概略説明
バイテクにより、鳥取県独自のリンドウ及びユリ等のニューアイテムを開発し、鳥取県産花きのブランド化を図ることにより、県内花き産地を振興する。
1 事業の必要性
県内の花き生産者から、鳥取県の気候風土に適したオリジナル品種を開発し、ブランド力を強化することが望まれている。
ア リンドウ
中山間地の露地品目として、本県の主要な切り花品目の一つである。しかし、種苗メーカーによる品種育成がほとんどないため、現在の産地の維持・発展のためには、本県の気象条件に適応した品種の育成と安定的な採種法の確立が急務となっている。
イ ユリ
シンテッポウユリは種子から切花生産できるユリで、比較的単価の高い秋冬期の出荷する作型が本県で独自に開発され、現在スイカの後作品目として普及が進んでいる。しかし、既存品種は短日期となる秋冬期の採花率が低いため、独自の短日開花性品種の育成が求められている。
また、球根繁殖性のユリは、花色及び花形が変化に富み、需要の多い品目であるが、球根の養成期間が長い。そこで、種球の増殖から1年以内に開花する品種が求められている。
2 事業の内容
ア リンドウ
「盆咲きリンドウの開発」(花き研究室)
頂花咲き性に優れた盆咲き品種を開発する。
盆咲き系統の採種法を検討する。
「花の日持ちがよい三倍体リンドウの開発」(生物工学研究室)
バイテク手法により、四倍体を作出し、二倍体との交配により、花が長持ちする三倍体品種を開発する。
イ ユリ
「秋冬出荷作型に適したシンテッポウユリの開発」(花き研究室)
シンテッポウユリ既存品種と短日開花性を有するタカサゴユリを交配し、秋冬作型に適した新品種を育成する。
「球根養成期間が短いユリの開発」(生物工学研究室)
バイテクを用いて、球根繁殖性のユリと種子繁殖性のシンテッポウユリを交配し、種球の養成期間の短い有色の新品種を開発する。
3 事業の効果
ア 需要期に高品質な切花の安定出荷が可能となり、生産者の所得向上につながり、産地の活性化が期待される。
イ 特色あるオリジナル品種を出荷することにより、競合他産地との差別化による有利販売ができる。消費者に対する鳥取県産のPRが可能となり、鳥取県産花きの消費拡大につながる。
ウ 消費者がより高品質な鳥取県産の切花を観賞することが可能となる。
4 これまでの成果
ア リンドウ
「盆咲きリンドウの開発」
現地で収集した優良系統の中から交配親を選抜し、交雑育種により新系統を作出した。有望な4系統のうち、現地試験で特に評価の高い極早生2系統が新品種候補として有望視されている。また、高温期の採種が年々困難となっている盆咲き系統について、切り花による採技術を実用化に向けて検討中である。
「花の日持ちがよい三倍体リンドウの開発」
リンドウの染色体倍加技術により、現地優良系統の四倍体を作出し、二倍体との交配して雑種を得た。三倍体の確認を行い、現在養成中である。
イ ユリ
「秋冬出荷作型に適したシンテッポウユリ新品種の開発」
シンテッポウユリとタカサゴユリとの雑種を作出し、短日開花性の高い有望系統を選抜してきた。さらに交配を続けることにより、形質の揃いの良い3系統を選抜した。
「球根養成期間が短いユリの開発」
バイテク手法によりヒメユリ等とシンテッポウユリとの雑種約4000個体の中からりん片繁殖から1年以内で開花した黄花1系統を選抜した。また、新たに橙花色5系統、白花色2系統を選抜した。
5 平成27年度の試験内容
ア リンドウ
「盆咲きリンドウの開発」
・優良系統の現地試作
・盆咲き系統の頂花咲性向上のため新系統の作出と選抜
・盆咲き系統の採種法を生産現場に提案する。
「花の日持ちが良い三倍体リンドウの開発」
・養成した三倍体の切り花の日持ち性を明らかにする。
イ ユリ
「秋冬出荷作型に適したシンテッポウユリ新品種の開発」
・育成した選抜個体の特性調査
・短日開花性が高く、品質の揃いの良い優良系統の作出
「球根養成期間が短いユリの開発」
・新規花色系統の作出
・りん片増殖から1年以内に高率に開花する系統の選抜
・抽台条件の解明と栽培技術の確立
6 平成27年度要求内訳
内 訳 | 要求額
(千円) |
会議・先進地視察出張旅費 | 150 |
組織培養及び栽培管理費(資材、試薬等) | 1,100 |
現地栽培試験委託料 | 8 |
通信運搬費 | 50 |
合計 | 1,308 |
7 年度別試験内容・事業費
年度 | 事業内容 | 事業費
(千円) |
19〜26年度 | リンドウ
・「盆咲きリンドウ」
優良個体の収集、交配親となる固定 系統の作出、交配組み合わせの検 定、現地実用性評価
・「花の日持ちが良い三倍体」
優良系統四倍体の作出及び交配
ユリ
・「秋冬出荷栽培に適したシンテッポウユリ」
交配親の収集、雑種の作出
・「球根養成期間が短いユリ」
雑種の作出、自然開花期での小球開花性評価 | 11,094 |
27年度 | リンドウ
・「盆咲きリンドウ」
交配組み合わせの検定、現地実用性評価、高温期における採種法の検討
・「花の日持ちが良い三倍体」
三倍体の特性評価
ユリ
・「秋冬出荷栽培に適したシンテッポウユリ」
選抜系統の形質の改良
・「球根養成期間が短いユリ」
新規花色系統の作出及び選抜、
栽培技術の確立 | 1,308 |
28年度 | リンドウ
・「盆咲きリンドウ」
新系統の作出と特性検定、育成系統の現地実用性検定
・「花の日持ちが良い三倍体」
三倍体の特性評価
ユリ
・「秋冬出荷栽培に適したシンテッポウユリ」
選抜系統の形質の改良、実用性評価及び現地試作
・「球根養成期間が短いユリ」
秋冬作型での特性評価、現地実用性評価 | 1,397 |
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
1.目標
鳥取県産花きのブランド化を図り、県内の花き産地を振興するため、バイテクにより、本県独自のリンドウ及びユリ等のニューアイテムを開発する。
2.取組状況及び現時点での達成度
1.「盆咲きリンドウ」 進捗率50%
交配親を作出するため、現地から収集した優良系統から交配親候補を12系統選抜した。交配親の組合せ検定により4系統を選抜し、現地試作中である。
2.「花の日持ちの良いリンドウ」 進捗率50%
優良系統の四倍体の四倍体と二倍体の交配により三倍体を作出した。
3.「秋冬出荷作型に適したシンテッポウユリ」 進捗率 75%
シンテッポウユリとタカサゴユリとの雑種から、短日開花性の高い有望系統を選抜し、形質の揃いを改良中。
4.「球根養成期間の短いユリ新品種の開発」 進捗率 85%
シンテッポウユリ×ヒメユリ等の遠縁交雑種から花の形状が良好で、繁殖から1年以内に80%以上開花する1系統を秋冬出荷作型で栽培し、特性を解明中。
これまでの取組に対する評価
平成23年度外部評価(9月15日)
1 評点(中間評価)
研究の必要性 5.00 研究の妥当性 4.40
研究の効果 3.60 総合評価◎
2 主なコメント
スピードのある研究体制を作って進めてほしい。
市場開拓、市場を海外へ求めるなど、産地形成と市場をつなぐ研 究も必要
平成25年度 園芸試験場研究推進会議(平成25年7月12日)
○リンドウ関係
・花き研の育成系統を試作しているが、少し草丈が低いが総合的に見て良いとは思う。
○ユリ関係
・シンテッポウユリ主要品種の種子が入手困難となり、非常に困っている。
・小球開花性ユリについては、出来るだけ早く商品化することを勧める。他からたくさんユリ品種は出てきているので、とにかくいち早く出すことが重要なのでは。面白いとは思うので、「りん片から1年で開花」ということを整理して勝負した方が良いと思うし、出来るだけ早く生産者・消費者に届けていくことも大切と考える。
平成26年度 園芸試験場研究推進会議(平成26年8月22日)
○リンドウ関係
・近年は極早生系統の荷が少なく高単価となるため、現育成系統には期待をしている。
・盆咲き系統は採種に苦慮している。摘心して開花を遅らせて採種することを考えているが、よい方法があれば教えてほしい。
○ユリ関係
・シンテッポウユリ秋冬出荷作型は抽だい・採花率が高く、収益性に優れた品種がほしい。
・小球開花性ユリについては、出来るだけ早く商品化することを勧める。他からたくさんユリ品種は出てきているので、とにかくいち早く出すことが重要なのでは。面白いとは思うので、「りん片から1年で開花」ということを整理して勝負した方が良いと思うし、出来るだけ早く生産者・消費者に届けていくことも大切と考える。