事業の背景・現状
○鳥取県県土整備部では平成15年から、地産地消及び環境の観点により、植栽工においては原則在来種を使用することとしているが、法面(切土、盛土)における緑化は浸食防止のため早期の法面の安定が必要とされることから環境への適応力が高く、種子の入手が容易な外来種が多く使用されている。
○現在、道路事業の法面緑化で使用されている植物にはトールフェスクやイタチハギなど生態系等の被害の検討を要す「要注意外来生物」をはじめとして多くの外来種が使用されており、鳥取県固有の自然環境への影響が懸念されている。
○鳥取県では、平成25年から「とっとりグリーンウェイブ」を展開し、「とっとりの緑」を見直し、「ナチュラルガーデン」等鳥取県の在来種を用いて花と緑があふれる街づくり等を目指している。
事業目的
道路法面における緑化について在来種を使用した場合の法面の浸食防止効果や有効な植生等について検証するとともに、在来種をしていくための種子供給システムや施工方法等を検討し、「鳥取県版 在来種による法面緑化マニュアル」を策定することにより、従来外来種を使用して「ふるさとの緑」に与えていた環境負荷の低減を図り、もって後世に鳥取県固有のみどりを引き継いでいくことを目的とする。
事業内容
1.“在来種による法面緑化マニュアル”の策定
2.指針策定のため有識者を交えた意見交換会の開催
3.在来種による法面緑化工法の試験施工
4.職員の意識向上のため現地研修会の開催
H27要求内容
全体事業費 C=12,560千円
H27要求額 C=6,040千円
・既存資料の整理、現地調査の外部委託
・意見交換会の開催
・在来種の種子採取
・指針とりまとめ(暫定版)
法面緑化工事において在来種を使用していない理由
1.“在来種”による法面緑化が普及していないことから、“在来種”の市場性が低く、工程調整が困難であるため、在来種の導入が困難な状況である。
2.“在来種”を使用した事例が少なく、適切な手法が確立されていないこと、工事担当職員においては“在来種”では早期に緑化が図れないという認識が強いこと等から、“在来種”の使用に関する意識が低い。
以上のように、鳥取県が施工する法面工事においては「早期緑化」、「市場性」、「経済性」の観点から多くの現場で“在来種”を使用していない(できない)状況である。
他県の状況
他県でも同様の指針を既に策定している事例がある。
(例)
愛媛県:「郷土種による樹林化工法」技術指針を策定している。
高知県:「木の香る道づくり事業」を推進している。
事業の背景にある外来生物法について
○外来生物による被害が深刻化したため、平成17年から「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(以下「外来生物法」という。)が施行された。
○外来生物法では、生物の多様性の確保(在来生物の保護)、人の生命及び身体の保護並びに農林水産省の健全な発展(保護)を目的に、環境省が指定する「特定外来生物」を規制している。
○環境省では、学術的知見の不足等により「特定外来生物」としては指定していないが、引き続き検討を要するものとして「要注意外来生物」を指定し、公表している。