1 事業の目的
青谷上寺地遺跡の出土品が持つ豊富な情報を県民に発信するため、出土品の整理・調査研究と海外調査を行い、出土品の活用を図る。また、青谷上寺地遺跡の調査研究成果を積極的に情報発信し遺跡の重要性をアピールする。
2 事業内容及び所要経費
(1)出土品の調査研究 27,828千円(23,058千円)<一部国補>
l保存状態が良好であることから、他遺跡では行い難い情報発信が可能
l日本のみならず東アジアの弥生文化の基本資料となる研究
石器の調査研究 | 石器の基礎的な研究及びデータベースの作成と公開(一部公開)を継続する。礫石器・剥片石器に関する製作技術研究にも取り組み、26年度に調査研究報告書(2)としてまとめる。 |
既存データベース | 建築部材、金属器、骨角器など既に公開しているデータベースに関して、新規資料の追加など更新を行い拡充する。 |
(2)海外との調査研究交流 1,052千円(1,052千円)
青谷上寺地遺跡の特徴である「交流」の実態把握
○海外(主に韓国)の出土遺物・遺跡立地環境等との比較研究
○環日本海交流の実態に迫る
l青谷上寺地遺跡と地形的に類似する環境(潟湖、砂丘)である韓国東海岸の同時代の遺跡(ex.松亭洞遺跡、林堂遺跡)と立地環境や出土品の比較検討を行う
l韓国江原道の(財)江原道文化財研究所をはじめとした機関と友好交流を図り、学術的な意見交換などを行う
○調査研究交流で得られた成果の情報発信
(3)出土品のレプリカ作製 5,267千円(4,316千円)
保存処理後であっても実物展示が困難な出土品や展示貸出頻度の高い出土品のレプリカを作製する
【平成26年度レプリカ作製対象遺物】
・玉製品 3点
・土 器 1点
・木製品 4点 計 8点
(4)青谷上寺地遺跡弥生講座関連事業 1,566千円 (1,564千円)<一部国補>
青谷上寺地遺跡の発掘調査や出土品の最新調査・研究成果、また青谷上寺地遺跡とも関連する県内の遺跡に関する情報を地元の方々を主対象に情報発信し、遺跡の素晴らしさを知っていただくとともに、発掘調査等の事業について理解を得ることを目的とする。
(ア)「土曜講座」(継続)
・2ヶ月に1回程度、第2土曜日に開催(4月〜2月、計4〜5回)
・埋蔵文化財センター文化財主事が1名ずつ講演
・鳥取市青谷町総合支所「多目的ホール」を会場
(イ)「フォーラム」(継続)
・出土品を調査研究する過程で得られた成果について、グローバルな視点からより専門的に情報発信
・来場された方により分かりやすく情報を伝えるため、外部講師と埋蔵文化財センター職員との対話や討議も行う
(5)脳、人骨等の研究 1,356千円(945千円)
全国唯一の貴重な「弥生人の脳」を、腐敗や細胞の損傷から守り後世に伝えるため、氷温庫により保管する。
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
<目標>
青谷上寺地遺跡の出土品が持つ豊富な情報の発信
・情報発信を可能とするための調査研究の実施
・講座の開講、フォーラムの開催
<取組>
・膨大な出土品を種別ごとにデータベース化
・データベース化した資料の公開
・海外(主に韓国)との調査研究交流
・活用を可能とするためのレプリカや復原品を作製
・調査研究成果を知っていただくための土曜講座を地元青谷で開催
<現時点での達成度>
・建築部材、骨角器、金属器、木製農工具・漁撈具のデータベース化と公開及び調査研究報告書の刊行
・年5回程度の土曜講座を継続して開催
・フォーラムの開催
これまでの取組に対する評価
<自己分析>
青谷上寺地遺跡で出土している膨大な出土品に関して、種別ごとに順次調査研究を進め、建築部材、骨角器、金属器、木製農工具・漁撈具、玉作関連遺物について、H18年度から順次データベース化と公開を行っている。出土品の情報を、これほどまで可視化できる形で公開している例は少なく、国内外からのアクセスも公開以後、減ることなく順調に増えている。今後は、更にデータベースを整備し、新規資料を順次公開できるよう取り組みを継続する必要がある。
また、データベース化を基に作成している調査報告書については、弥生時代研究に必携の学術書として学会から高い評価を受けている。再整理により報告した資料や、作製したレプリカが他県博物館の企画展等で紹介される機会も増えてきている。
土曜講座については、新たに3回シリーズのテーマを設定して行っており、参加者数も減少することなく推移している。
フォーラムについては、従来より広い会場で開催したところほぼ定員に達し、参加者が大幅に増加した。アンケートの回答を見ると継続的な開催を望む声が多く好評であり、予稿集の入手法についての問い合わせも多い。
<改善点>
青谷上寺地遺跡をより理解していただくために、調査研究成果によって得られた情報を、今まで以上に、より分かりやすく積極的に情報発信していくとともに、新たなテーマにも取り組み、その成果をまとめるべく調査研究を進める必要がある。