1 目的
国が行っている日本海沖メタンハイドレートの資源開発においては、今後の本格的な調査・研究開発に向けて、採掘技術や環境アセスメントの確立などの対応すべき課題がある。そこで鳥取県沖に資源を有するという地理的優位性を活かし、国による資源調査・開発との連携を強化するため、採掘技術等の開発や人材の育成、漁業従事者との調整などに資する環境の整備に先進的に取り組むこととする。
2 背景
(1)国による資源開発の現状
国は平成25年度以降3年間で、日本海沖メタンハイドレートの資源量把握に向けた取り組みを集中的に実施。現在、広域地質調査および詳細地質調査の実施中にあり、平成26年4月15日から鳥取県沖でも調査が開始された。
今後、有望地域での地質サンプルの取得や、資源回収技術事前調査の実施が予定されている。しかし、採掘技術以外にも、開発に伴う工作物の設置、掘削などでの海底の崩壊、回収時にメタンハイドレートが海底を崩壊させたり、メタンガスが水中で溶解するなどが環境へ与える影響について研究成果が出ていない等課題が残されている。
(2)これまでの県の対応
今年4月20日になって、鳥取県沖の調査代表者である明治大学の松本教授と意見交換を行い、調査概要等が分かってきた。現在の国の調査は資源量の把握や採掘技術など資源開発に注力されている。そのため開発時の環境保全など、地元ならではの取り組みが、メタンハイドレート資源の実用化に向けて、国の開発事業を補完することがわかった。
また、本年度夏の洋上調査に鳥取県から参加できる機会を得た。さらに調査の現状や詳細な情報を入手できる可能性がでてきた。
3 事業内容
(1)技術開発促進・人材育成事業(事業費:4,032千円)
◆人材育成カリキュラム開発
・鳥取大学等地元高等学術機関などと連携し、海底工作物などの設置など採掘に必要な基盤的技術を開発し、その実用化に向けた人材養成を目指す。
<1>必要な知識と技術を修得するためのカリキュラムの開発
<2>そのために必要な教材や機器機材についての検討
・これらの条件を整備した上で、実験的な授業(プレ講座)を実施し、寄付講座の可能性について評価する。
◆メタンハイドレート海洋調査実践事業
・ワーキングメンバーである鳥取大学研究者(教員・学生)や水産研究機関(水産試験場)研究員が、日本海沖でのメタンハイドレート調査航海(7/22〜7/28)に乗船し、賦存海域で採水・採泥調査を行い、実際の海底の状況を調査する。
・調査の結果を人材育成・技術開発促進、基礎調査促進に反映させる。
(2)基礎調査促進事業 (事業費:2,414千円)
◆環境アセスメント検討
・開発により懸念される環境への影響を検討し、その影響度を評価する手法等のアセスメント技術の確立を目指す。
<1>既にある水産試験場等の調査、測定しているデータを整理
<2>採掘や各種工作物の設置に対する影響度、評価方法の検討
<3>基礎データになる賦存エリアでの定点測定に関する場所、回数、方法などの検討
・これらの条件を整理した上で、観測点の追加、環境アセスメント実証技術の確立につなげる。
◆情報共有体制の構築に向けた検討
・調査時や将来の開発時に漁業者、研究機関、資源開発者等の間で情報交換・共有が必要になる。その際に利用者が必要なデータ、その収集、提供方法など情報共有体制のあり方について検討する。
(1)(2)の実施方法 ワーキングを立ち上げ具体的な検討 を行う。
(1)人材育成ワーキンググループメンバー
・地元大学、明治大学、岡山大学、他大学
・産業技術総合研究所
(2)基礎調査促進ワーキンググループメンバー
・地元大学、明治大学、他大学
・産業技術総合研究所
・石油天然ガス・金属鉱物資源機構
・水産試験場
・県漁業協同組合、漁業従事者
(3)普及・啓発事業 (H26当初予算で要求済み)
・メタンハイドレート研究会の開催
・中高生によるシンポジウムの開催
・公開講座の開催