1.事業の目的・概要
鳥取県で現在進めている陸上養殖(マサバについては海面養殖も含む)について、考えうる魚種や飼育手法について実際に飼育を行い、それに係るコスト等を検討し、それらの養殖事業展開の可能性を調査する。
2.主な事業内容
【マサバ養殖可能性調査】 要求額 4,924千円
県内でのマサバ養殖生産の効率化、安定化を目的に、歩留まり向上、成長率向上等を図るための各種試験を実施する。
○種苗生産試験(委託)
○飼料への添加物による高水温耐性比較試験
○成長促進に必要となる冷凍生餌の給餌量調査
○採卵時期のコントロールおよび安定的な採卵技術確立試験(委託)
○養殖事業者へのフォローアップ
【高成長マサバ群作成育種試験(新規)】 要求額 1,198千円
成長の良い個体を選別し、親魚として用いることで、高成長のマサバ種苗群を作出し、県内のマサバ養殖事業の生産性向上を図る。
○上記親魚を用いた種苗の成長状況等を調査し、高成長マサバ種苗群の効果検証を行う。
【ウマヅラハギ養殖可能性調査】 要求額 1,590千円
マサバ、キジハタにつぐ陸上養殖の対象魚種として、要望の強いカワハギ類の養殖可能性を検討する。
○種苗生産技術開発試験
○養殖試験・飼育指導(浅井戸、通常海水)
3.予算比較
(単位:千円)
項目名 | 平成30年度
要求額 | 平成29年度
当初予算額 |
報酬 | 1,977 | 1,457 |
共済費 | 324 | 240 |
委託料 | 1,721 | 585 |
備品購入費 | 0 | 292 |
枠外
標準事務費 | 3,097 | 3,333 |
枠内
標準事務費 | 593 | 0 |
計 | 7,712 | 5,907 |
4.前年度からの変更点
・新規試験として、「高成長マサバ群作成育種試験」を追加。
(地方創生拠点整備交付金の対象)
・種苗生産試験に加えて、採卵時期のコントロール試験の親魚管理を、栽培漁業協会へ委託するため、委託料が増加。
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
【マサバ】
平成24年度から種苗生産試験及び養殖試験を開始している。
<種苗生産関連>
・種苗生産試験では、受精卵の不足、共食いの多発、原因不明の斃死などが発生し、初め2年間は種苗生産数が目標数に到達しなかったが、採卵方法の改良、水槽サイズ拡大等により、平成26年度以降は、目標数の種苗生産に成功している。
・また、親魚の成熟コントロール試験を実施しており、通常の産卵期よりも早い時期に採卵を行うことで早期に種苗生産、出荷を行うことが可能となった。
<養殖試験関連>
・養殖試験では、これまで、井戸海水および地先沖合から濾過採水した海水でのマサバ飼育の比較試験を初め、水温や塩分濃度、餌料種類別などの各種比較試験を実施してきている。
・各年の試験を通じて、基本的に、ふ化から11〜12ヶ月で平均約300g程度に成長することが通常となっているが、高水温時の斃死多発に伴う餌止めや、低水温での餌食い鈍化、成長停滞など、解消すべき課題も残されているところである。
・また、平成27、28年度は、JR西日本との共同試験を行い、生産魚の市場性調査を実施(お嬢サバ)し、養殖マサバに高い市場性があることが明らかとなっている。
【ウマヅラハギ】
○種苗生産関連
・2年間種苗生産試験を実施した結果、2年目には約1500尾の種苗を生産することが出来た。
・水槽によっては、1000尾/tの生産密度を達成することが出来た。
○養殖試験関連
・民間業者と共同研究の形で養殖の可能性を検討した。
・H29年度は、魚病の発生により、十分な検討が出来なかった。
これまでの取組に対する評価
【マサバ】
・仔魚の飼育、種苗生産については、近年、安定的に生産が行われており、量産化に向けた技術が確立されてきている。
・しかし、採卵技術については、1尾の親魚から取れる卵数が安定しないなどの課題が残されており、安定した種苗供給体制を築くにはまだ技術改良・検討が必要であると考えられる。
・養殖試験については、各年の試験を通じて、成長速度、歩留まり等が明らかとなり、基本的な飼育方法、養殖サイクルはできてきているところであるが、養殖経営として成り立たせるためには、依然として、コスト低減、収益性の向上の課題は残されており、歩留まり向上、飼育方法の効率化等が図られる対策が求められている。
・県内でのマサバ養殖経営体および生産量は増加しつつあるが、今後、持続的に養殖事業を成り立たせるためには、上記課題の解消に向けた試験、取組が今後、必要であると考えられる。
【ウマヅラハギ】
○種苗生産
・種苗生産技術は、2年間の試験により、ある程度、目途がたった。
・しかし、大量生産に向けて大量の受精卵の確保が課題として残った。
○養殖試験関連
・魚病の発生により、成長・生残に関するデータが十分取れなかった。
・現在、生残魚を用いて、魚病の防疫対策を施した上で養殖試験を継続中。
・H30年度も引き続き民間業者とともに養殖試験を検討予定。