技術の確立
シャインマスカットの種なし栽培における果粒肥大促進、アザ果の問題解決、目標となる房型の栽培技術の確立を行う。
(3)雨よけ施設による高品質果実生産技術の確立
ゴルビー、ウインク、ブラックビート等の有望品種の栽培適性調査を行う。
(4)露地栽培可能なワイン用品種の選定
露地栽培可能な有望品種の栽培適性調査を行う。
3 事業の効果
(1)ピオーネ、青ブドウの品質向上
(2)新規雨よけ施設導入によるブドウ栽培面積の拡大(雨よけ面積約1ha→10ha)
(3)ワイン用ブドウ栽培面積の拡大(3ha→10ha)
4 これまでの成果
(1)ピオーネ
単年度の結果ではあるが、収量性では北条系が優れているが、着色と糖度は河合系と羽合系が優れていると判断された。
(2)青ブドウ
シャインマスカットの種無し栽培で、ジベレリンとフルメットの1回処理により、房型が向上し脱粒しにくくなること、処理時期等が判った。現地では、花振るいが多く発生し、果粒肥大不足、アザ果、果皮の厚み等が問題となっている。
(3)雨よけ栽培
9月中旬でも、品質が良ければ900円/kg以上で販売できる品種もあることが判った。
5 H26の試験内容
(1)ピオーネの着色優良系統への早期改植技術の確立
・着色優良系統の果実品質の年次変動を調査する
・超密植による樹形ごとの収量調査を行う。
(2)青ブドウブランド化に向けた高品質果実生産技術の確立
・シャインマスカットの種なし栽培における着粒安定と果粒肥大促進、アザ果、果皮の厚さの問題解決を行う。
・整形時の長さと粒数の関係を調査し、収穫時の果房重の予測を行う。
(3)雨よけ施設による高品質果実生産技術の確立
・雨よけ施設におけるゴルビー、ウインク、ブラックビート等の有望品種の栽培適性調査
(4)露地栽培できるワイン用品種の選定
・有望品種の定植を行う。
6 H26年の要求額内訳(単位:千円)
内 訳 | 要求額 |
ブドウ栽培用資材・分析用試薬購入費
学会・検討会・研修会への出席旅費 | 1,917
183 |
合 計 | 2,100 |
7 年次別事業内容と事業費
年度 | 事業費 | 事業内容 |
25 | 2,100 | ・ピオーネの優良系統の果実調査による系統選抜
・密植栽培における樹形ごとの収量調査
・青ブドウの種無し栽培技術の確立
・雨よけに適した品種の果実調査と経済性の検討 |
26 | 2,100 | ・ピオーネの優良系統の果実調査による系統選抜
・密植栽培における樹形ごとの収量調査
・青ブドウの種無し栽培技術の確立
・雨よけに適した品種の果実調査と経済性の検討
・露地栽培できるワイン用品種の栽培適応の検討 |
27 | 2,100 | ・ピオーネの優良系統の果実調査による系統選抜
・密植栽培における樹形ごとの収量調査
・青ブドウの種無し栽培技術の確立
・雨よけに適した品種の果実調査と経済性の検討
・露地栽培できるワイン用品種の栽培適応の検討 |
28 | 2,100 | ・ピオーネの優良系統の果実調査による系統選抜
・密植栽培における樹形ごとの収量調査
・青ブドウの種無し栽培技術の確立
・雨よけに適した品種の果実調査と経済性の検討
・露地栽培できるワイン用品種の栽培適応の検討
・ピオーネの改植マニュアルの作成、シャインマスカットの栽培マニュアルの作成、雨よけブドウ栽培のマニュアル作成 |
合計 | 8,400 | |
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
<目標>
1 ピオーネ優良系統の選定と早期改植法の確立
2 青ブドウの効率的な種なし技術の確立
3 雨よけ施設に適した品種と栽培法の確立
4 露地栽培可能なワイン用品種の選定
<取り組み内容>
1 ピオーネの着色優良系統への早期改植技術の確立
優良系統の選抜と密植栽培に適した樹形の確立
2 青ブドウブランド化に向けた高品質果実生産技術の確立
シャインマスカットの種なし栽培における果粒肥大促進、アザ果の問題解決、目標となる房型の栽培技術の確立を行う。
3 雨よけ施設による高品質果実生産技術の確立
ゴルビー、ウインク、ブラックビート等の有望品種の栽培適性調査を行う。
4 露地栽培可能なワイン用品種の選定
露地栽培可能な有望品種の栽培適性調査を行う。
<現時点における達成度>
(1)ピオーネ
単年度の結果ではあるが、収量性では北条系が優れているが、着色と糖度は河合系と羽合系が優れていると判断された。
(2)青ブドウ
シャインマスカットの種無し栽培で、ジベレリンとフルメットの1回処理により、房型が向上し脱粒しにくくなること、処理時期等が判った。現地では、花振るいが多く発生し、果粒肥大不足、アザ果、果皮の厚み等が問題となっている。
(3)雨よけ栽培
ハウス栽培より高温障害を受けやすいことが判った。2mトンネルでは、販売に適した果房が栽培可能だが、棚トンネルでは難しいことが判った。9月中旬でも、品質が良ければ900円/kg以上で販売できる品種もあることが判った。
達成度 50%
これまでの取組に対する評価
<平成24年度第1回外部評価委員会議の結果>
評点(平均) 11.89
【委員からのコメント】
・ブドウの研究は全国他地域でも進められている。他産地の状況(研究)も調べてください。
・残された課題(青ブドウのブランド化、雨よけ施設の効果的な施工法)の早急な研究推進を望みます。
<改善点>
全国試験場や栽培農家と連携を取りながら、実用化による問題点の把握と技術改善を行っていく。