1.終了の理由
試験実施期間を終了し、一定の成果が得られたため。
2.事業の概要
県内の養豚農家では、液状精液による人工授精(以下AI)を行っている。しかし、液状精液は10日程度しか保存できないため、急に必要(母豚の突然の発情)になったときに対応できない。
そこで、養豚農家がAIを利活用することで、安定的な生産基盤の確立を図れる体制をつくる。同時に、当場において系統造成した「大山赤ぶた」など各種豚の系統維持・保有を行い、豚精液(液状・凍結)の試験を行う。
3.背景・目的
・県内養豚農家がAIのメリットを認識した結果、普及率は75%を越えた(全国平均47.3%)。
・液状精液によるAIは、農家はすでに慣れ親しんでいるが、液状精液が長く利用可能であれば望ましい、という声があがっている。
4.事業効果
・養豚現場で必要なときに、AIを行うことが出来るようになる。そのため、扱いが危険な種雄豚の飼養頭数を削減することができ、飼料費などのコスト削減、労力の軽減が図られる。
・平成21年度に系統造成が完成したデュロック種「大山赤ぶた」などの各種雄豚の系統を維持・保有し、農家へ供給することで、豚生産性の向上、出荷販売利益の確保につながる。
・以上により、県内養豚農家の養豚経営サイクル中の生産基盤を安定的に確立することが出来る。
5.事業内容
(1)凍結精液の利用技術の検討
・凍結精液によるAIの手法の簡略化を図るため、凍結精液を注入するストローの封入体を変更し、その効果を検討した。
・凍結精液の凍結方法及びAI時に用いるカテーテルに関して検討し、受胎率の向上を図った。
(2)液状精液の長期保存の検討
・液状精液の希釈液に添加剤利用を検討した。
・夏場に種雄豚への添加剤を給与することによる精液活性の向上を目指した。
・夏場の豚液状精液の輸送方法を検討し、精液の保存性向上を図った。
6.事業の成果
1凍結温度を従来と比較して低下させた凍結精液を使用する。また、プラスチック内管式深部注入カテーテルを使用してAIを行うことで受胎率、産子数が向上した。凍結精液封入時に用いるプラスチックボールをゼリーに変更し、作業を簡略化しても解凍後の精子運動性に影響ないことが明らかとなった。
2精液希釈液への添加剤投与は効果が薄かったものの、同時に利用した乳化剤に保存性向上効果が認められた。しかし、乳化剤は高価であるため、実用化は難しい。種雄豚へのL-カルニチン給与により、特に若雄豚に対して夏場の精液活性低下の抑制効果が見られた。