概略説明
平成16年に品種登録された園芸試験場育成の新品種ナガイモ ‘ねばりっ娘’は、企業との契約販売量(60t)を確保するため、栽培面積の拡大が行われ、約17haまで面積が拡大した。この間、園芸試験場では、増殖技術の確立および栽培特性の解明を行い、面積拡大を推進してきた。平成20年頃から契約販売以上の生産力となり、市場出荷、進物販売、加工業者との契約販売など、多チャネル販売を展開し始めた。しかし、慣行の栽培法では肌がゴツゴツした芋(ゴジラ芋)が多く、それぞれのチャネルで求められている芋の大きさや品質に対応できず、販売に苦慮しているため、多チャネル販売に対応した生産技術の確立が求められている。
また、近年夏季の気温の上昇とともに以前は発生のなかった、ナガイモの肌が黒色になり、腐っていく症状(黒陥没症)が現場で散見され対策が求められている。
1 事業の必要性
(1)‘ねばりっ娘’は、本県育成の品種であり、本県以外での試験は行われていない。
(2)‘ねばりっ娘’の生産は急速に拡大しており、これまでの試験で明らかになった特性を生かし、多チャネル販売に対応した高品質な芋の栽培技術の確立が急がれている。
(3)‘ねばりっ娘’の高品質な芋の生産効率向上のため、栽培期間の短縮や確実な種芋確保技術として頂芽利用技術必要である。
(4)黒陥没症、縦ヒビ等の障害芋の予防策確立やセンチュウの防除法確立は、安定した生産量や品質を望む生産者、取引関係者から強く望まれている。
2 事業の内容
(1)多チャネルに対応した‘ねばりっ娘’、ナガイモの生産技術の確立
・加工用大芋生産に適した頂芽による多収生産技術の確立
・加工用大芋生産に適した頂芽による栽培期間短縮実証試験
・進物用の芋生産に適した肌を綺麗に栽培する技術の検討
・カマボコ用ナガイモに適した植え付け方法、施肥法等の検討
(2)安定生産技術の確立
・黒陥没症、縦ヒビやコブ、分岐の原因究明と予防策の確立
・センチュウの防除法の確立
3 事業の効果
各チャネルに対応した芋の生産が可能となり、出荷量、販売金額の増加が見込まれる
(ナガイモ 出荷量 740t→750t、 販売金額 1億8千万円→2億円)
(ねばりっ娘出荷量 380t→500t、 販売金額 6千万円→1億円)
4 これまでの成果
(1)‘ねばりっ娘’の頂芽と小芋のそれぞれ50g以上を用いることで安定して1kg以上の成芋を育成できることが明らかになった。
(2)‘ねばりっ娘’は在来ナガイモと比較して出芽が1ヶ月早く、また地上部の枯れ上がりが遅いが、アクは早く消失する特性が認められた。
(3)黒陥没症および縦ヒビの発生はほ場条件に大きく依存していることが明らかになった。
(4)ナガイモ栽培において、生育後半の減肥は芋重および品質に影響しないことが判り、施肥量を1割〜2割減できることが明らかになった。
5 平成26年の試験内容
(1)‘ねばりっ娘’の頂芽の発芽率向上技術の確立
(2)肌が綺麗になる栽培法の検討
(3)効率的な施肥法の検討
(4)黒陥没症、縦ヒビやコブ、分岐の原因究明、予防策の確立
(5)‘ねばりっ娘’におけるセンチュウ防除法の検討
6 平成25年度要求額内訳(単位:千円)
内 訳 | 要求額(千円) |
現地試験栽培管理委託費
学会・研修会への出席旅費
ナガイモ栽培用資材・分析用試薬購入費 | 445
150
2,405 |
合 計 | 3,000 |
7 年度別試験内容と事業費(千円)
年度 | 事業費 | 事業内容 |
23 | 3,000 | 加工用、カマボコ用の生産技術、肌を綺麗に栽培する技術、安定栽培技術を確立する。 |
24 | 3,000 | 加工用、カマボコ用の生産技術、肌を綺麗に栽培する技術、安定栽培技術を確立する。 |
25 | 3,000 | 加工用、カマボコ用の生産技術、頂芽による栽培期間短縮実証試験、肌を綺麗に栽培する技術、安定栽培技術を確立する。 |
26 | 3,000 | 頂芽による栽培期間短縮実証試験、肌を綺麗に栽培する技術、安定栽培技術を確立する。 |
27 | 3,000 | 頂芽による栽培期間短縮実証試験、肌を綺麗に栽培する技術、安定栽培技術を確立する。 |
合計 | 15,000 | |
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
〈目標〉
多チャネル販売に対応した‘ねばりっ娘’等生産技術の確立
〈取り組み内容〉
・‘ねばりっ娘’の頂芽と小芋のそれぞれ50g以上を用いることで安定して1kg以上の成芋を育成できることが明らかになった。
・‘ねばりっ娘’は在来ナガイモと比較して出芽が1ヶ月早く、また地上部の枯れ上がりが遅いが、アクは早く消失する特性が認められた。
・黒陥没症および縦ヒビの発生はほ場条件に大きく依存していることが明らかになった。
・ナガイモ栽培において、生育後半の減肥は芋重および品質に影響しないことが判り、施肥量を1割〜2割減できることが明らかになった。
これまでの取組に対する評価
平成25年度 外部評価委員会議(事前評価)の結果
評点 13.1 判定 ◎
(評点9以上で試験実施)
評価委員の主な意見
・良い研究で、確実に成果が出ている。
・鳥取の特産品として全国的な知名度も高いので、研究に期待する。
〈自己分析〉
‘ねばりっ娘’の栽培法の確立、種々の生理障害の発生要因の解明を行っていきたい。