1 事業概要
鳥取県における特殊詐欺被害は、平成27年9月末現在で22件約3,504万円と、認知件数は前年同期と同数であり、、被害額は約9,509万円減少しているが、依然として高額の被害となっており、継続した対策が課題となっている。
本事業は、鳥取警察署及び米子警察署に各2名の警察官OBの特殊詐欺被害防止アドバイザー(非常勤職員)を配置し、金融機関、コンビニ店員、宅配業者(以下、「金融機関職員等」という)に対し、顧客への声掛け訓練を直接指導することで、店員等の声掛けに対する不安や疑問を解消し、積極的かつ的確な声掛けを実践して振り込み被害を水際で阻止する体制を構築し、県民の財産を保護しようとするもの。
2 現状及び必要性
(1)現状
ア 被害の増加
振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺の件数、被害額とも増加傾向にあり、全国警察を挙げて取組むべき喫緊の課題となっている。
【特殊詐欺被害金額】
区分 | 平成24年中 | 平成25年中 | 平成26年中 | 平成27年※ |
鳥取県 | 6,745万円 | 9,188万円 | 1億5,909万円 | 3,504万円 |
全国 | 36,436百万円 | 48,690百万円 | 56,550百万円 | 31,876百万円 |
※鳥取県は9月末現在、全国は8月末現在
イ 犯行手口の変化
被害金の入手手口が、これまで件数の多かった金融機関での「振込み型」から、レターパック、ゆうパック、宅配便で現金を送付させる「直接受領型」に変化している。
(2)必要性
被害金の原資は、金融機関における預貯金が大半であり、金融機関から引き出され、これを宅配便等または、一部のコンビニでも購入可能なレターパック等を利用して現金で送付させる手口により被害に遭うケースが増加している。
郵便法によりレターパックやゆうパックでの現金の送付は禁じられているほか、宅配便についても各社の約款等により現金の送付は禁じられているが、広報のみでは抑止することができず、従来からの金融機関における振込み型と相まって被害額が増加している。
このため、県民の財産を保護し、安全安心な生活を守る必要から、これらの対策として金融機関職員等に対して、ロールプレイングによる声掛け訓練や日々変化する犯行手口等について直接指導をし、これらの対策を継続していくことで、実際に対応することとなる金融機関等職員に経験を積んでもらい、声掛けに対する不安や疑問の解消を図り、水際での阻止率を向上させる必要がある。
3 特殊詐欺被害防止アドバイザーの業務内容
(1)ロールプレイングによる対処能力向上訓練
県内の金融機関、コンビニエンスストア及び宅配業者を2名1組で巡回し、ロールプレイングによる訓練を実施(一人が高齢者役で職員等を相手に演技を行い、もう一人が職員等の対応を観察して、訓練後に講評・指導)
(2)被害防止コール
警察が押収した名簿に掲載された県内居住者に対して電話を掛け、特殊詐欺被害に遭わないための注意喚起を行う。
(金融機関やコンビニの希望時間帯にロールプレイングによる訓練を行い、訓練の合間に被害防止コールを行う。)
4 ロールプレイングによる訓練の重要性等
(1)直接現金を取扱う金融機関職員等が被害防止の「最後の砦」であることから、金融機関職員等による声掛けがいかに有効で重要な対策であるかを十分に認識してもらうことが必要
(2)誤った声の掛け方を行うと、頑なに注意を拒んでしまう傾向があることから、金融機関等職員に対して、騙されやすい高齢者の特性を理解してもらい、ロールプレイングによる効果のある声掛けの方法を指導訓練することが重要
(3)実際に金融機関職員等によって声を掛けられ、被害が未然防止された水際阻止の事例有り
5 阻止率の向上
平成25年1月〜9月 45パーセント(40件中18件)
平成26年1月〜9月 61パーセント(57件中35件)
平成27年1月〜9月 68パーセント(57件中39件)
効果事例として、特殊詐欺被害防止アドバイザーによるロールプレイング訓練の2日後、郵便局を訪れた女性が定期預金を解約して現金を用意しようとしていたところ、訓練を受けた職員が声掛けにより詐欺を看破し、水際阻止に至ったもの等複数あり。
※阻止率=阻止件数/認知件数
6 ロールプレイング訓練実施状況
平成27年4月〜9月末
| 件数 |
金融機関 | 673件 |
コンビニエンスストア | 303件 |
宅配業者 | 34件 |
計 | 1,010件 |
7 要求額 9,850千円(9,890千円)
・特殊詐欺被害防止アドバイザー(非常勤職員) 4名
報酬 8,464千円
共済費 1,372千円
旅費 14千円
計 9,850千円
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
<事業概要>
平成27年9月末現在、振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺の被害は、前年同期と比べ、被害総額は減少しているものの、認知件数は同数で推移しており、全国警察を挙げて取組むべき喫緊の課題となっている。また、被害金の原資は大半が金融機関における預貯金であり、送金方法はコンビニや宅配業者からの送付によるもののほか、金融機関の店舗外に設置されているATMからの振替送金によるものが増加している傾向にある。
このため、警察官OBによる「特殊詐欺被害防止アドバイザー」4名(2名1組)が、金融機関やコンビニ等を巡回し、顧客に対する積極的かつ的確な声掛け訓練等を推進し、特殊詐欺被害を水際で阻止する体制を構築し、県民の財産を保護するための活動を実施している。
<取組等>
(1)平成26年6月補正予算で当事業が認められ、同年8月から、鳥取署及び米子署に各2名の特殊詐欺被害防止アドバイザーを配置し、活動に従事している。
(2)平成27年当初予算で当事業の継続が認められ、同年4月から第2期目として活動に従事している。
(3)県下に配置された4名のアドバイザーが、訓練対象店舗に対して、ロールプレイング方式による声掛け訓練等を実施している。
これまでの取組に対する評価
<自己分析>
平成26年中の特殊詐欺は、認知件数28件(被害総額約1億5,909万円)であり、本年は9月末現在で、認知件数22件、被害総額約3,504万円の被害を確認している。
昨年同期の被害総額は約1億3,010万円であり、約9,509万円の減少となっているが、認知件数は同数で推移している。
被害を未然に防ぐ水際阻止の件数は、昨年1年間で50件であったが、本年9月末では39件(昨年同期は35件)となっており、アドバイザーの運用開始以降、一定の効果が現れている。
○特殊詐欺認知状況
平成23年15件約1,746万円
平成24年17件約6,745万円
平成25年29件約9,200万円
平成26年28件約1億5,909万円
平成27年9月末22件約3,504万円
○阻止件数(金融機関等の職員の声掛けによる送金阻止件数、又は配送業者による荷受人到着までの被害阻止件数)
平成23年26件約2,782万円
平成24年33件約7,383万円
平成25年21件約2,596万円
平成26年50件約1億612万円
平成27年9月末39件約5,276万円