概略説明
(1)ナシ栽培で、省力化を目的に自家和合性品種と不和合成品種を混植することで、自然受粉が可能か検討している。
(2)混植栽培の受粉には風媒、虫媒等が関与していると考えられているが、その詳細は不明である。
(3)一方、全国的に農業における昆虫等の積極的利活用技術の開発が目指され、花粉媒介昆虫が注視されている。
(4)そこで、ナシ園における花粉送粉者の種類等に関する調査を行い、混植園における植栽計画、ジョイント栽培と混植栽培の組み合わせの実用化、ナシの受粉における花粉媒介虫の利用を図る。
1 事業の必要性
(1)ナシの自家和合性品種と不和合成品種を混植は、本県がオリジナルの技術であり、他県とは栽培品種が異なることから本県独自で検討する必要がある。
(2)ナシの混植栽培の実用化のためには、受粉の実態、花粉媒介昆虫に関する実態把握が不可欠である。
(3)ナシの花粉媒介昆虫については、これまで詳細な調査は行われておらず、利用可能な知見は無い。
(4)事業は、大学、国の独立行政法人、他県等も参画して行われるので、それらで得られた情報も活用できる。
2 事業の内容
(1)ナシ自家和合性品種と不和合性品種の混植による自然受粉栽培技術の検討
(2)ナシの花粉媒介昆虫相の解明と送粉効率の高い昆虫の探索および評価
(3)花粉媒介昆虫に対する農薬の影響
3 事業の効果
(1)生産者への情報提供により、今後ナシの混植栽培の増加が見込まれる。
(2)混植園では、交配時期の薬剤を花粉媒介昆虫に対する影響の少ない薬剤に変更することにより、着果率の向上が見込まれる。
(3)自家和合性品種でも結実率の悪い園があるため、花粉媒介昆虫の調査により、その要因解明、着果率の向上につながる。
4 これまでの成果
・秋甘泉との列混植により、新甘泉の人工受粉を行わなくても受粉が可能であった。
・混植栽培の結実の良否は満開期の気象により推測可能であった。
・混植する場合の隣接樹との実用的な距離が概ね明らかになった。
・自然受粉では変形果が多くなりやすい傾向があることが明らかになった。
・これまで、ナシにおける花粉媒介昆虫を大まかに調査した結果はあるが、詳細に調査した事例は無い。
・交配用ミツバチ、マルハナバチに対する農薬の影響は調査事例があるが、他の種には直接利用できない。
5 H30の試験内容
(1)ナシ自家和合性品種と不和合性品種の混植による自然受粉栽培技術の検討
・ナシ自然受粉樹の結実要因解明
(2)ナシの花粉媒介昆虫相の解明と送粉効率の高い昆虫の探索および評価
・トラップ調査による訪花昆虫調査
・捕虫網による訪花昆虫調査
6 平成30年度要求額内訳(千円)
内容 | 要求額 |
旅費 | 125 |
栽培資材・試験資材購入費等 | 872 |
合計 | 997 |
7 年次別事業内容及び事業費
年度 | 事業費 | 事業内容 |
30 | 997 | 混植による栽培技術の検討、花粉媒介昆虫相の解明と探索評価 |
31 | 847 | 混植による栽培技術の検討、花粉媒介昆虫相の解明と探索評価、花粉媒介昆虫に対する農薬の影響 |
32 | 712 | 混植による栽培技術の検討、花粉媒介昆虫相の解明と探索評価、花粉媒介昆虫に対する農薬の影響 |
33 | 590 | 混植による栽培技術の検討、花粉媒介昆虫相の解明と探索評価、花粉媒介昆虫に対する農薬の影響 |
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
<目標>
H29工程表政策内容
低コスト生産・経営管理技術の開発
<取り組みの内容>
・ナシ自家和合性品種と不和合性品種の混植について検討しているが、受粉がどのようにして行われているのかは未解明である。
これまでの取組に対する評価
<自己分析>
・今後ナシの受粉効率化のための混植栽培を推奨するためには、受粉の作用機構について明らかにする必要があり、そのために花粉媒介昆虫の調査が必要である。
・これまで他県等でも検討されていない内容がほとんどであり、他県等とは栽培品種、環境条件が異なることから本県で取り組む必要がある。
<改善点>
・栽培部門と一体となって事業を実施する。