1 現状と課題
◆ 近年の建設業は、建設投資の減少による受注競争の激化を主因とした経営環境の悪化を背景に、技能労働者の賃金低下や社会保険未加入等の就労環境が悪化し、若年入職者の減少が続いている。
◆ 建設業は、県民の生活基盤となる社会資本整備や災害対応を行うなど重要な産業であり、また、技能労働者の育成には一定の期間を要することから、今適切な対策を講じなければ、熟練工から若手へ技能継承がされないままに技能労働者が減少し、近い将来、社会資本の維持・更新にも支障を及ぼす恐れがある。
◆ よって、若年入職者の確保に向けて、建設労働者の就労環境の改善に平成25年度から官民あげて取り組んできた。
◆ 今年度は、建設業が性別・世代を問わずさらに魅力的な産業となるよう、「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」が国及び関係建設業5団体により策定され、女性の更なる活躍を建設業の国内人材育成・確保策の柱の一つに位置付け、5年以内に女性技術者(技能労働者)を倍増することを目指して官民一体となった取組がスタートしたところ。
◆ 工事現場に従事する県内女性技術者に就労環境に関する聞き取り調査を行ったところ、多くの方(86%)が、女性の建設業への就労促進のためには女性用トイレの設置等の現場の就労環境整備が必要と考えていることが分かった。
◆ これらを受けて、女性の働きやすい環境の整備が建設業界の担い手確保に向けた原動力となるよう、本県においても建設業で働く女性の就労環境整備に取り組むものである。
2 事業概要
入職した女性労働者が、働き続けることができる就労環境の整備が重要である。このためには、
ア 現場でのトイレ等のハード面の整備
イ 管理職や職場内の意識面での整備
ウ 仕事と家庭の両立環境の整備 などが必要となる。
この内、国や本県の補助制度では対応していないハード面の整備について支援するものである。
3 事業の目的
建設業の担い手の確保・育成にあたり、安陪政権が「我が国最大の潜在力である女性の力」と表現する女性の活力を建設業に取り込むことは担い手確保の取組の原動力として期待されるところ。よって、「女性が働き続けれる環境整備」を強力に推進することで女性労働者(女性技術者・女性技能労働者等)を確保し、この環境整備により性別・世代を問わない形での入職意欲につながる好循環の構築を進めていくものである。
4 支援内容等
(1)支援内容
女性労働者のための環境整備((4)支援対象の例のようなハード面での整備経費に限る。)に要した経費の1/2を助成する。
*上限 225,000円/社
(2)補助条件
女性労働者を配置した現場の女性を対象としたハード面での環境整備を実施したこと。
<女性労働者の範囲>
・正職員、有期(無期)雇用職員
・当該現場の下請負人の使用者
なお、ソフト面での環境整備の声も大きいことから、補助採択事業者に対して、ソフト面での環境整備を指導する。
<ソフト面での環境整備例>
・就業規則の見直し(時間外労働の縮減、計画的な休暇取得環境の整備、家庭との両立制度の整備など)
・職場内の意識改革等に向けた研修の実施
・賃金水準の見直し など
(3)支援対象業者
いずれの場合も認める。
ア 現在女性が従事している業者
イ これから女性労働者を雇用しようとする業者
(4)支援対象
女性の就労に伴い新たに行う、以下例示のような環境整備
ア 簡易トイレ購入
イ 更衣室兼休憩室用仮設事務所購入又は改修
ウ 更衣用ロッカー購入
エ 移動式フィッティングルーム購入
オ その他 女性労働者のために環境改善に要したもの
* 購入にはリースを含む。
(5)支援対象業者数
10社
*女性技術者の割合((社)鳥取県土木施工管理技士会会員) 3.5%
*入札参加資格者905社
905社×3.5%=31.6社
*現場に従事する女性技術者等(H26.11.11聞取調査)
43名(左の者が所属する会社数39社)
⇒現数の1/3程度づつ環境整備し、3年程度で倍増を目標
約30社×1/3=10社
(6)支援に要する経費
225千円×10社=2,250千円
(7)適正の確保
現場実態調査員(東中西に5名配置し、施工中の現場の調査指導を実施)による現場確認を行い、申請どおり女性労働者が当該現場に従事しているかを確認。従事していないと認められる場合は補助金返還を請求する。
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
若年入職者確保に向けて、公共工事設計労務単価の引上げを平成25年4月及び平成26年2月に行い、平成24年度に比べ約19.5%単価が上昇した。この引上げが賃金水準の確保や社会保険等への加入につながるよう、平成25年6月の知事から関係団体への直接要請や県工事の入札参加資格者全社(905社)に対する文書要請を行ったほか、契約図書の一部である現場説明書に就労環境改善に向けた取組に努めることを契約条件として定め、併せて契約書の一部として周知チラシを添付し、契約毎に受注者に要請する仕組みとした。
さらには、今年度から政策戦略事業として賃金水準等の確保に向けて下請契約と設計額との比較調査・指導助言を開始した。
また、適正な価格による下請契約を推進するために、今年10月に指導要綱を制定した外、現場説明書を改正してこれの徹底を図った。
これまでの取組に対する評価
法定福利費を確保するための標準見積書の活用が徐々に見られるようになるなど、適切な賃金水準の確保や社会保険の加入徹底による就労環境改善の取組が浸透しつつあると評価できる面が見られるようになってきた。ただ、それが人材確保や人材育成につながるまでには至っておらず、取組のさらなる推進が必要である。