1 概略説明【農業試験場との連携試験】
1) 搾乳牛へ給与するTMRの最適な調製技術
2) 新たな自給粗飼料(飼料用大豆)の活用技術
今年度から3年間、上記の技術を確立するための試験を実施し、生乳の生産効率向上と飼料費低減を可能とすることで、酪農家の所得向上を目指す。また、飼料用大豆の栽培技術については、農業試験場との連携により確立を図る。
2 背景
1)飼料価格の高騰による飼料費の増加が、酪農経営を圧迫している。
2)県では自給粗飼料の増産と飼料の自給率向上を推進している。
3)自給粗飼料を使ったTMRは、飼料費低減に有効であるが、調製方法により生乳の生産効率に大きな差が生じている。
4)畜産試験場では7年前からTMRの物理的指標の推奨値を提唱してきたが、現場の飼料給与技術の変化に伴い、実態に合わなくなっており、新たな指標作りが必要である。
5)高価な購入乾草のアルファルファに変わる、タンパク質含量の高い自給粗飼料が望まれて久しいが、近年、飼料用大豆が注目されており、農業試験場で県内栽培に向けての試験が開始される。
3 事業内容
【TMR調製技術確立試験】(H26〜28)
1〜2年目
1)様々な物理性のTMR給与試験
(採食量、反芻行動、泌乳量、乳成分を調査)
2)新たな物理性の評価方法の検討(圧縮比を活用)
3)県内酪農家のTMRの実態調査(成分分析等)
3年目
1)試験および調査結果に基づきTMR物理性の適正指標を決定
2)適正指標の公表および普及
【新たな自給粗飼料を活用したTMRの給与実証試験】(H28)
農業試験場が行った飼料用大豆試験の結果に基づき、当場の飼料畑で実際に栽培し、搾乳牛への給与試験を行う。(採食量、泌乳量、乳成分および飼料費低減効果を調査)
4 期待される効果
1)給与した飼料の無駄がなくなり、飼料費削減が可能。
2)TMR調製技術の改善は、TMRミキサーの稼働方法の変更だけで可能となるため、新たな設備投資の必要が無い。
3)新たな適正指標を、畜産試験場の飼料分析報告書に活用することで、酪農現場への速やかな普及が見込まれる。
4)飼料用大豆の活用が進めば、高価な購入粗飼料を使わない完全自給粗飼料TMRが実現でき、大幅な飼料費低減が図られる。
5)自給飼料の有効活用が促進され、飼料の自給率が向上すれば、消費者へ安心安全な牛乳・乳製品のアピールができる。
5 農家の要望等
1)嗜好性が良く、生乳の生産効率のよいTMRの物理的指標が求められている。
2)タンパク質含量が高く、安価で入手可能な牧草が求められている。
6 要求額の内訳
項目 | 金額(千円) |
需用費
(飼料、医薬材料、修繕等の飼育管理費用) | 9,658 |
役務費
(血統登録手数料、削蹄手数料 等) | 269 |
合計 | 9,927 |
『用語説明』
TMR : 複数の牧草や穀物を切断し、加水して混合した飼料。
TMRの物理的指標 : 含まれる牧草や穀物の粒度を調べ、大きさ別の割合を提示。
TMRミキサー : TMR製造に用いる混合機。
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
畜産試験場では7年前からTMRの物理的指標の推奨値を提唱してきている。
これまでの取組に対する評価
酪農現場の飼料給与技術の変化に伴い、これまで示してきた物理的指標の推奨値が実態に合わなくなっており、新たな指標作りが求められている。