1 事業概要
発達障がいの専門医が地域の小児科医へ具体的な診療法等を伝える研修を実施することにより、地域で発達障がいの診療ができる体制(人材育成)を構築する。
また、『エール』発達障がい者支援センターに「発達障がい地域支援マネージャー」を配置し、市町村や事業所等の後方支援の充実等を図ることにより、発達障がい児者の地域生活の充実と各地域における支援体制の確立を目指す。
2 事業内容
1 発達障がい診療協力医研修事業
発達障がいの専門医が地域の小児科医に対して、具体的な診療方法等を指導する。
(1)対象者 小児科医(医師会の推薦)
(2)実施医師 脳神経小児科医、精神科医(専門医)
(3)実施日 年間3回程度
(4)場所 専門医の勤務する医療機関
(5)研修の内容
研修会 | 主な研修内容 |
第1回 | 診療法、行動観察の仕方、各検査の意味、薬物療法、二次障がいについて等 |
第2回 | 保護者への関わり方、学校等との連携の在り方、専門医とかかりつけ医の役割分担について |
第3回 | 実際の診察場面の見学、今後の連携の在り方、紹介児童についての情報共有等 |
2 発達障がい地域支援マネージャー配置事業
『エール』の地域支援機能の強化を図るため、発達障がい児者への相談支援に実績のある者を発達障がい地域支援マネージャーとして配置する。発達障がい地域支援マネージャーの役割は以下のとおり。
(1)地域におけるネットワークの構築
県が養成した発達支援コーディネーターを配置している市町村へへの後方支援や連絡会の開催を通じ、各圏域のネットワークを構築する。
(2)人材育成とアセスメントツール導入促進
地域の事業所等への後方支援を通じて、アセスメントツールの導入、普及を図り、地域における支援体制を確立する。
3 要求額
区 分 | 金額(千円) |
発達障がい診療協力医研修事業 | |
報償費 | 2,592 |
特別旅費 | 54 |
小計 (A) | 2,646 |
発達障がい地域支援マネージャー配置事業 | |
報酬 | 3,342 |
共済費 | 535 |
費用弁償 | 327 |
使用料及び賃借料 | 96 |
小計 (B) | 4,300 |
合計(A+B) | 6,946 |
4 現状・課題等
【地域での診療体制】
・発達障がいの認知度が高まり、専門医に受診希望が集中し、初診の待機児童が増加している。
・状況によっては早急に相談したいという場合もあるが、再来の予約であっても1ヶ月以上先でないと入らないため、児童への対処が遅れて、状況が悪い方向へ進んだり、保護者の不安が募る傾向がある。
・地域の小児科医が、発達障がいの診療を行える力をつけ、専門医と役割分担を行いながら、身近な地域での診療を可能とする体制作りが重要である。
【『エール』の支援体制】
・『エール』の設置当初(平成16年度)は、乳幼児期の個別相談が中心であったが、10年が経過し、学齢期、成人期の相談が増え、相談内容が多岐に渡っている。
・『エール』においては、市町村の依頼に応じ、巡回相談、講師派遣を計画以上に実施し、発達障がいの支援技術の向上及び支援体制の推進を図っているが、各地域における支援体制には大きな開きがある。
・発達障がい児者の数は年々増加傾向にあり、乳幼児期から成人期まで一貫した支援を行っていくためには、『エール』を中核として地域の関係機関が連携し、身近な地域で支援を提供することができる体制作りが必要である。
【課題への対応策】
・発達障がい診療協力医(地域の小児科医)の育成
・発達障がい支援の専門機関である『エール』の地域支援機能の強化(人員増)
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
発達障がいの支援については発達障害者支援法が平成17年に施行されて10年が経過し、県として支援体制の整備に尽力しているところである。これまで、発達障がい者支援体制整備事業等の中で、発達障がいへの理解を深め、その支援ができる人材を養成していくことや家族支援の充実を図ってきた。
『エール』発達障がい者支援センターにおいては、発達障がいに関する専門性の高い相談支援を行う県の中核として、関係機関と連携し、発達障がい児者や家族への支援を行ってきている。
また、子どもの心の診療ネットワーク事業において、発達障がいについての医学講座を開催したり、圏域ごとの症例検討会で発達障がいについて取り上げてもらうといったことを行ってきた。
これまでの取組に対する評価
これまでの取組によって、発達障がいが広く周知されるようになり、支援者も少しずつ増え、家族支援の体制が少しずつ整ってきている。。
しかし、『エール』発達障がい者支援センターにおいては、個別対応が必要な相談ケースが多く、業務の多くを個別対応に費やされ、中核機関としてセンターに求められる市町村・事業所等へのバックアップ、支援体制の構築に至り難い現状がある。
また、医師向けの発達障がいに関する研修の開催によって、基礎的な知識を持っている医師は増えたが、実際の診療には繋がりにくい現状がある。