1 事業目的
多種多様で極めて保存状態の良い出土遺物等から、「地下の弥生博物館」とも称される史跡青谷上寺地遺跡を保存活用基本計画(H21年度策定)に基づき弥生時代の日常生活が体感できる青谷上寺地遺跡ならではの史跡整備を行うため(1)基本設計を行う。
制作した基本設計をもとに、今後、(2)実施設計をはじめ、具体的に(3)遺構などの復元整備や環境整備、(4)展示公開施設等の整備を行う。
また、(5)整備に必要な内容を確認する発掘調査を実施する。
※発掘調査事業は青谷上寺地遺跡発掘調査事業で実施。
2 経緯等
平成20年3月28日 国史跡指定
平成21年度から
埋蔵文化財センターが史跡内容確認調査等を実施。
平成22年3月 整備基本計画策定
平成20年度から平成30年度(予定)
指定地の追加指定、公有化の実施
平成28年度から整備基本設計を実施(資料2)
※「鳥取西道路」改築事業に伴う埋蔵文化財調査に人員投入のため、実施を繰り下げ
3 事業内容及び所要経費
(1)整備基本設計事業
・整備方針に基づいて、遺構保存整備、復元整備、露出展示、環境整備、及びガイダンス等施設の基本設計を行う。業者選定はより高質の設計提案を促すため、プロポーザル方式で行う。
【23,113千円(3か年):国補助1/2】 ※別途債務負担要求(H28 プロポーザル経費 537千円)
・整備内容を検討するため整備委員会を開催(最大年5回を予定)
【3,450千円(3か年):国補助1/2】
(2)遺跡解説板の内容更新
・史跡青谷上寺地遺跡現地に設置している解説看板を最新の調査研究成果に基づき、内容を更新する。
【150千円:国補助1/2】
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(単位:千円)
事業年度 | H28年度 | H29年度 | H30年度 | 総額 |
基本設計委託 | 6,950 | 8,247 | 7,916 | 23,113 |
整備委員会 | 1,154 | 1,154 | 1,154 | 3,462 |
看板書換
委託 | 150 | | | 150 |
事務消耗品 | 16 | | | 16 |
プロポーサル経費 | 537 | | | 537 |
計 | 8,807 | 9,401 | 9,070 | 27,278 |
※平成28年度 鳥取市は事業に伴う負担金1,251千円を要求中
金額は所有面積按分により算出
4 青谷上寺地遺跡の普及啓発事業
(単位:千円)
事業内容 | 事業費 | 備考 |
遺跡紹介冊子作成 | 948 | (一般事業)
「とっとり弥生の王国」普及活用事業)>>> |
弥生の王国シンポジウムの開催 | 2,943 |
AR(拡張現実)技術を用いた国史跡青谷上寺地遺跡の整備事業 | 7,632 |
5 史跡整備の必要性
史跡は、ただ保存するだけでなく、県民の文化的活動の場として、まちづくりや地域づくり、ゆとりある生活空間づくりに活用されるとともに、文化観光の資源となり得ることも視野に入れ整備活用していくことが望まれる。
青谷上寺地遺跡と妻木晩田遺跡は全国屈指の規模、内容をもつ弥生時代の二大遺跡で、史跡として整備されれば、両者が一時間圏内での周遊観光スポットとして活用が見込まれ、今後、修学旅行や大学のゼミ旅行など教育機関による利活用を新たに掘り起こすことが期待できる。
また、遺跡のもつ高い学術的、文化的価値を広く県民、国民へ還元をするためには、遺跡の保存活用整備が必要で、文化財としての価値を地域のなかでしっかりと守り、その利活用に向けた環境づくりを図ることは重要である。
平成13年度の会計検査(鳥取県を含む23府県対象)では、国庫補助金により公有化した史跡について、保存のための管理や国民が史跡に慣れ親しむための整備が全く行われていない事例があったため、適切な管理と積極的な活用を図るよう改善の指摘が出されている。これを受けて翌年度、文化庁から史跡の管理の適正化について通知がなされたところ。
6 史跡整備への期待
平成22年3月に、県民の意見を反映させ、「青谷上寺地遺跡整備活用基本計画」を策定。その後も整備活用については強い要望が寄せられている。
また、青谷上寺地遺跡の整備事業は都市再生整備計画青谷地区(鳥取市作成、平成26年3月)の中で、地域の歴史的・文化的資源を活かしたまちづくりを推進する一つの柱となっている。
整備事業に対する要望・意見は以下のとおり。
○青谷地域審議会(平成21年〜平成27年)
「地元としては(青谷上寺地遺跡の整備を)早く町の活性化につなげたい」
「建物としてあれば人骨や遺構も含めて(中略)リアルな部分があってもいい、遺跡は全国に山ほどある、それらと差を付けようと思ったら何かしらの仕掛けが必要」(平成21年5月26日 第31回青谷地域審議会)
「目に見えて観光資源になるのはいつ頃か」(平成23年8月23日 第49回青谷地域審議会)
○青谷中学生・青谷高校生アンケート(平成25年7月)
「(青谷ようこそ館の敷地に)青谷上寺地遺跡を体験できる施設」
○青谷上寺地遺跡を学ぶ会による「深澤市長と語る」会
(平成27年8月18日)
「調査を加速し、拠点施設の建設促進」
「朝鮮、中国との交流など学術的な価値は高い。低湿地遺跡の研究などの国際研究所にしては」
「一過性の観光に使われるものはすぐに飽きられる。歴史文化は語り継いでいくもので、地味でも研究・教育のための施設を希望する」○青谷上寺地史跡保存活用協議会での意見
(平成22年度〜)
「何年経っても青谷上寺地遺跡が史跡として全く変化がなさすぎる」(平成24年6月4日 第4回会議から)「青谷町民が青谷上寺地遺跡を忘れつつある」(平成24年10月16日 第6回会議から)
「山陰道を走っていても、青谷上寺地遺跡がよく分からない」(平成25年6月26日 第8回会議から)「住んでいる人は、展示館がプレハブだから、たぶん2〜3年ですごい施設が建つだろうと思っていた。(中略)せめて、遺跡周辺できちんとした建物ができて、遺跡を掘ったり、遺物をつなぐ作業を建物の中で見られるとか、出土遺物を一度に見られるとか、そういう施設を期待している」
「いろんな場所での発掘調査で出土した遺物を、まとめて展示する施設がどこかにあれば良い。(中略)鳥取での宿泊を考えると、砂丘だけでは難しい。こうした(発掘された遺物を展示する)資料館があれば、宿泊していただくなど経済効果が出くてる。造るなら立派なものを」(平成25年10月22日 第9回会議から)
○有識者(工楽善通氏 大阪府立狭山池博物館長)の意見
「青谷上寺地遺跡の整備ということだが、ぜひその出土品のすばらしさを多くの方々に知っていただくために、博物館と研究施設を青谷につくるべき」(平成27年11月28日 青谷上寺地土曜講座特別講演会にて)
○地元の方からの整備への要望(平成27年12月15日)
「整備をいつまで待たせるのかといった感があるかもしれない」
「当初の基本計画を最低限進めてほしい。拠点施設、ガイダンス施設が近くにあってほしい。両者が分断されてしまうと心配」
※なお、平成28年1月20日に開催される青谷地域振興会議、同年1月23日の青谷上寺地遺跡を学ぶ会で、今後の青谷上寺地遺跡の整備事業について説明してほしいとの要望をいただいている。
7 史跡青谷上寺地遺跡の整備にかかる事業費
(1)全体事業費 約6億円程度
(2)経費負担
全体の基本設計にかかる事業は、県、市が各所有面積で按分した額を負担。実施設計、整備については、基本設計の内容によって一括実施又は分割実施を選択する予定。その状況によって単純な面積按分とならない可能性がある。
指定面積 146,132.99平米・・・a
鳥取県所有面積 93,648.71平米・・・b
b/a≒0.6408(64%)
鳥取市所有面積 52,484.28平米・・・c
c/a≒0.3591(36%)
(3)平成28年度 鳥取市負担金 1,251千円
基本設計にかかる負担金は上記按分に基づき、現在要求中。