概略説明
鳥取県のラッキョウ栽培面積は215haで全国最大規模であり、鳥取県産ラッキョウは「砂丘ラッキョウ」として、全国で親しまれている。近年、販売価格の低迷、高齢化等により栽培面積が伸び悩んでいる。そのため、生産コスト低減、省力化、安定生産等が課題となっている。また、食の安心安全意識の高まりから、有機・特別栽培に関心が高まっている。
1 事業の必要性
(1)原油高、肥料需要の増加等により原材料費が高騰し、生産者から低コスト化技術の開発を求められている。
(2)近年、春先の天候が安定せず作柄が安定しないため、市場ニーズに合った出荷ができず販売に苦慮している。そのため、従来より一旬早い5月中旬頃からの出荷が可能な早生系統(品種)の選抜、早出し技術の確立が求められている。
(3)健康食品としてラッキョウが注目を集めるにつれて、消費者、団体、加工、流通業者および生産者から安心・安全な有機栽培への要望が高まっている。
(4)事業の対象者:県内生産者450戸およびラッキョウを購入する消費者。
2 事業の内容
(1)適正な施肥法の確立
・収量に影響する重点施肥時期の検索
・簡易ライシメーターを用いた窒素溶脱量の測定
・東部、中部の気候等の特性を生かした施肥法の確立
(2)早出し栽培技術の確立
・現地選抜系統の特性解明
・春かん水の効果的な方法の検討
・融雪剤、被覆資材、日長制御等を利用した種々の早出し技術の検索
・生工研で育成された系統の特性解明
(3)砂丘畑での有機・特別栽培技術の確立
・慣行栽培と比較した施肥体系の検討
・特栽での施肥法の検討
・病害虫管理体系の検討
3 事業の効果
・効率的な施肥法の開発によって、無駄のない、環境負荷の少ない施肥体系となり経費節減につながる。
・早出しすることにより、作業労力の分散、単価の高い時期での販売が可能となり、農家所得向上につながる
・有機・特別栽培志向生産者の増加
4 これまでの成果
(1)基肥を削減しても、収量に影響はなかった。
(2)生育初期の肥料は、植物体に吸収される量は少なかった。
(3)現地で栽培されている品種の中で、洗い出荷向きの1品種を優良系統の候補として選抜した。
(4)春潅水により収量が無潅水と比較して約20%増加した。
(5)有機栽培では、慣行の収量と比較すると約7割程度だった。
5 H26の試験内容
(1)適正な施肥法の確立
・収量に影響する重点施肥時期の検索
(2)早出し栽培技術の確立
・現地選抜系統の特性解明
・春かん水の効果的な方法の検討
・融雪剤、被覆資材、日長制御等を利用した種々の早出し技術の検索
(3)砂丘畑での有機・特別栽培技術の確立
・慣行栽培と比較した施肥体系の検討
・病害虫管理体系の検討
6 H26年の要求額内訳(単位:千円)
内 訳 | 要求額 |
現地試験栽培委託管理費
ラッキョウ栽培用資材・分析用試薬購入費
学会・研修会への出席旅費等 | 374
2,476
150 |
合 計 | 3,000 |
7 年次別事業内容と事業費
年度 | 事業費 | 試験内容 |
26 | 3,000 | 収量に影響する重点施肥時期の検索、現地選抜系統の特性解明、春かん水法の検討、早出し方法の検討、有機・特別栽培における施肥の検討、有機・特別栽培における病害虫管理体系の検討 |
27 | 3,000 | 収量に影響する重点施肥時期の検索、ライシメーターを用いた溶脱量調査、現地選抜系統の特性解明、春かん水法の検討、早出し方法の検討、有機・特別栽培における施肥の検討、有機・特別栽培における病害虫管理体系の検討 |
28 | 3,000 | 収量に影響する重点施肥時期の検索、ライシメーターを用いた溶脱量調査、現地選抜系統の特性解明、早出し方法の検討、園試育成系統の特性解明、有機・特別栽培における施肥の検討、有機・特別栽培における病害虫管理体系の検討 |
29 | 3,000 | 収量に影響する重点施肥時期の検索、ライシメーターを用いた溶脱量調査、現地選抜系統の特性解明、園試育成系統の特性解明、有機・特別栽培における施肥の検討、有機・特別栽培における病害虫管理体系の検討 |
30 | 3,000 | 適正な施肥法の組み立て試験、ライシメーターを用いた溶脱量調査、園試育成系統の特性解明、有機・特別栽培における施肥の検討、有機・特別栽培における病害虫管理体系の検討 |
合計 | 15,000 | |
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
〈目標〉
1 ラッキョウの有機栽培技術の確立
2 ラッキョウの生産コスト低減栽培技術の確立
〈取り組み内容〉
・基肥を削減しても、収量に影響はなかった。
・初期の肥料は、植物体に吸収される量は少なかった。
・現地で栽培されている品種の中で、洗い出荷向きの1品種を優良系統の候補として選抜した。
・春潅水により収量が無潅水と比較して約20%増加した。
・有機栽培では、慣行の収量と比較すると約7割程度だった。
これまでの取組に対する評価
〈平成25年度 外部評価委員会議(事前評価)の結果〉
評点 11.2 判定 ○
(評点9以上で試験実施)
○評価委員の主な意見
・環境面からも生産量を低下させず、肥効効率を高くすることは望まれる。
・コストダウン、価格アップによる競争力確保という視点で考えれば、必要なテーマである。
〈自己分析〉
・コスト面だけではなく環境負荷の少ない持続可能な砂丘ラッキョウが栽培できる技術確立を行っていきたいと考える。