１ 事業内容
二十世紀梨ブランドの再興、鳥取県梨産業活性化ビジョン（以下「梨ビジョン」）の旬の梨リレー出荷を確立するため、生産部（選果場）の次の取り組みを要件として、市場単価が再生産に必要な価格を下回った場合に支援を行う。
| 内容 | ８月下旬から９月末までの二十世紀梨の市場出荷平均単価が、再生産価格を下回った場合、赤秀・青秀の出荷量に応じて価格差を支援 （上限：２００円/ｹｰｽ） |
| 事業期間 | 平成２４年度から平成２７年度 |
| 事業主体 | 要件を満たす農業協同組合、生産組織 |
| 事業費 | ６０，０００千円 |
| 予算額 | ２０，０００千円 |
| 補助率 | 県１／３、市町村１／３ |
＜生産部（選果場）の取り組み要件＞
（梨ビジョン目標年の平成２７年度までに実施）
１）８月下旬の二十世紀梨出荷を減らし、９月主体の出荷体制を構築すること
２）二十世紀梨と新品種による旬の梨のシリーズ化を図るため、新品種面積を現在の２倍又は二十世紀梨面積の３割まで増やすこと
３）二十世紀梨の全期間プール精算を導入すること
４）交配日等による地帯別出荷の体制を構築すること
※平成27年度までに梨ビジョンのとおり二十世紀梨の出荷を９月とし、美味しくなったものから出荷する体制を築き、鳥取二十世紀梨ブランドを確固たるものとする。
２ 価格補てんと二十世紀梨の再興、農家の生産意欲・意識の低下防止
（１）価格補てんと二十世紀梨の再興
市場出荷では、他産地の状況、気象、景気等の梨農家の努力ではどうすることも出来ない部分で価格が決まってしまう面が多々あり、平成２０年以降、低単価や実止まり不良等で４年連続して梨農家の十分な収入が無い中、梨栽培を続けていくために切望する再生産価格を確保し、二十世紀梨のブランド化や新品種の植栽に取り組むものである。
２０１０年世界農林業センサスデータによると、梨農家の内、６０歳以上が７０％と高齢化しており、２０１５年は７９％、２０２０年は８７％と、本県梨生産は壊滅的な状況となることから、価格補てんを担保とした梨ビジョンに沿った要件の達成（二十世紀梨の９月出荷、新品種導入等）に向けた即効性・実効性のある事業を展開。
（２）農家の生産意欲・意識の低下防止
価格補てんの支援単価に２００円／ケースの上限を設けることで、安くても補てんがあるので大丈夫という意識を防止する。
低品質の梨、小玉果を作っても価格補てんの対象となると、農家の生産意欲・意識が低下するため、対象数量は等級（品質）が青秀以上（赤秀・青秀）のものとし、高品質な梨作りを推進する。
３ 再生産価格の支援方法
（１）二十世紀梨の再生産価格
生産・販売経費を支払い、生産者が労働見合いの収入を得るために必要な単価の試算
生産・販売経費 ９３３，３９１円/10a
生産者労働費見積額 ４９６，５３５円/10a
経費合計 １，４２９，９２６円/10a
経費（円/10a）÷収量（kg）×１０（ケース換算）＝利潤無しの単価
１，４２９，９２６÷４，１５０×１０＝３，４４６円 ≒ ３，５００円
※農業経営の手引きを参考に試算
（２）再生産価格の確保に必要な市場単価
市場出荷６割、輸出１割、進物３割で再生産価格（３，５００円/ケース）を確保するためには、市場出荷の平均単価２，７５０円が必要。
市場出荷 ２，７５０円/ケース×全出荷量の６０％
輸出 ３，５００円/ケース×全出荷量の１０％
進物直販 ５，０００円/ケース×全出荷量の３０％
選果場平均単価（再生産価格） ３，５００円/ケース
※輸出、進物直販価格は、過去実績を参考に試算
（３）再生産価格の支援
二十世紀梨の市場出荷分について、８月下旬から９月末までの平均単価が、２，７５０円/ケースを下回った場合、赤秀・青秀の出荷量に２００円/ケースを上限として単価差を支援し、再生産価格に近づける。
４ 事業費・要求額
事業対象の等階級数量を平成２６年度二十世紀梨販売実績の７割相当（３００，０００ケース）と見込み、支援単価を上限２００円/ケースとした場合。
※最終年度であり、取組の無い生産部があるため７割とする。
３００，０００ケース×２００円/ケース＝６０，０００千円
６０，０００千円÷１／３（県補助率）＝２０，０００千円
予算要求額：２０，０００千円
※市町村も１／３義務負担、残り１／３は農家拠出相当分
５ 背景
平成２６年産二十世紀梨の市場平均単価は２，８００円／ケースであったが、平成２０年、２１年、２３年は低単価であり、平成２２年は高単価であったが春季低温被害により極端に収量が少なく、梨農家は安定して十分な収入を上げられなかった。
梨農家が栽培を続けるためには、３，５００円/ケースの再生産価格が必要で、梨栽培が生計の中心となっている若手にとっては死活問題である。
８月下旬の二十世紀梨の単価が高いことから、早採り（低糖度）の傾向があるが、８月下旬には新品種を出荷し、二十世紀梨を旬の９月出荷してブランド化を目指している。
二十世紀梨ブランドを危惧し、再興を望む声が多い。
二十世紀梨が安値になると梨栽培への不安感があり、新品種の植栽が進まない。
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
１ 平成２１年度から平成２３年度の二十世紀梨ブランド化事業に続き、二十世紀梨の市場価格を重視した早出し出荷から、味がのった適熟梨出荷によるブランド化を図る取り組みへ支援を行った。
２ 鳥取中央農業協同組合では、梨産地再生プロジェクトのひとつとして、指針に沿って栽培した完熟二十世紀梨を「美味・熟っと梨」の名称で販売する取り組みが行われている。
３ 平成２４年度は４生産部（選果場）でプランが作成されたが、二十世紀梨の県平均単価が２９２円/kgであり、価格補てんは無かった。
４ 平成２５年度は新たに１生産部（選果場）でプランが作成され、二十世紀梨の県平均単価が２７５円/kgであり、２生産部（選果場）が価格補てんの対象となった。
＜平成２５年度ブランドリバイバル事業実績＞
・交付対象出荷量：７７，３７５ケース（10kg）
・補助金額：２，４９４，１３９円
５ 平成２６年度は新たなプラン作成は無く、二十世紀梨の県平均単価は市場進物を除いた推計で２８０円/kgであった。
これまでの取組に対する評価
１ 二十世紀梨ブランド化事業の取り組みにより、農協、生産者の適熟品出荷に対する意識啓発に繋がった。
２ 鳥取中央農業協同組合では「梨産地再生プロジェクト」を立ち上げ、美味しい梨を消費者に提供する取り組みが本格化してきた。
３ 二十世紀梨ブランド化事業は、８月下旬の二十世紀梨出荷を減らして、９月中下旬出荷を増やす取り組みであり、８月下旬に出荷できる新品種の導入や９月中下旬出荷に伴う二十世紀梨の価格低下に対応出来ていなかった。
４ このため、梨ビジョンの実現に向けた取り組みを更に進め、二十世紀梨の適熟出荷、旬の梨のリレー出荷の体制に直結するよう事業制度を見直した。
５ これまでの取り組みにより、平成２４年度は「二十世紀梨の出荷は９月から」という全農の基本方針が打ち出されるなど、旬の時期に出荷するという意識が高まっている。
６ 早出し二十世紀梨に替わり、新品種（新甘泉、なつひめ）のリレー出荷体制が整いつつある。