1事業の目的・概要
防災ヘリコプターの安全性の確保のため、オートパイロットシステムの改造修理を行う。
<オートパイロットシステム>
・自動飛行制御装置の一つであり、離陸後、安全高度に達した後に、次の目的に向かうまでの巡航、アプローチ、ホバリング、着陸などの段階で用いる自動操縦システム。
・設定された速度や機体姿勢、高度等をパイロットに代わって 保持する機能が与えられており、手動操縦している時においても安定性、操縦性に関してパイロットの操縦を補う働きをしている。
・システムの一部に何らかの障害が発生しても、システム全体の機能を維持し続けられるように2系統装備されており、常に両系統作動していなければならない。
(防災ヘリコプターは安全性の確保から、操縦系、油圧系、動力系、電気系などで、同じ機能を持つシステムが2系統あり、万一、1系統で不具合が生じても、もう1系統で空港等に帰投できるよう設計されているが、これらのシステムがすべて正常でなければ検査も合格せず飛行はできないこととなっている。)
<不具合の原因>
飛行環境や飛行形態による特定の機体振動周波数帯で機首部に取り付けてあるAHRS(エーハース:姿勢方位基準装置)に特定の機体振動が伝わることとされている。
2 事業内容
飛行中に、2系統のうちの1系統がOFFとなってしまう不具合が頻発しており(月2〜8回程度 )、これを改善するため、オートパイロットシステムに接続している計器(AHRS)の架台を改良型に交換する。
(現状は、飛行中OFFとなったオートパイロットシステムを、その場で再度ONにすることで回復しているため、飛行を継続しているが、回復しない場合は、飛行を中止して帰還しなければならない。)
<修繕の必要性>
・万が一同時に2系統とも不具合となってしまった場合は、自動 的に修正操舵をとる機能が損なわれ、操縦稈を操作していなくても機体が前後、左右、上下に不規則に動き始め、その結果、操縦が著しく困難となり、任務の遂行が不可能となる。
・防災ヘリコプターにおいては、地上30mから50mでホバリングして、ホイスト(巻上機)で隊員を地上に降下させ、要救助者を吊り上げ救助する活動が主な活動の一つであるが、この最中にこのオートパイロットシステムが2系統ともOFFとなると、機体が突然、上下・左右に揺れ始め機体の安定を維持することが困難となる。
・特に山岳救助においては、その特性上、樹木の隙間や山肌近くでの救助場面が多く、非常に精密なホバリングが要求される。このような場面でオートパイロットシステムの不具合により安定性を欠くことは、ホイストに吊られた状態の救助隊員と要救助者を危険にさらすと同時に、機体が周囲の樹木等と接触し、最悪の場合は機体が墜落する等の重大な事故につながる危険を秘めている。
・県民の安全・安心及びヘリコプター活動の安全・安心を確保するためにも修繕は必要である。
3 所要経費
経費(委託) 9,872千円
4 その他
購入元である三井物産エアロスペース(株)の無償保証期間(2年)は経過している。
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
平成27年3月に新機体(AW139)を導入し、同年12月に新機体での本格運航を開始してから平成29年6月末までに緊急運航件数は180件であった。この間、熊本地震(平成28年4月)での緊急消防援助隊出動、鳥取県中部地震(平成28年10月)での災害応急対策等、各種の航空消防防災活動を行ってきた。
これまでの取組に対する評価
平成10年の発足以来、ヘリコプターの機動力を駆使し、迅速で効果的な救急・救助・消火及び災害応急活動を行っている。平成27年に機体更新したが、県民の安全・安心を守る上で、消防機関等と連携した消防防災ヘリの活動に対する県民の期待はますます大きくなると考える。