1 事業の概略
平成23年度から26年度の間に鳥取藩絵師の小畑稲升・黒田稲皐・沖一峨の門人らを中心とする粉本類計172件が、立て続けに県内外の個人より寄贈された。これらの粉本類は、いわゆる美術作品とは異なり、各藩絵師がいつ、誰の何を学んだのかという絵画制作の背景を知ることができる貴重な資料群である。江戸時代の鳥取藩絵師の制作活動を解明する上で大変重要であると同時に、作品とともに展示することで作品の理解を深めることが可能となる。この粉本類を4年計画で修復する。
2 経緯(背景)
(1)平成23年5月に、鳥取藩絵師・小畑稲升の粉本類一式(77件)が個人Aより寄贈された。この資料群は個人Aの御実家に伝わったもので御先祖が小畑家と直接付き合いのある中で手に入れられたものである。
(2)平成24年8月には、当館の美術資料最大の寄贈コレクションである安富寛兵衛氏が収集された黒田稲皐の粉本類(46件)を、個人Bから御寄贈いただいた。
(3)平成26年6月には、個人Cより鳥取藩絵師・沖一峨の門人らを中心とする粉本類一式(55件)が寄贈された。
当館が開館して42年になるが、粉本類が寄贈されたのは今回が初めてであり、さらに連続して寄贈されたことでまとまった数の粉本資料群が形成されることとなった。
3 効果・目的
これらの資料群は、複数枚を継いでいるものも多く、資料を開くだけで紙継ぎ部分の接着がはがれてしまう状態で早急な修復を要する。また、現状では折れや反り、ヤケや紙自体の経年劣化により繊維が弱くなっており、展示することが困難である。修復によって、紙継ぎ部分を補修し旧状に復することが可能であり、また本紙に裏打ちを施し強度を持たせることで、展示することが可能となる。(彩色のあるものについては、現状を維持するため剥落止めを施すが、美術作品における修復のような補彩までは行わない。)これらの基本的な修復作業により、鳥取藩絵師の制作活動の実態やその特徴を知りうる貴重な資料としての価値を充分に発揮しうる状態となり、長期的に保管することが可能となり、展示にも活用しうる。
4 年次計画および要求額
三家より御寄贈いただいた資料数はそれぞれ下記のとおりである。
(1)個人A 77件(85枚)・・・小畑稲升粉本類
(2)個人B 46件(369枚)・・・黒田稲皐粉本類
(3)個人C 45件※(190枚)・・・沖一峨門人粉本類
※個人C寄贈の55件のうち、展示に活用しうる資料45件を選出。
これらを4年計画で修復する。
【1年次】平成27年度
粉本裏打修理 | (A家寄贈分) | 77件 | 85枚 |
粉本裏打修理 | (B家寄贈分)のうち冊子BとC | 2件 | 61頁 |
※予算1,917千円のうち、1,911千円を執行済
【2年次】平成28年度→現在進行中
粉本裏打修理 | (B家寄贈分)のうち冊子D・E・J | 3件 | 159枚 |
※予算1,923千円を全額執行済
【3年次】平成29年度
粉本裏打修理 | (B家寄贈分)のうち冊子A・F・G・H・I | 5件 | 75枚 |
粉本裏打修理 | (B家寄贈分)のうちペラA〜F | 6件 | 46枚 |
※予算1,778千円のうち、1,704千円を執行予定
【4年次】平成30年度
粉本裏打修理 | (B家寄贈分)のうちペラG | 29件 | 29枚 |
粉本裏打修理 | (C家寄贈分) | 39件 | 108枚 |
※予算1,778千円の予定→平成31年度のコレクション展「粉本展」にて展示