1 事業概要
県産スギ材の付加価値を高めるために、耐久性に優れる心材の赤味部分を人為的に増加させる「心材促進化」および、材質の揃ったばらつきが少ない木材の供給を可能にする「材質安定化」の2点について、実用的な施業技術を確立する。
2 事業内容
(1)背景・目的
平成23年世論調査によれば、木材を利用した住宅を選ぶときに重視するものとして、「品質や性能が良く、耐久性に優れていること」と約68%の人が回答している。この消費者ニーズに合致した木材の供給が望まれるが、これまでの生産・販売目標は、いかに量(材積)を増やすかが主流で、品質を向上させることではなかった。材質を揃える、向上させるといったこれまでにない取組みで、他県産材との差別化を図ることが必要である。
(2)方法
ア 材質安定化
樹幹解析、細胞の組織構造及び材の物理性の調査を行い、林分条件と材質との関係を明らかにする。材質を評価する指標として細胞壁のミクロフィブリル傾角(MFA)を用いる。
イ 心材促進化
枝打ちの程度(樹冠の量)を要因とする心材促進化の試験地を設定し、4年間の成長経過及び心材形成の差異を明らかにする。
(3)効果
ア 材質安定化
林分ごとに材質強度を推定することが可能になり、品質のよい材を安定的に供給できるようになる。
イ 心材促進化
耐久性に優れる心材の赤味部分を人為的に増加させ、心材率増加のための施業提案が可能となる。
3 事業の成果
ア 材質安定化
・材質強度の指標であるMFAは、立地及び土壌母材による影響はなく、クローンによって変動することが明らかとなった。
・オキノヤマスギは、環境条件に関わらずMFAが10度以下の低い値を示した。つまり、遺伝的に材質強度の優れる品種であるといえる。本試験によって初めて鳥取県の地域品種であるオキノヤマスギを評価することができた。
・MFAとヤング率、密度との間には高い相関があることが分かった。また、材強度向上にはMFAだけでなく、未成熟部分の成長幅を抑制する施業が重要であると分かった。
イ 心材促進化
・枝打ちの程度の差による心材促進化について、明確な差はでなかった。平成27年3月に調査を行う予定である。また、過去の文献では5年後以降に心材促進されている例もあるので、引き続き調査を行う。